ジゼルとアルブレヒド
これにて三章は終了となります!
19時からは三章人物紹介を行いますのでそちらもどうぞ!
さてと、今回も無事に終わったところで後日談改めまとめといこう。
ヘクセレイに人喰を倒したことを報告、今度こそ確実に仕留めたが前回の例もあるので警戒は怠らないようになった。
「私は教皇だ!私が許可を出さない限り、お前たちに教皇になる権利などーー!」
「申し訳ないが教皇様、実は教皇様の許可がなくとも時期教皇を選ぶことは出来るのです。枢機卿全員からの署名があれば!」
「そしてセルド卿、貴方には暫くの謹慎と位の降格処分になります。理由は分かりますね?」
「………ええ、謹んでお受けします」
とりあえずベオさん連れられて宮殿内に報告をしに行った際に王の間にて教皇陛下かが散々喚き散らしているのを耳にした。
どうやら教皇陛下は席を譲りたくないらしいが紳士然とした壮年の男性と引き締まった顔つきの精悍な男性に署名が集まった書類を見せられ、ショックからか膝から崩れ落ちていた。
一方、セルド卿は国を救った俺たちに対する態度の悪さと漆黒法典の悪用を咎められて枢機卿から降格したようだ。
「おや魔導王、これはお見苦しいものを見せてしまいました。」
「気にしなくていい、スミス。それよりも今回の報告をしたいのだが誰にすればいいか、分かるかい?」
「ハンス、説明を」
「そうですね、お手数をかけさせていただきますが………待ってくれ、すまないそこの君。」
書類を差し出され、リリムさんと何度も読み直しているとふとハンスさんの目が隣で書類を覗き込んでいる霞を捉えていた。
「………君の名を聞いてもいいか?」
「私か?私はジゼルだが?」
「年は!?」
「ざっと180くらいだな。しかし、あまり女性に年齢を聞くのは不躾ではないかうおっ!」
霞が少し咎めるようなセリフを言い終わる前にハンスさんが霞の肩を掴み、詰め寄る。
「私だ!………私が君の父親だ!」
「えっ?」
あまりの剣幕にとりあえず一旦落ち着かせようと間に入るとハンスさんはぼろぼろと大粒の涙を流しながら笑っていた。
「まさか噂の聖女が私の娘だったとは!」
「先輩、それは本当なのか?間違いではなくてか?」
訝しむ霞に答えるように魔眼を使ってハンスさんの情報を見抜くと
武器 鎖→フレイル
所属 ヘクセレイ教国 ルミナス教会 枢機卿
ステータス 魔法 D 甲斐性 B 体力 E 頭脳 B 特殊 F
パートナー クリスティーナ
種族 精霊
追記 ジゼルの父
親愛度 クリスティーナ 68
俺は優しく彼女の背中を押して、ハンスさんに近づけてやる。
「魔眼で確認したらお前と血縁関係が出てきたから間違い無く、ハンスさんはお前の父にあたる人物だな。」
まあ見た目もだいぶ似ているし、きっとそうなのだろう。
となれば俺たちは感動の再会にたまたま立ち会ったことになる。
「俺たちは書類を出してくるから、また後でな。霞」
「………ああ、またな先輩」
俺たちは2人の邪魔をしないようにゆっくりとその場を後にし、閉める扉の先から霞を抱きしめるハンスさんの姿を見てほっこりした気持ちを頂いたのだった。
*
あれから1週間、ひとまずヘクセレイの新教皇が決まるまでひとまず寛いでくれと言われたが国ぐるみで食客扱いはむず痒いのでタイフネで復興作業を手伝っていた。
そういえばある意味戦犯のシュヴァインは目を覚ました後、すぐに先生や英雄から問い詰められ、全部暴露した結果、新教皇が決まるまで処分待ちとなった。
そんな中で共に復興作業をしていたアクセルが宮殿に来いと俺に言ったのでついていく事に。
「アクセルさん、何があるんですか?」
「大した事じゃないさ、双銃の希望さん。」
「………なんだそのこっぱずかしい2つ名は。」
「2つの国を救っておいて、今更王家が与えた2つ名をいらないと言うな。因みに名前を与えたのは新教皇様の娘らしいが大分お前を気に入っているようだ。もしかしたら君のハーレムに新たに加わるかもな」
アレか?
