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いつから俺の青春が『普通』だと思っていた?  作者: 結城 ユウキ
第2章 行事に波乱はつきもの

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第12話

 俺は二人に実行委員を依頼した経緯を説明した。


「なるほどね。もうあれね、普通に戻れないわね」

「うるさい俺はまだ足掻くぞ」


 知佳に正論パンチをもらうが、そこに関しては全力で目を背け続ける。大丈夫まだなんとかなる……。まだ……。


「確かにそういう話だったら、僕達が実行委員やったほうが色々楽だね」

「そうなんだよ。だから頼む」


 二人が実行委員になってくれれば、まずクラスがまとまる。クラス替えしてまだ日は浅いが、彼らはすでにクラスの中心人物となり、人望も集めている。


 つまり求心力と発言力があるのだ。彼らがこうするべきと言えば、そちらに流れやすい。もちろんそれは確実ではないし、湊も知佳も俺の操り人形になる気は更々ないだろう。だが信頼できる友人がそばにいてくれるだけでどれだけ安心できるか。


 もはや精神安定剤としての意味合いのほうが強いかもしれない。


「聞いた上で、改めて引き受けさせてもらうよ」

「だからやるって言ってんじゃない」


 知佳も口ではこう言うが、いざという時は助けてくれるはず。大丈夫だよね?


「ありがとうございます……」


 神様仏様湊様知佳様だ。頭が上がらない。


 一段落ついたところで、湊が口を開いた。


「でも本当に旭丘さん生徒会入ったんだね。しかもこんなにすぐ。彩人、どんな手を使ったの?」


 冗談めかした口調だが、さすがの湊も気になるみたいだ。


 湊が気にするにも無理はない。俺が二人に協力を持ちかけてからまだ一週間と経っていないのだ。正直トントン拍子に話が進みすぎている感は否めない。


 とはいえ、旭丘の個人的な内情を多分に含んでいるため、本当のことを話すわけにもいかない。


「そうだな、話せるときが来たら話すよ」


 これだけ信用してもらっといてこういった形で返すのは非常に申し訳ないが、この一連の流れについては仕方ない。いずれ違う形で詫びさせてもらおう。


「そっか、お疲れ様」


 そんな不義理を働く俺を、湊は見透かしたように労いの言葉をかけてくる。


「俺はなんもしてないけどな」


 友人の勘の鋭さに驚きつつも、俺は自戒を込めてそう口にした。


 最終的には旭丘が自分の意志で入ると決めたのだ。あくまで俺はこういう選択肢もあると彼女に伝えただけ。何かをしたわけではない。


 そこで、一時間目開始のチャイムが鳴った。


「またなにかあったら声かけてよ」

「ああ、助かる」


 そう言ってくれる湊に俺は心の底から感謝する。本当にいい友達を持った。



 一時間目の現代文の授業を終えスマートフォンを見ると、旭丘からのメッセージが来ていた。


 金曜日に会長から連絡先の交換を命じられ、俺、会長、旭丘、そしてなぜか小竹先生の四人がそれぞれ交換してはいたが、まさか旭丘からメッセージが来るとは。


 驚きながらも、俺は旭丘とのチャット欄を開いた。


『ちょっと廊下来い』


 え、ヤンキー?


 もしかして今からシメられるのか?


 そんな不安を胸に抱きつつも、既読だけ付けてすぐに廊下に出る。


 廊下に出ると、明らかに不機嫌そうな旭丘が腕を組みながら俺を待っていた。行きたくなさすぎる。


「早く」

「はい」


 俺を一瞥するなり低い声を出す旭丘。


 金曜日に見たしおらしい彼女はもう存在しないみたいだ。ツンケン旭丘に戻っている。


「なんでしょうか」

「クラスの女子にお昼ご飯一緒にどうかって誘われたんだけど」


 あの女子たちは本当に突撃したらしい。女子の行動力というかノリというか勢いというか、本当に尊敬しかない。


「よかったじゃん。まだ興味持ってくれるクラスメイトがいて」

「……」


 経緯はどうあれ誰かから何かに誘われるということは素晴らしいことだ。世の中には誘われない人間もいるのだ。ソースは俺。


「なんか余計なこと言ったでしょ」

「気のせいだろ」

「嘘。そういうお節介いらないから」


 見抜かれたかあの女子たちが口を滑らせたか真偽はわからないが、それは混じり気のない非難の声だった。


「別に友達がいらないとは思ってない。でも、誰かに敷いてもらったレールの上を歩くのはもう嫌なの。友達は自分で見つける」


 それは、今まで何も選べなかった彼女の心からの叫びのように思えた。


 きっと旭丘は友達のことでも母親に干渉されていたのだろう。


 自らの行いが軽率だったことを内省する。


「――悪い。余計なことした」


 謝罪が来ると思っていなかったのか、旭丘は面食らった表情になった。


「わ、わかればいいのよ、わかれば」


 申し訳ないとは思うが、今回を逃せば次いつ誘われるかはわからない。ここを足がかりにしてほしい気持ちが俺にはあった。


「それで、行くのか?」

「え?」

「誘われたんだろ、昼」

「誘われた、けど……」

「けど?」


 旭丘は見るからにうじうじしていた。それはもう見ているこっちがイライラしてくるくらいには。


「なにを迷ってんだよ」

「……私が行ってもいいのかなって」

「これ逃したらもう誰も声かけてこないだろうな。誘っても来てくれなかったって。そもそも印象良くないんだから」

「う……」

「それにお前、超がつくほどのこのアウェイの雰囲気で、誰かに話しかけられるのか?」


 自己紹介でのインパクト、そしてクラス内での行動が旭丘の決定づけていた。


普通はもう話しかけようとすら思わないだろう。

それで言うと今回話しかけに行って昼ご飯にまで誘った女子たちが勇者すぎるな……。怖いもの見たさかはたまた他の理由か……。


 そこまで煽ると、見事に図星だったのか目の前の少女は怒り出した。


「うるさい! 行けばいいんでしょ行けば! 早く教室戻れ!」


 逆ギレはしてくるが、否定はしてこない旭丘であった。


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