15話 社交デビュー
二歳年上のフレデリック様とアンヌ様が学園を卒業した。
噂の発生源だった二人がいなくなってからは、私に関する話をする人たちも徐々に減って行った。
翌年にフレデリック様とアンヌ様が結婚すると、再び私の噂話が再燃したけど。
すぐに学園生たちの興味は次の話題へと移り、以前ほど長くは続かなかった。
もともと目立つことが苦手な私は、このまま静かに学園生活を終えたいと願っている。
──でもそんな私にお母様とリュシアンお兄様は、社交界にデビューすることを熱心にすすめて来た。
「さぁ、レオニー。そろそろ次の社交シーズンに向けて、デビューの準備をしましょうね」
「ええっ⁉ 私がデビューですか?」
「もちろんそうよ」
「あの、お母様……私はもう、結婚はあきらめました。学園を卒業したら職業婦人への道へ進もうと思っているの」
「ダメよ、レオニー。そんなふうにデビューする前からあきらめては」
「でも、お母様……」
お母様が私の言葉で悲しそうな顔をしたから、私はあまり強く社交デビューを断れなかった。
「母上の言うとおりだよ。まずは社交界にデビューしてからその後で考えないと」
「でも……」
(お兄様まで)
「とにかくドレスを作りましょう?」
「そうだよ。レオニーは母上の言うとおりにしていれば良いんだよ」
「でもお兄様、もったいないわ! 社交界にデビューをしなければ、夜会用のドレスなんていらないでしょう?」
「いいえ、必要よ。あなたが言っているように職業婦人になったとしても、あなたは貴族出身の令嬢だもの。雇い主が夜会に同行させることだってあるわ」
「そんな」
(そう言われると困るわ)
「家庭教師になるつもりなら、正式な夜会に出席した経験が無いなんてことでは、ダメでしょう? 生徒に教えるのは学問の知識だけではないはずよ」
私が目指している家庭教師とは。住み込みで家族と一緒に生活して、子供の礼儀作法まで指導する教師だから。
お母様が言っていることは間違っていない。
「うううっ……」
(正論だわ! これ以上は抵抗出来ない)
「良いわね? レオニー」
「…………はい」
「レオニーは思いやりがあって、本当に良い子ね」
「ここまで良い子過ぎるのも困るよ。いくらうちが貧乏でも、妹をデビューさせられないなんて。友人たちに知られたら僕が恥をかくからね」
「ううっ……お兄様ごめんなさい。そこまで考えていなかったわ」
(それも正論だわ。お母様とお兄様に口では勝てない)
私はさらさら社交界にデビューする気なんてなかったのに。
結局、お母様とお兄様に押し切られてしまい、デビューすることになった。