これはなろうテンプレによくある繋がりが欲しいから国の命をもって息のかかった位が高い娘をパートナーに据えるようなものか?
と、そこまで考えたところで何かおかしいと気づき、ゆっくりアクセルさんの言葉を反芻してようやく理解した。
「待て待て待て!アクセルさん!?教皇様新しく決まったの!?じゃあ今から行く場所には教皇様がいらっしゃるの!?」
「気にするな、小さいことを気にしていたら禿げるぞ」
「何が小さいことか論述してみろよ!最初から知ってたら俺以外にロゼさんとクレアさんを連れてきたわ!」
「男が女を頼ってどうする?それにこれからもそうやって呼び出される時にパートナー達がいない時だってあるだろう?」
奥の間の扉前にしてアクセルさんに対して並べ立てて見るもののアクセルさんは笑って流し、扉をノックした。
「うだうだ言っていても始まらないからさっさと入ってくれ。」
内側から引かれた扉へ背中の真ん中あたりを思い切り突き飛ばされて、俺は踏鞴を踏みながら部屋の中へと押し込まれる。
勢い勝っておかしな姿勢で侵入した俺を、奥の間の中から複数の視線が射抜いた。
「お待たせしました。疾風の聖槍 アクセル・レラレーションと………」
「………マコト・カラスマです。」
さらっと2つ名を名乗るアクセルに並んで先程初めて聞いた2つ名など名乗る気にもなれず、ロゼさん達に教わった所作を完璧に演じると何故かざわつきだす。
「あれがグラマソーサリーを救った英雄の子………」
「立ち振る舞いからはおかしな事はないな。妾の子という話だが………」
「女は目を合わせるな、妊娠させられるぞ」
おいコラ最後おかしいだろ!
途中まではいいよ、あってるから。
何で最後、そんな変な能力持ちになってるの俺!?
アレか!ハーレム築いてるからか!なら仕方ないな!
「皆、静粛に」
半分くらいヤケクソ気味に一列に並んでいる神官達の話に耳を傾けていると一際響く声が場を鎮める。
そこには神官たちの中でも特に豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子のようなものを被った壮年の男性が教皇の証である席に座っていた。
というかハンスさんだった。
となると先程アクセルさんが言っていた娘というのは………
「もちろん、私だ。真先輩。」
「ですよね!!」
修道服に自分の肢体を押さえ込んだ聖女と呼ばれた女性つまり霞がハンスさんの隣で佇んでいた。
位を得たのか、少し雰囲気が変わっている気がする。
「予定調和すぎる………」
そしてそんな言葉をこぼしながらアクセルさんと共に教皇様の前にて膝をつく。
「呼び出してすまないがあと2人、到着が遅れているようだ。暫し楽にしてくれ。」
「あと1人ですか?」
アクセルさんの方を見ても彼女も知らなかったようで首を傾げている。
立って待つ事5分後、扉を開ける音とともに両手両足を揃えて見るからにガチガチに緊張してこちらへと歩いてくる男と拘束された男が連れてこられた。
「い、い、い、イワン・シルベストリア!ただいま推参しました!」
「このシュヴァインにこんな真似をしといてただじゃおかないんだな!」
まさかの見知った人物だった。
てっきり、ベオさんあたりが来るものだと思っていたのだが予想を裏切られた。
カチコチに緊張しているのが見て分かる歩き方でアクセルさんの前に膝をつくとアクセルさんが腕を引いて、イワンを俺とアクセルさんの間に膝をつかせる。
シュヴァインは無理やり頭を上げようとするので漆黒法典の方と思われる人によって頭を下げられた。
「それでは新教皇としての初仕事も含めて君たちには来てもらった。」
「それは他の国の人間がいますが言ってもよろしい事なのですか?」
それは俺も思った。
教皇についてから表舞台としての初仕事になるのだろうがそれをバラしても構わないのか?
