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いつから俺の青春が『普通』だと思っていた?  作者: 結城 ユウキ
第2章 行事に波乱はつきもの

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第14話

「昨日はなんだかすごい昼休みだったな……」


 翌日の昼休み、俺は色々とリセットするために一人で昼食を取っていた。体育館裏の日に当たらない段差。そこが俺の一人になりたい時によく使うスペースだった。ここならば昼休みの喧騒からは程遠く、誰も通りかからないので心から落ち着ける。


 高校生の昼休みは一時間もない。ただでさえ短いというのに、昨日の体感時間はまさに一瞬だった。それほどまでに中身が濃い昼休み。おかげで昼ご飯抜きで午後の授業に臨むことになってしまった。


 だが、そうなっても余りある素晴らしい時間だった。先生の制服姿は一生忘れないだろう。


 先生の制服姿に思いを馳せていると、思いがけない来客があった。


「げ、なんでこんなところいるのよ」


 旭丘だ。手にはお弁当箱を抱えている。


「仮にも女子高生が『げ』とか言うな。あとそれはこっちのセリフだ。ここは俺の特等席だぞ」

「うるさいわね」


 旭丘は俺を一蹴し、隣にどかっと座った。


「強引だなあ」

「もっと詰めなさいよ」

「はいはい。……お前も騒がしいのから逃げてきたのか?」


 一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの不機嫌そうな顔に戻る。


「そうよ。悪い?」

「別に。俺も似たようなもんだからな」

「そう。私が来て悪かったわね」

「お前ならいいよ」

「……なにそれ」

「言葉通りの意味。そうだ、昨日クラスの女子達と昼ご飯食べたんだろ? どうだった」

「え? そうね……なんかすごい質問攻めにあったわ……」


 詳しく聞くと、どこから来たのか、なんで転校してきたのか、彼氏はいるのか、などとご飯を食べる暇もないくらいに質問の応酬を受けたらしい。


「なるほどな。それで今日は誰もいないところに逃げたってわけだ」

「そうよ。そしたらあなたがいたの」

「悪かったな」


 そう言いながら、俺はコンビニで買ったサンドイッチを頬張った。具はハムタマゴ。サンドイッチの具は結局シンプルなのが一番うまい。


 そんな俺を、旭丘が怪訝な顔で見ている。


「……なんだよ」

「お昼ご飯、毎日そんな感じなの?」


 旭丘は俺のサンドイッチを指さした。そんな感じ、というのはコンビニで済ませているのか、ということだろう。


「そうだな。サンドイッチとか惣菜パン、おにぎりとか簡単に食べられるものが多いけど……。それがどうかしたか?」


 高校に上がってからの昼飯と言えばこんなもんだ。お弁当はないし、作る気力もない。だから必然的にコンビニ飯になる。


「……」


 言葉を失う旭丘。確かに旭丘の手元にあるお弁当はかなりしっかりしている。それと比べると俺の昼ご飯はなんというか、可哀想な感じである。だが俺は別に困っていないし、なんなら美味しいと思って毎日食べている。


「その、少し食べる……?」

「哀れまれた……」

「男子高校生の食事とは思えないんだけど……」

「まあ元々そんなに食べないしな」

「さすがに夕飯はちゃんと食べてるわよね……?」

「……適当に外食か弁当買って帰ってるな」

「…………」


 旭丘、二度目の絶句。先程よりも引いている様子だ。


「失礼だけど、親御さんは……?」

「滅多に帰ってこないな。最後に親の料理を食べたのっていつだろうってくらいには。というか、食べたことあったっけ……」


 ぱっと思い返してみても親の手作り料理を食べた記憶がない。祖父母の料理はある。だが両親のものはないかもしれない。


「それに料理もできないしな。教わる人もいないし。必然的にこんな食事になる」

「………………」


 三度目の絶句。


 呆れられて仕方ない食事はしていると思う。とはいえずっとこんな食生活だし、もう慣れてしまったから今更どうこうするつもりもない。


 ただ、料理はできたらなとは思っている。誰に教わるんだという話ではあるが。


 そんなことを思っていると、旭丘がぼそっと呟いた。


「……私で良ければ料理、教えるけど」

「え?」

「いや、私料理毎日してるしそんな食生活じゃいつか体壊しちゃうかもだしこの前のお礼もしたいし……。そう、お礼よ、お礼!」

「早口だな……」


 目をぐるぐるさせながら旭丘が捲し立てる。


「別にそこまでしてもらうようなことはしてないが……」

「それはあなたじゃなくて私が決めること! それで私の気が晴れるんだからいいじゃない!」


 もう半ばやけくその旭丘。とはいえ、個人的にこの申し出はありがたかった。旭丘の料理の実力は定かではないが、指南役を買って出るほどなのだから多少は期待していいはず。


「わ、わかったから落ち着け……」

「そ、そう……よかった……」


 旭丘は胸を撫で降ろし落ち着きを取り戻した。


「そうと決まれば、場所を確保しないといけないわね。ある程度設備が整ってて時間長めに使えて誰の邪魔にもならないところがあればいいんだけど……。私の家は無理だから……うーん……」

「そんな都合のいい場所あるか……?」


 お金さえ積めばそんな場所はいくらでもあるだろうが、こちとらただの高校生。財布事情はたかが知れている。


「あ」

「なに? 良い案思いついた?」

「……ある程度設備が整ってて時間長めに使えて誰の邪魔にもならないところならいいんだよな?」

「え、ええ……。あるの?」

「あるぞ、とっておきが」

「どこ?」

「俺の家」


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