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醜くて吐きそうだと捨てられた私は社交界一のモテ男に求婚された  作者: みみぢあん


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33/42

33話 心構え


 具体的に結婚の話を進めてゆくと。

 ベルナール卿が支度金を用意するから、キンレット男爵家は私の持参金を出さなくても良いという契約が結ばれた。


 そこで確信した。


「やっぱりベルナール卿はお飾りの妻が欲しいから……貧乏で容姿が悪く、嫁ぎ先が無さそうな私を選んで求婚したのよ」

(確かに私なら、夫が女性と遊びまわっていても文句は言わないわ)


 それにベルナール卿が言うには、私とは気が合うらしいし。


 私は明るい居間でチクチクと刺繍の内職をしながら、ベルナール卿との結婚について考えた。


(ベルナール卿を心から愛していたら、すごく辛かったかもしれない。でも私は違う。そんな間違いは犯さない)


「うん、そうよ」

(私は求婚されたときから『なぜ私を?』と、ベルナール卿に違和感を持っていたから。婚約しても、結婚をしても、彼を愛す気は無いわ)


 この結婚は雇い主と雇われ人のような関係だと割り切り、最初からそういう心構えでいれば何の問題も無い。


 夫婦仲の良い両親を見て育ったから、昔は結婚をしたら私も夫と愛し合うのが当たり前だと思っていたけれど。

 今はそんな贅沢は言っていられない。


「嫁げるだけでも喜ばないとね。やっぱりお兄様のお荷物にはなりたくないし」

(女性として夫に愛されなくても、家族として尊重されれば満足だわ。そういう理想ならベルナール卿が夫でも、叶えられそうな気がする)


 ベルナール卿の結婚相手に選ばれた理由に納得すると、結婚への不安は綺麗に消えた。


「うん。それでじゅうぶん幸せよ。借金に苦しめられることもないし」


 男爵家の借金はまだまだ、たくさんある。ベルナール卿に支度金をもらえるのはありがたい。感謝したいぐらいだ。


「お互い、持ちつ持たれつつ。支え合って仲良く生きて行ければ良いのよ」 


 ───私はこの結婚について、そうやって納得したけれど。


 亡くなったお父様に似て、責任感が強く優しい性格のお兄様は私よりも辛そうだった。


『お兄様、私なら大丈夫よ。ベルナール卿は放蕩者でも悪い人では無さそうだし』


 お兄様はベルナール卿の求婚状が届いたときから、こうなるのではないかと。うすうす感じていたらしい。

 でもお母様の喜ぶ姿を見て優しいお兄様は、ベルナール卿に不信感を持っていても、水を差すような否定的なことだから言えなかったのだ。


『すまない、レオニー……』

『私はお飾りの妻として、ベルナール卿に協力するのは構わないのよ』

『胸が痛むよ。お前をベルナール卿に売るようで』

 

『まだ成人前のお兄様が男爵位を継いで、お母様と苦労していた姿を見ていたから。私はずっと役に立ちたいと思っていたの。だから嬉しいわ』


『苦労をさせてすまない。僕に父上みたいな賢さがあったら良かったのに……』


『あら、私はお兄様やお母様と一緒に苦労したいわ。私だけ仲間外れにしないで』

(それにお兄様はじゅうぶん賢いわ。ほんの少し運が悪かっただけよ……大きな借金を抱えても、倒れずにここまでやって来れたのだから。すごく立派だわ)


『レオニー……』


 この時、お兄様は今にも泣きだすのではないかと思うほど、悲しそうに顔を歪めた。


『大丈夫よ、お兄様。私は幸せになるわ。……だって相手が意地悪なフレデリック様ではないから、希望が持てるわ』

(私がこの結婚に何を求めているかで、幸せになれるかそうでないかが決まるのだと思う。ベルナール卿に愛を求めなければ、気持ちの持ちようで何とでもなるはずよ)


 それに浮気性の婚約者に嫁がなければいけないという話は、貴族の政略結婚なら良くある話だから。

 私の結婚が特別不幸というわけでもない。


 学園でフレデリック様だけでなく、他の男の子たちまで私を『カマキリ令嬢』と呼び始めた時。 

 容姿の良くない私は自分に期待するのをやめた。


 同時に『愛』に関する憧れや希望もすてて、心に頑丈な鎧をつけた。


「だから、平気……」


『お飾りの妻』になっても。




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