「だからこそこれは君たちへの信頼だ。信頼こそが尊き関係を結ぶと神は告げている。」
「そうですか、分かりました。教皇様。」
「それではまずはマコト・カラスマここに」
「はい、超越の英雄の子、マコト・カラスマです。」
俺は改めて膝をつき、ハンスさんとその隣で幸せそうに俺を見て微笑む霞から何となく言われる事が予想できた。
「君には人喰を倒し、国を救ってくれた。だがうちには君を喜ばせるほどの財はない。よって二つ名とーー我が娘、ジゼル・クラシカリアを『双銃の希望』マコト・カラスマに与えよう。」
「有難き幸せ。」
俺はゆっくりとこちらへ近づく彼女へ手を差し伸べる。
彼女は俺の手に自分の手を重ねてゆっくりと俺の胸におさまった。
「わかっていただろ?先輩?」
「予想はついていたし、ロゼさんから許可もらったしな。………死にかけたが。」
この1週間の間にマジ説教を食らって、ガチで殺しにかかって来たと思うほどの古代魔法の数々を体が動かなくなるまで受けたところでようやく許可が出た。
「先輩のパートナーの気持ちも分かるが、婚約者としての立場に胡座をかいているだけではダメだと私は思うのだが?」
「悪いのは俺だからな、ロゼさんをあまり責めないでやってくれ。それと皆んなと仲良くな?」
「………………善処はする」
「おい、なんだ今の間は。」
息が触れ合うほどの距離でそんな会話をしていれば後ろでアクセルさんからの咳払いが聞こえた。
我に返った俺たちはすぐにその場から退くと教皇様は次の名を呼んだ。
「イワン・シルベストリア、ここに。」
「は、はい!」
見るからに緊張しているのが分かる状態で何とか礼儀作法を整えているがどうにも頭の中から抜けたようでちぐはぐである。
「そなたはアクセル達と協力してタイフネの民を救っただけではなく、前教皇の愚行を止め、長き間止まっていた国に新しい風を吹き込んだ。礼を言う。」
「いえいえいえいえ!頭を下げないでください!僕にはそんな!」
ロゼさんから話は聞いた。
教皇が人喰を前にしてタイフネの民を生贄にするという馬鹿をやらかしたのでそこをついて教皇および取り巻きの枢機卿を引き摺り下ろしたらしい。
その隙を狙って、前々から手回ししていた枢機卿達の署名を集めて新教皇をつくりだした。
優柔不断に狼狽えていれば暫くは教皇の席に座れたもののパニクって始めて自分の考えを通そうとした結果がこれでは泣きたくなる。
「彼も救世主ではあったがそなたも同じ価値があると私は考えている。君にはこちらを」
「これは………タイフネの森に生える薬草などの採取権利ですか!?」
「いかにも我が国では回復や防御に関して力を入れておるがタイフネとの関係を絶っていたために技術も廃れていた。だが既にタイフネと交渉をし、同盟国としてより良い関係を築いていくと決めた。これはその関係の立役者の君に受け取って貰いたい。」
イワンはあの状況で教皇に真っ向から歯向かったおかげで余計な犠牲者を出すことはなく、ヘクセレイの民たちも教皇を変えようと決意したのだ。
その結果、タイフネの民たちも捨てられた恨みもあるがそれでも少しずつ歩み寄りをしようとしている。
タイフネの民たちは森の中にある薬草の位置に知識を持ち、ヘクセレイの民たちはそれを取りに行くだけの力がある。
両者持ちつ持たれつの関係を作り出したイワンにその採取権利はふさわしい。
「よかったな、イワン。」
俺は感極まって震えているイワンの肩に手を置いてそう告げる
「これならうちの借金も何とかなるか?採取したものを加工してもらって僕の店で売れば………いやアルルの実家で研究するのも悪くない」
が、イワンは既に傾いたお家を建て直すための金策をぶつぶつと呟きだし、肩に置こうとした手はそっと空中に漂う。
