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醜くて吐きそうだと捨てられた私は社交界一のモテ男に求婚された  作者: みみぢあん


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1話 私を嫌う婚約者

挿絵(By みてみん)


 学園に入学してすぐのこと。


 私は二歳年上の婚約者、ウォルコート子爵令息のフレデリック様に挨拶をしようと会いに行った。



「フレデリック様……あの…」


「……っ!」

 講義室で友人たちと雑談をしていたフレデリック様を見つけて声をかけると、ギョッと目を剥かれた。


「フ、フレデリック様…?」


 直前まで友人たちと笑っていたフレデリック様は、声をかけた私の顔を見るなりピタリと話すのをやめてしまう。

 フレデリック様の端整な顔が怒っているように見える。


 不機嫌そうにムッと黙りこんだフレデリック様は、私の腕をつかむと強引に講義室から出た。

 無言で人の気配のない階段の踊り場までくると、フレデリック様は乱暴に私の腕を放し声を抑えて怒鳴った。


「レオニー、学園で僕に話しかけないでくれ!」

「……えっ! どうしてですか?」

「君のような醜い容姿の女と親しい仲だと、誰かに誤解でもされたら僕が恥をかくからだ」


 私たちは親しい仲どころか婚約しているのに。フレデリック様は嫌そうに私の疑問にそう答えた。


「そんなっ……」


 婚約者が吐き捨てたあまりにも辛辣な侮辱に、私は言葉を失った。初めて会った時からフレデリック様に嫌われていたのは、何となく感じていた。

 ……でも家同士の契約だから。お互いこの婚約からは逃げられないし、ダメになれば私も困る。


「成長したら少しはまともになるかと思ったけど。君はどんどん醜くなってゆくな! 本当にがっかりしたよ」


「フ、フレデリック様……っ!」

(確かに自分でも、私は美人ではないと自覚している。でも醜いと言われるなんて!)


 端整な容姿を持つフレデリック様には、私の地味な容姿が許せないらしい。


 私は涙目になって同じ視線の高さのフレデリック様の顔を見た。

 女性にしては私の背はヒョロリと高いほうだから、フレデリック様とほとんど身長が変わらない。

 そのうえ私の身体は痩せているから、以前からフレデリック様に『冬の枯れ枝のようだ』とバカにされていた。……さすがに醜いと言われたのは初めてだけど。


「あんまりです……」

(婚約者のフレデリック様に、ここまで面と向かって言われるなんて!)


 いや、むしろ私が簡単に切ることができない婚約者だから。フレデリック様はよけい私が気に入らないのだろう。


 侮辱の言葉で傷ついた私の萌黄色の瞳が、涙目になっているのが自分でもわかる。たぶんフレデリック様は、そのことに気づかないでしょうけれど。

 それはフレデリック様が私に興味がないだけではなく、視力が弱い私は分厚いメガネをかけているから。

 分厚いレンズ越しだと私の瞳が奇妙に歪んで大きく見えるのだ。

 


「フンッ! ……少しは自分でも、まともに見えるように努力ぐらいすれば良いのに」


 不躾に私の顔をジロジロと見て、フレデリック様は吐き捨てるように言った。

 言われなくても私だって嫌と言うほどわかっている。


「…でも……」

「なぁ、レオニー。その不気味なメガネぐらい替えたらどうだ?」


「それは……」

(キンレット男爵家にお金がないことぐらい、フレデリック様も知っているはずなのに。なんて残酷なことばかり言うの⁉)


 貧乏でも貴族の端くれのは私は、お金が無いからメガネが買い換えられないとは言えない。


 視力を補助する魔法が組み込まれた魔道具のメガネなら、薄くてもっとお洒落な物がたくさんある。

 だけど魔道具はとても高価で牛を2頭ぐらい手放さなければ、今のキンレット男爵家には手が出ない。そんな贅沢はできないから。


 私のお父様が亡くなり、お兄様がキンレット男爵位を継いだ。

 その時の混乱に乗じてお父様の仕事を手伝っていた人がお金を持ち逃げした。

 それでいっきに事業が傾き多額の借金を背負ってしまったのだ。



「それにしても、前から君は何かに似ていると思っていたけど。昆虫のカマキリにそっくりだな」


 萌黄色の瞳にひょろひょろと小枝のように背が高い身体のせいだろう。


「ひどいわ、フレデリック様!」

(なんて意地悪な人なの⁉ 私のことがそんなに嫌いなの⁉)


「ひどいのは君の品の無い容姿だろう? それに君が努力を怠ったからで、僕のせいじゃないさ」


「……っ」

 顔がカッ! と恥ずかしさで熱くなった。私は背の高い身体を丸めてうつむいた。


「とにかく……その醜い容姿を何とかするまで、僕に話しかけないでくれ!」

「……っ」

「わかったか、レオニー?」

「わ… わかりました」

「フンッ! 僕に恥をかかせるな」


 フレデリック様は自分の言いたいことを言って、私の前から去って行くが……

 私はあまりにもショックを受けて涙があふれ出し、その場から動くことができなかった。 





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