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醜くいと捨てられた私は社交界一の放蕩者に求婚された  作者: みみぢあん


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61/80

61話 妻と夫


 ベルナール様に連れられて舞踏室を出ると、人の気配の無い廊下のはしまで行く。



「レオニー、今夜は帰った方が良い」

 

「でも、ベルナール様……」

(こんなに綺麗に着飾って、勇気を出して苦手な社交の場にも出て来たのに。ベルナール様はそのことにも気付いていないの? 私はあなたに見てもらいたくて、ドレスアップしたのでよ?)


 ベルナール様はヒソヒソと声の音量を落として、私を帰宅させようと説得を始めた。


「出来ればこのまま、君をエスコートしたいが。今夜は都合が悪いんだよ」


「でも、ベルナール様。友人たちも一緒にいますし……それにエスコートはお兄様がしてくれますから」

(やっぱりベルナール様は、恋人のアンヌ様のところへ行きたいのね……)


 綺麗に着飾り美しく変われたと思ったのに、ベルナール様は私を見てくれない。お飾り妻は、お飾り妻以上の存在にはなれないのだ。

 

「レオニー、お願いだ! 今夜は本当にダメなんだ」

「ベルナール様……」

「馬車まで送るよ、レオニー。さぁ、行こう」


 今は何を言っても無駄だと、ベルナール様は私の望みを断固拒否する構えをとる。

 ベルナール様のそんな態度に傷つき、私も少し意地になった。


「……嫌です」

「レオニー?」

「嫌です! 私はみんなと社交を楽しみます!」

「レオニー!」


 抵抗する私にベルナール様は驚き、私の両肩をギュッとつかんだ。


「絶対に嫌です。今夜は帰りたくありません!」

(今夜は嫌! 我慢できない! 自分を抑えられないわ!) 


 お飾り妻はお飾り妻らしく。

 黙ってベルナール様の言うことを聞かなければ、いけないのはわかっている。


「どうしたんだ、レオニー? フレデリックのせいで動揺して、一人でいたくないからか?」


「ええ、そうです! ベルナール様が今夜、私と一緒にいてくれるなら…… 大人しく帰ります!」

(私は怖い目にあった後だと言うのに。あなたは私を一人で家に帰して、放置するつもりなの? 少しでも私が大切だと思うなら、そんな薄情なことはしないはずだわ)


 私の頬を大きな手のひらで包み。ベルナール様は私を説得しようと、ジッ……と私の瞳をのぞき込んでくる。


「レオニー、それは出来ないんだ。頼むから、聞き分けてくれ!」

「なぜですか、ベルナール様⁉」

「それは……」


「なぜ、一緒にいてくれないの?」

(私を見て欲しい! 私を見てくれないベルナール様なんか、もっと困らせたい!) 


 私はすごく意地悪な気持ちになっていた。 


「レオニー……」

 ベルナール様は、困ったという表情を浮かべた。


「ア、アンヌ様と一緒にいたいからですか? ベルナール様は、そんなにアンヌ様を愛しているの?」


「……っ!」

 ベルナール様はハッと息をのむ。


「答えて下さい、ベルナール様!」

「それは……」


 私が恐れる最悪の答えが、ベルナール様から返って来ると覚悟した。 


「ベルナール様、答えて!」

「レオニー」


 それまで私を心配し困惑していたベルナール様の態度が打って変わり。

 厳しい表情で私を見つめる。


「……っ」

(ベルナール様を本気で怒らせてしまったのかもしれない)



 背筋がヒヤリと冷えた。




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