「意外と金にがめついな。」
「ロゼさんが本来はそのポジションだったんだけどな。」
俺と霞はそうぼやくと次にシュヴァインが呼び出された。
「シュヴァイン、貴君は心武器によってそこのマコト・カラスマを殺そうとしたことに違いはないな?」
「違うんだな!あいつに再び決闘を仕掛けるための準備だったんだな!それでたまたま人喰が蘇っただけなんだな!」
何故新教皇が決まるまで裁けなかったというと彼を裁くための証拠がなかったからだ。
死体を集めに森に入っていたのも俺へのリベンジ決闘の準備と言い張ればそれで誤魔化せてしまう。
「なるほど………では処分を言い渡す。貴君には今ある身分を剥奪し、教会にて下働きをするがよい。」
「なっ!お、おかしいんだな!権力にものを言わせているんだな!」
「アンタがそれを言うか。」
と言うのを予想していたのでルナールさんに頼んで漆黒法典の方達と共にシュヴァイン周辺を漁らせた所、出るは出るは悪どい数々。
つまり今回の処分は人喰関連でも俺への殺害容疑でもない。
今まで奴が食い物にしてきた弱者たちからの罰だ。
「前教皇の時には色々と見逃されたようだが私は見逃さない。貴君が犯した罪の重さを感じながら神に奉仕すると良い。これにて終了とする!」
顔を真っ青にして頭を抱えて暴れ出すシュヴァインが連れて行かれ、新たな主君たる堂々とした覇気ある声を持って謁見は終了した。
*
「てな訳で今日から彼女も俺のパートナーになる。霞改ジゼルだ。皆んな、仲良くしてね、本当にお願いだから喧嘩はしないでね!」
「ジゼル・クラシカリア。又は霧崎霞だが、霞はマコト先輩以外には呼ばせないからそのつもりで頼む。趣味は料理、好きなものはマコト先輩とバレエ。よろしく頼む。」
教皇との謁見を終えて、学園に夏休みに入る許可証を出した後はWSを貸し切って霞に育てられた子達とパーティを開いた。
会場の中にはあちこちにテーブルが並んでおり自分達で好きな物を取って食べるスタイルだ。
それぞれが挨拶を交わす中ウィンディの号令により料理と飲み物が運ばれる
その料理はまるでバイキングの様に種類豊富で一品一品手が込んでいた。普段もある程度贅沢な物を食べている俺達でも目を見開く程だった
知り合いだけのパーティーなので関係者として連れてきたティフォンとシエルは泣きながら笑うという器用な真似をして霞の胸に飛び込み、感動の再会を果たす。
「自分は関係ないよね?もう帰っていいかい?会長?」
「そんな事言わずに少し付き合いなさい!いつもギル君は生徒会の集まりがあると帰っちゃうじゃない!」
「だって面倒だし、人付き合いだるいし。」
「そんな事言わないの!!」
ギルとはあまり話したことはないが会話の内容から判断するに引きこもり予備軍みたいな精神性を持っていそうだ。
シエルのあの甲斐甲斐しさならヒモになっても養いそうだしなぁ。
「ねぇ〜まーくん?お姉さん酔っちゃったみたい?どこか2人っきりで休めるとこ、行きたいなぁ?」
「公共の場で誘惑はあまり好ましくないな。」
「あらぁ〜お盛んじゃないの?クレア?でも貴方、確かかなりお酒強くなかったぁ?」
とってもおっきなお胸を背中に押し付けながら俺の耳元で甘く囁くクレアさんに耐えているとそこへアクセルとエリスが訪れた。
「もう邪魔しないでよ、エリス。せっかくまーくんとお外ーー」
「ところで気になってたんすけどエリスさんとクレアさんは知り合いなんですか?」
ちょっと18禁のラインを飛び越えようとする前に会話の道を正しておくとエリスさんもそれに答えてくれた。
「わたしはグラマソーサリー雇われの傭兵よーん。クレアとは何度か同じ戦場で共に戦った事があるわ〜」
「あの頃は私もまだ若かったわぁ。まだ拗らせていた頃だもの。」
