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醜くて吐きそうだと捨てられた私は社交界一のモテ男に求婚された  作者: みみぢあん


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29話 陽光の下のベルナール卿



 さっそくベルナール卿に、会って話がしたいと手紙を送ると。すぐにその機会がおとずれた。

 私は学園を休み、キンレット男爵家にベルナール卿を招いた。



「レオニー嬢、今日は私と会ってくれて感謝します」


 女性にしては背が高い私でも、見上げるほど大きな身体のベルナール卿は、上から私を見下ろしニコリと笑った。


「いいえ。こちらこそ、お会い出来て光栄です」


 私よりも六歳年上のベルナール・カザートン卿に会うのは今回で二度目だけど。

 やっぱり見惚れるほどの美男子だった。


 初めて会った時は、舞踏室に灯された蝋燭の柔らかな照明の下だったから。私の記憶は3割増しで、美化されているかもしれないと思っていたけれど。


 今は昼下がりの午後、良く晴れた空の下で。

 陽光に照らされたキンレット男爵邸の庭を、ベルナール卿がゆったりと歩く姿は神々しいほど輝いていた。


『まずは二人で話をされてはいかがですか? 今日は気持ちの良い日ですから、庭の散歩をするのにうってつけの日です』


 私たちはリュシアンお兄様にすすめられて、ベルナール卿と二人でぶらぶらと、散歩をしているところだ。



 襟足で短く切りそろえた青みをおびた黒髪。黙って見つめられると心の奥底まで見透かされそうな深い紺色の瞳。

 長い手足に背の高い身体には厚みもあり。ベルナール卿は陽光の下で会うと……放蕩者というよりも騎士だと言われた方が、相応しく思える。


 それほどベルナール卿は逞しい体格なのだ。



「こんなに美しいと悪魔や天使でさえ、誘惑されて罪を犯してしまいそうだわ……」

(ベルナール卿が放蕩者になったのがわかる気がする。だって周囲の人たちがこの魅力的な美男子を、構わずにはいられないでしょうから)

 

 思わず本音をポロリと、不躾にこぼしてしまった。

 

「レオニー嬢……それは褒め言葉ですか?」


 どことなく嘘クサイ笑みを浮かべているが。ベルナール卿は探るような視線を私に向けてきた。

 口には出さないが、『君は私に嫌味を言っているのか?』と言っているように見える。

 私は慌てて自分の失言の言い訳をした。


「もちろん褒め言葉ですわ。あなたほど美しい男性に、会ったことはありませんから」

(あら……ベルナール卿を怒らせてしまったかしら? いけない! 目が少しも笑っていないわ)


 リュシアンお兄様との話を思い出す。


『ベルナール卿の美貌もだけど。男の僕はあの大きな身体に脅威を感じるね』

『確かに騎士のような体格の持ち主だと。私もダンスを踊った時に思ったわ』

『うん。女性には魅力的に見えても。僕のような並の男では太刀打ちできなくて、敗北感を感じるよ』


 男としては張り合う気にもなれないと、お兄様はベルナール卿の印象を評していた。

 

 こうしてベルナール卿をじっくりと観察すると。お兄様の言っていた通り、表情はやわらかいけれど逞しい体格のせいか威圧感がある。


 穏やかそうに見えて、本気で怒らせたらきっと……ベルナール卿は誰よりも怖い人になりそうだ。


 自分の失言で居心地が悪くなり、分厚いメガネを通してモジモジとベルナール卿の顔を見つめていると……


「本当に? レオニー嬢は私の容姿が嫌いなのかと思いましたよ」

「いいえ、ベルナール卿。あなたのような美しい男性が嫌いな女性はいないと思います」

「本当にそう思いますか? 君も好き?」

「ええ」


「そう? なら嬉しいです。レオニー嬢」

 ベルナール卿は機嫌を直してニコリと笑う。今度の笑顔は心から笑っている様に見えた。


 私は内心、ホッ……と胸を撫で下ろす。



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