79話 石床の上で
喉の渇きを感じてふと目覚めると……なぜか私は冷たくてかび臭い石床の上で眠っていた。
「ううっ……痛い」
やけに痛む腕や膝をもぞもぞと動かし、ぼんやりとした薄明りの下で身体を起こした。
自分のベッドではなく、見たことのない場所で寝ていたことに気付き、胸の中が冷やりとする。
(ここはいったい、何処なの⁉)
お酒を大量に飲んでから麻薬を使うと、いつの間にか意識を失い。まったく覚えのない場所で目覚めることが、何度かあった。
今回もそうなのだろうと思った。
「……アンヌ、ようやく目が覚めたのね」
不意に背後から声を掛けられ、驚いて振り向くと……奥の壁に凭れて、クシャクシャのドレスを来たお母様と目が合った。
「……あ、お母様?」
「私たちはもう、お終いよ。破滅したの、アンヌ……ううっ」
「え?」
お母様はすすり泣き、手のひらで泣き顔を隠した。私は何が何だか理解出来なくて、聞き返した。
「ど、どういう意味なの?」
「私たちは裁きが下れば、死刑になると言う意味よ!」
「そんな……お母様、きっとお父様が何とかして下さるわ。お父様がダメならフレデリックもいるし」
お母様は苦しそうに首を横に振った。
「いいえアンヌ。あなた……私たちが今、何処にいるのか分からないの⁉」
「もう、お母様ったら何を言っているの?」
私は何気なく自分の周囲を見回した。
石床に石壁、扉は無くて……代わりに頑丈そうな鉄格子が部屋と廊下を仕切る場所に嵌っている。
「エフティヒアを使いすぎて……頭がオカシクなってしまったのね? かわいそうに」
「お、おかしくなんてないわ! 少しエフティヒアが切れて気分が悪いだけよ。また使えばすぐに良くなるわ!」
「アンヌ……」
お母様が薄闇の中でもわかるほど、顔を歪めた。
異常に喉が渇き、私の身体はブルブルと震え始めた。エフティヒアが切れて禁断症状が出ているのだ。
「ねぇ……お母様。喉が渇いたわ。アレを持ってないの?」
(エフティヒアを)
自分のドレスのポケットに手を入れて、ゴソゴソと探ってみたど、やっぱり何も持っていなかった。
「アンヌ……!」
「ねぇ、お願い。アレを持っていたら私に下さい」
「ここは王立騎士団本部の地下にある、重犯罪を犯した罪人用の牢獄よ。わからないの⁉」
「そんなこと、どうでも良いわ! ねぇお母様……」
「もう止めて、アンヌ。お願いよ! 私のアンヌ……正気に戻って!」
「ああ、もうっ! 意地悪しないでお母様、早くアレを出して!」
お母様が声を上げて泣きだした。
次で最終話です。