「それを言うならわたしもよ〜 けど、その後まさか一回り年下の女に求婚されるなど普通は思わないわ〜あそこまで執着されるなんてね」
「それは分かるわぁ。それで付き合ってみれば年下だけど時折見せる雰囲気がもうなんかこう…くるのよ、私の色々な所に。」
「分かるぅ〜」
賛同するように頷く2人はそのままパートナー達を置いて恋話に酒を交えながら話を進めていくので俺たち2人は別の食事があるテーブルに移動する。
「さっきは俺ら空気だったっすね。レモン絞りますか?」
「だな。後、レモンはいらない。」
「あ!いた!探したぞ!マコト!あ、どうもアクセルさん!」
唐揚げ擬きにレモンを絞るかどうかで言い合っているとそこに赤ら顔でイワンと付き添うようにアルルが訪れた。
「ありがとう!マコト!お前の友達になったおかげで借金解消の道が見えた!アルフレッドの件はもう完璧に水に流そう!晴れて僕らは親友だ!」
「………まだ根には持っていたんだな。」
お金を払って、謝って、色々つるんできたけどやっぱり怨みっていうものはそう簡単には消えないもんだなと僕は思いました、まる。
「私からも礼を言わせて頂きます。どうもありがとう。イワン様が暫く嘔吐が止まらなかった件は本当にどう殺してやろうか考えてましたがそれはもう忘れましょう」
顔は笑っているが目が笑っていない。
声は嬉しそうだが表現が殺しにきてる。
アルルさん怖い。
「君、意外と人に恨まれているな。」
「全員に好かれる訳がないですから仕方ないですね。」
「妾の持論的に呪うのも辿れば恨みからだからな。」
ちょっとげんなりしたが気を取り直し、夏休みに何をするかの雑談を交えて談笑しているとそこへノコノコとルナールさんとリリムさんがやって来た。
「物騒な話ですね。」
「妾的には恨みがでかいほど爆発した際、巻き込むものは増えるか対象者だけを狙うかになる。そなたらも怨みを果たしたかったら呪いをかけてやるぞ?」
「「結構だ。」」
「連れぬな、2人とも。これだから英雄は………少しはリリムのように世界を呪うほど大きい怨みがないのか。」
「周りが精霊族だらけなのにそんなことを言わないでもらえる?否定はしないけど」
ルナールの言葉を咎めるようなリリムさんの口調ではあるが冷ややかな感情が言葉尻から感じられる為に冗談の類ではないというのは分かる。
「けど怨むよりも慈しみ方がいいですよね。暗い感情よりも明るい感情を持ってた方が生きていくのは楽しいですよ?」
復讐をして身を滅ぼすよりも楽しく笑って幸せを掴む方が俺は何倍もいいと思っている。
まぁ恨む気持ちも分からなくはないので復讐自体は止めはしないが。
「貴方は甘い………マコトもなかなか損な生き方をしてる。」
「結局は後悔がなければいいと思います。最後死ぬときに笑って死ねればいいと俺は思いますが?」
「前者は賛成、後者は………できたらいいわ。」
リリムさんの厳しい言葉に中身が薄っぺらい綺麗事を言ってみるがリリムさんは悲しそうに呟くと新しいワインを受け取り、俺に差し出す。
「………後、これはお礼」
「お礼?」
「貴方が私をかばって怪我をした時、魔族なのに私を守ってくれたお礼を言ってなかったから………ありがとう」
雪のように白い頬を桜色に染めてお礼を言う彼女は美しく、見とれているうちに彼女はどこかへ行ってしまった。
「大丈夫かな………リリムさん」
「酒が入ってるから、感情的になっておるだけだろう。しかし、彼女の怨みは根強いな!父を殺した者達が崇められていては憤怒に狩られる気持ちもわからなくはない。」
「ルナールさんも誰かを恨んでいた時があったんですか?」
「妾も数百年前まで恨んでおったがもうどうでもよくなったからな!お!あれは何であろう!妾に食べさせるのだぁぁ!」
