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醜くて吐きそうだと捨てられた私は社交界一のモテ男に求婚された  作者: みみぢあん


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2話 読書クラブの友人たち


 学園に入学してすぐに婚約者のフレデリック様の言葉に傷つけられて、大きなショックを受けた。

 始まりがそんな調子だったから、私の学園生活は最悪のモノになることを覚悟していたけど。

 暗雲が立ち込める中でも、私にとって悪いことばかりでは無かった。



 家が貧乏でもお金をかけずに趣味だけは充実させたくて入った読書クラブで、私にも仲の良い友人たちができたからだ。


「ねぇレオニー……王立図書館の本を無料で借りられると、あなたは知っている?」


 食堂の一画でランチを注文して食べる友人たちと一緒に、私は家から持ってきた昼食を食べていると友人のイネスにたずねられた。


「まぁ……そうなの? 知らなかったわ」

「ふふふっ……私たち学園生は無料で借りられるそうよ」

「一度はのぞきに行かないともったいないわね」

「ええ、レオニー。そのとおりよ」


 学園内の図書室もすべて無料で借りられるけれど。

 基本的に王立図書館は規模が大きいから、王国で一番扱う本の数が多い。その管理費用を補うために私たちのような一般人が、本を借りようとすると有料になる。

 もちろん本を購入するよりは安上がりだ。


 王国の仕事に従事する王宮の文官や王立騎士団の騎士たちは、仕事で幅広い知識が必要になるため無料らしいけど。


「教えてくれてありがとう、イネス。今度、王立図書館に行ってみるわ」

「どういたしまして、ふふふっ……」


 セリーヌとナタリーも興味津々で会話に加わった。


「ねぇ、イネス。あそこにはロマンス小説がたくさんあると聞いたけど…… 本当かしら? あなたは見たことがある?」


 ナタリーがイネスにたずねると、その疑問を隣に座るセリーヌが答えた。


「ナタリー……ロマンスどころか、官能小説もあるわよ。私は背表紙しか見たことがないけれど」

「あら!セリーヌは行ったことがあるの?」

「ええ。あの本の数を見たら驚くでしょうね」


 三人とも読書という共通の趣味があり、家の格や生活レベルも同じぐらいだから話も良く合うのだ。


 それから私たちは読書クラブの先輩にすすめられて以来、昼食時の恒例となった読んだ本の感想を語り合う。


でも、心浮き立つ楽しい時間に水を差すように……

 不意に女性の声で、私にとって最悪と言える言葉が耳に飛び込んで来た。

  

「ねぇ、窓際にいるあの……あなたのカマキリ令嬢ではないかしら?」



 私はハッ! …と息をのんだ。

「……っ!」

(カマキリ令嬢⁉)


『昆虫のカマキリにそっくりだな』

 婚約者フレデリック様に投げかけられた、侮辱の言葉が脳裏を過ぎる。

 

 おそるおそる声が聞こえた方を見ると……そこには予想通り、私の婚約者フレデリック様がいた。

 フレデリック様の隣には私よりも年上らしい令嬢が、ニッコリとほほ笑みながら私を見ている。

 その令嬢は小柄で華奢な体格に華やかな金の髪と青い瞳を持っていて、一般的に美人と呼ばれるタイプ。


 背が高く地味な茶色の髪を持ち醜いとまで言われた私とは対照的。いかにもフレデリック様が好きそうな容姿の女性。


 その女性が私を『カマキリ令嬢』と呼んだ。


『カマキリ令嬢』とは間違いなく私に投げかけられた言葉なのだとわかる。顔が強張り胸の中で心臓がドクンッ! ドクンッ! ドクンッ! と暴れ出す。



「ねぇ、フレデリック。彼女に声をかけなくても良いの?」

「やめてくれよ、アンヌ」


 フレデリック様にアンヌと呼ばれた令嬢と目が合った。アンヌ嬢は私を嘲笑するようにほほ笑んだ。


「ふふっ……でも彼女、あなたの婚約者でしょう?」


 フレデリック様は嫌そうに私を見て、すぐに視線をそらしてアンヌ嬢に目を向ける。


「あんなカマキリ女なんて違うさ!」

「あなたに聞いた時は冗談だと思ったけれど……本当に彼女ったら、昆虫のカマキリにそっくりだわ。まさにカマキリ令嬢ね」


「おい、おい、アンヌ。あんなのを君が気にかけることないよ」

「だってあそこまで醜いなんて……わざと自分が醜く見えるようにしているとしか思えないわ。あんな姿……私だったら恥ずかしくて死んでしまうでしょうね」


「アンヌ、君のような美人とカマキリ女を比べるなんて無理があるよ。アイツは産まれた時から美意識が欠けているんだから」

「まぁ、フレデリックったら! うふふっ…」


 アンヌ嬢はフレデリック様の腕にぶら下がるようにしがみつく。まるで自分のほうが婚約者だと言いたげに。



 イチャイチャと人前で戯れあうフレデリック様とアンヌ嬢を、私が呆然と見ていると。私のようすに異変を感じたイネスが声をかけてきた。


「レオニー、どうしたの? 急に黙り込んだりして……?」


 私はあわてて目をそらして、自分の手元にある昼食のサンドイッチを見下ろした。私の手はブルブルと震えている。


「……何、何でもないわ。イネス」

「そう? レオニー……本当に大丈夫?」


 イネスは私が見ていたフレデリック様とアンヌ嬢にチラリと見た。


「大、大丈夫よ。イネス……ありがとう」

(ああ、嫌だ。友人たちにはフレデリック様が私の婚約者だと話してないから……きっと変に思ったはずだわ)


 挨拶に行った時、フレデリック様に『話しかけるな』と侮辱されたから。


 友人たちに私の婚約者がフレデリック様だと話せば──

 その婚約者に私が屈辱的な扱いをされていると、話さなければいけなくなる。だから友人たちには言えてない。


「……っ」

(でも……そろそろ黙っているのも限界だわ)


 二人が私を嘲笑う場面を友人たちに見られてしまったから。もう隠せない。




(それにフレデリック様……もしかしてあのアンヌ嬢と浮気をしているの?)


 その事実を認めたくないけど。疑問に思うのが愚かだと思えるほど、誰が見てもフレデリック様の不貞は明らかだった。


 フレデリック様とアンヌ嬢が私に興味を失くして昼食を取り始めるのを見計らい、友人たちに不誠実な婚約者の話をした。




衝動的に番外編とかを書き加えたくならないかぎり、全79話の長編となっております。

初稿は確か2年ぐらい前ですが。つい最近、改訂しました。

良い暇つぶしになれば幸いです(^^)/

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