30話 陽光の下のベルナール卿2
私はずっと胸の中で渦巻いていた疑問を、率直にたずねた。
「ベルナール卿こそ……私の容姿が嫌ではありませんか?」
(私はキスをする想像をしただけで、元婚約者に『吐きそうだ』と言われた娘ですよ? 本当は嫌でしょう?)
本音が知りたくてベルナール卿の美しい顔を、ジッと見つめたが、まったく心が読めない。
「君は完璧ですよ、レオニー嬢」
「完璧……? どこが?」
(私への皮肉かしら?)
自分の容姿についてほとんど知らない男性に、意見を聞くのはあまりにも自虐的すぎるけれど。
でもハッキリとベルナール卿から、本音を聞きだしたい。
恥ずかしさで頬が熱いけど、今は気にしない。
「女性の容姿はドレスや化粧。立ち居振る舞いや言葉使いで、何とでも変わるものだから」
「……」
(もしかしてベルナール卿は博愛主義なの?)※博愛→すべての人を平等に愛したい人。
ベルナール卿から意外な返事が返ってきた。
本気でベルナール卿はそう思っているらしく、私を『カマキリ令嬢』と嘲笑っているようには見えない。
「あの……ベルナール卿、一つだけ聞いても良いですか?」
「何ですか?」
「なぜ、私を選んだのですか?」
「ワルツを踊った時……君とは気が合うと思ったから」
「……それだけですか?」
「いいえ。それとケネスモント夫人が、君は読書が好きだと言っていたのをおぼえていますか?」
思わず私は顔をしかめた。
『暗い図書室に閉じこもっているのです。ヒマさえあれば本を読んでいると、私たちの間では有名でしたわ』
「ええ」
(アンヌ様はそんな上品な言い方はしていなかったけれど)
「意外に聞こえるかもしれないけど、私も読書が好きなんです」
「ベルナール卿も読書を?」
「ええ。意外かな?」
「は? い、いえ。そんなことはありません」
(一瞬、意外だと思ってしまったわ)
「……実は何か月も前に王立図書館で、君を見かけたことがありますよ。それで気が合いそうだと思ったから」
「王立図書館で私を⁉」
(ベルナール卿のような美男子なら、会えば簡単に忘れないと思うけれど? そんな記憶無いわ)
思わず首を傾げていると、ベルナール卿はすぐに私の疑問を解消した。
「確かレオニー嬢は……『アドジール王家の事件簿』が並ぶ本棚の前で、熱心に本を読んでいたから。私に気づかなくてもおかしくないでしょうね」
「ああ! ベルナール卿も『アドジール王家の事件簿』のシリーズをご存知だったのですね」
「ええ。私の愛読書の一つです。自宅に全巻そろえてあります」
「まぁ!」
本の話題が出たとたん、単純な私はベルナール卿に親近感を持ち。
それまでの不信感や不安を、すっかり忘れてしまった。