新しく運ばれて来た料理目掛けて鍛え上げた脚力を駆使するルナールさんに苦笑いしていると肩を叩かれた。
その相手にアクセルさんたちも気を使ってくれたようで俺と彼女ーーちょっぴり赤い霞だけが残された。
「先輩?よかったら外に出ないか?少し酔っ払ってしまってな。」
「アレじゃないよな?野外ライブ(意味深)的な?」
先程のクレアさんの件もを踏まえてある意味逆レされた前科もあるので確かめたところ、彼女の顔が一気に真っ赤になる。
「な、何を言っているんだ!流石にそれは恥ずかしすぎる!で、でも先輩がいいなら私も…」
「すまん、忘れてくれ。俺も酒が回ってるみたいだ。」
*
「いい星空だ。綺麗だと思わないか?」
「君の方が綺麗だよ、霞」
「やめてくれ、先輩。それは臭すぎる」
「真顔はなかなか傷つくな………冗談だったのに」
どうやら杞憂だったようなので彼女を連れて外に出る。
夜風が肌を冷たく撫で火照った体を適温まで戻していく。
「先輩、Shall we dance?」
「………Sure, I'd love to」
虫も殺さないような笑顔で誘われたダンスの誘いに彼女が生きている間に言うことはなかった返しで彼女の手をとる。
満点の星空の下で伴奏もない2人だけのはずなのに示し合わせたように2人はステップを楽しそうに踏んでいく。
「驚いた、ダンス上手だな、先輩」
「こっちに来てから踊る機会があったから一生懸命に練習したんだ。悪くないだろう?」
その楽しそうなダンスに蛍にも似た光を放ちながら精霊達が彼女たちを心を掴んで離さない幻想的な光景を創り出していく。
「なぁ先輩、私はこれから貴方のパートナーになるがそれはこの国の政治にも巻き込まれる事になる。他国の姫と同列ではないが、それでもロゼ先輩くらいの重要性をこの身は抱えている。」
ほろ酔いに頬を赤くしたまま、霞は俺へと一歩、距離を詰める。
「先輩はこんな私を守ってくれるだろうか?精霊との親和性が高いくらいしか取り柄がない私が。」
しがらみを抱え、俺の元に来た彼女はそう言って俺に寂しそうに微笑んだ。
ロゼさんには守ると誓った………けどロゼさんは俺の力になりたいからと言って無茶をする。
クレアさんには守ると誓った………けど俺はあの人に守られてもいる。
ならば霞は?
決まってる。
「守るさ。まだ俺は半人前だから半分くらいしか果たしてやれない。だからいつかこの言葉を本当に出来るように努力を続ける。」
守ろうと誓った人達が悲しまないように笑える、そんな男を目指していきたい。
霞はその言葉を聞いて安心したように踊りを止めて俺の胸に額を預けて来た。
「なら私は先輩が疲れたら抱きしめよう。先輩が泣いていたら頭を撫でてあげよう。徹底的に甘やかしてやろう。そんな生き方をしていて疲弊しないように磨耗しないように私は先輩の側に居続けよう。」
「今でも充分甘やかされてる気がするんだよな〜」
「事件のたびにこうやって正義の味方みたいな真似をしている奴ほどそんな勘違いをしているんだ。いいか、先輩?貴方は正義の味方ではない。だから無理はするな、疲れたらいくらでも休んでいいんだ。」
彼女の体温が俺の中に溶け込むようで何処か緊張し、強張っていた俺の体が安心するように力が抜けた。
「双銃の希望と名をつけた意味をよく考えてこの世界の身の振り方を考えてほしい。」
「わかったよ、霞………と言いたいがその2つ名はどうにかならなかったのか?」
「良くないか?現れるだけで希望を与える先輩には相応しいと思うが?」
まあいいかと俺は彼女の背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめるとクレアさんと同じくらい大きさの胸が潰れ、思わずキスをしようと顔を寄せると少し彼女が離れた。
「先輩?いくら私でも羞恥心と言うものがあってな?さ、流石にこれ以上はその………厳しっあっ!?」
恥ずかしそうに悶える霞だったが木の削られた部分に躓き、体を戻そうとバランスを取った右手がマコトの脳天に突き刺さる。
「すまない!先輩!大ーーわあっ!」
痛みに目から火花を散らしたマコトへ近づこうとした霞は結局こけて頭突きがマコトの顔に中々の一撃を撃ち込む。
「うぉぁぁ鼻がぁぁ!」
「何でだ!何でこんな時に限って!しかも先輩、鼻血が出てるじゃないか!今、治す!」
「待て霞!もう近づくな!慌てなくてもいい!」
不味いと頭の中で警報が大合唱を起こしている。
この流れは恐ろしいほど前世で体に身についたもので割と本気で脊髄反射で声をかけたが彼女は魔力を宿しながらこちらに向かってくる。
ちなみにWSがあるのは大樹ほどではないがそれなりに高い木の上であり、およそ3階建の建物だと考えてくれていい。
先輩を治そうと慌てて近づく霞は木に生えていた小さな枝に躓き、勢いそのままマコトを突き飛ばして、体勢を崩したマコトは足を滑らせ霞を巻き込み
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「真先輩ぃぃ!!」
2人仲良く最後には木の上から共に落下していく。
*
「相変わらずだな………霞の気を抜くとドジを踏むのも」
空中で霞を抱き寄せながら怪鳥の腕輪の力でふわりと優しく地面に降り立つ。
「あぁぁぁ!先輩ごめんなさい!」
「大丈夫だって、怪我はなさそうだな。」
割と泣きそうな顔で俺に謝罪を続ける霞を落ち着かせて帰るために彼女の手を引こうとする。
「あれか?まさか俺を巻き添えに………」
「そんなわけ無いだろ!あ、でも障害を負っても私は先輩が死ぬまで管理………もとい看病するぞ!だから心配はいらない!」
「別の意味で心配が生まれたよ」
相変わらず若干愛が重い気がするがそこは気にしては行けない。
「私は先輩を絶対に見捨てないから心配するな、皆を裏切ろうと犯罪を犯そうとしても、私は先輩の味方だ。どんなに危機的状況でも先輩を見捨てて自分だけが生き残ろうとはしないからな!」
スイッチが入ったのか、少し濁ったお目目の彼女の態度の変わりように苦笑しながら
「今度は俺を置いて死ぬなよ?霞」
「勿論だ、真先輩」
互いに示し合わせたように悲恋によって違えた者達の名を呼ぶとあまりの合わなさに笑ってしまった。
何故なら作品の2人は生と死を境界線を超えられずに別れてしまったが俺達はその境界を越えてまた出会えだのだから。
そして充分に笑い合うと霞は俺の両手に自分の両手を重ねた。
「先輩、ずっと言いたかった事があります」
「ああ………どんな?」
例えどれだけ経とうと薄れる事のない万感の愛が
1つとして言葉に出来なかった感情の高ぶりが
「先輩ーー貴方がずっと好きでした」
世界を超えてようやく告げられた。
その愛する者への言葉を彼はもう二度離さないように彼女の両手を強く握りしめて
「霞ーー俺はお前が好きだよ」
彼女が生きている間に告げておくべきだった言葉を数年の時を経て言葉にする。
見上げれば綺麗な星空が広がる中、互いの手を取って走り出す。
全てを奪われたって、倒されたって、立ち上がればいいのだ。何度でも。
もう放したりはしない。
この繋いだ手を、大切な繋がりを奪わせたりはしない。
全てはここから始める。俺たちの手で幸せな世界を造ろう。
終わらない星空の下、2人の行く先を精霊達は笑って見守っていた。
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