表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅の魔女から藍緑の魔術師へ  作者: さうざん
PR
2/5

ここ数千年の話

魔術を使う人々「使う者」たちの存在が、魔術を使わない多くの人々「使わざる者」に公にされた現代世界。



もう少し詳しく説明しよう。


魔術を使う人々、つまり「魔術師」たち。

彼らは「使う者」と呼ばれ、長い間歴史の陰に隠れていた。


彼らの力はいにしえから強かったが、その力は忌み嫌われた。隠れて住まざるを得なかった者、命や財産や名誉を奪われた者も大勢いた。恨まれ、蔑まれる中で、魔術師たちはひっそりと暮らすようになった。ある者は深い森や山、離島に隠れ住んだ。ある者は「使わざる者」のふりをし、彼らの社会に溶け込んだ。


しかし、この魔術が公になるときが来た。「使わざる者」たちの努力の末、彼らの知識や技術が魔力と同等以上のものになったこともあり、魔術がかつてのように疎まれなくなったことも背景にはある。しかし、公になった一番の原因は、いにしえより続く「西の魔術」と「東の魔術」の間で小競り合いが起き、その際に暴発した魔力を隠しきる前に、「使わざる者」の技術によって記録され、解析されてしまったことにある。「使う者」たちは議論の末に自ら正体を明かし、「使わざる者」と共に未来を歩んでいくことを約束した。


「使う者」の社会も、「使わざる者」の社会も、大きく揺れた。


しかし、「使わざる者」たちは魔術を比較的好意的に受け止めてくれた。魔術師連合(UW)と国際連合(UN)の度重なる話し合いの末、両者が共存していくための制度やルールが作られ、人類社会は新しい時代に入った。




ところが「使う者」の中には,「使わざる者」に忌み嫌われた過去を恨み、「使う者」たちの圧倒的な優位と「使わざる者」の絶対的な服従を望むようになった。長い歴史の間に築かれた恨みはどこまでも深く、「使わざる者」を卑下する価値観は深く「使う者」の間に根付いていたのだ。彼らは圧倒的なカリスマを持つJ・ヒヤシンスの元に集まって「アイオーンの騎士団」を名乗り、圧倒的な魔力で「使わざる者」の迫害を始めるようになった。


自然の災害のように、突然降りかかってくる「死」に、「使わざる者」はなすすべもなかった。


一方、努力の末に知識と技術を発展させた「使わざる者」との共存を望む魔術師たちもいた。「使う者」とはいえ、生きていくために「使わざる者」の社会に溶け込み、双方で地位を得ている魔術師もまた、多くいたのだ。彼らは隣人である「使わざる者」を尊敬し、慕い、守ろうとした。彼らはやがて「桜守」を名乗り、自らの魔力で「使わざる者」を迫害から守ろうとした。


こうして「使う者」たちの世界は真っ二つに分かれ、「使わざる者」を巻き込んだ激しい魔法戦争が繰り広げられたのだ。








ところで、多くの魔術師たちは「クリムゾンの魔女」と「アクアマリンの魔術師」が残した例の予言を信じていた。


魔術にも様々な系統があり、「東の魔術」と「西の魔術」があるとされている。


ちなみに、「西の魔術」は魔力をもって直接世界に介入する術である。杖を使い、正しい呪文と理論を学べば、誰でも使えるのが「西の魔術」である。いわゆる魔法使いのイメージはこちらが近い。一方「東の魔術」は、魔力を使って世界を読み解き、世界と対話し、流れを整えていく魔術と言われている。杖や呪文がなくても、スケールの大きい術が使えるものの、個々の魔力やセンスに頼るところも多く、「西の魔術」のような即効性というよりもいつの間にか効く術が多い。そのため、世界中の魔力のある10歳から17歳の子供たちが、8月に集まって学ぶ「世界魔術学校」では、基本的に西の魔術を教えられる。東の魔術は、東洋の魔術師たちが家庭で伝えていくか、興味のある魔術師が自ら修業しに行くかのどちらかで伝わってきている。もっとも世界魔術学校でも、東の魔術の基礎基本は教えられ、思想や理論も解説され、選択科目として高度な東の魔術も学べるが、それでも多くの魔術師は西の魔術を基本に使うことが多い。


いにしえから、この2つの魔術は対立し続けた。無論、平和な交流はあったが、力の誇示のしあいが、魔法戦争の引き金になったこともある。


そんなある日、双方からかつてないほど強大な力と才能を持った魔術師が生まれた。

それが、「東の島のクリムゾンの魔女」と、「西の島のアクアマリンの魔術師」である。


どちらも、本名は知られていない。いつどこで生まれたのかも定かではない。しかし、「島」という言葉がついていることから、「クリムゾンの魔女」は現在の日本で生まれた女性、「アクアマリンの魔術師」は現在のイギリスで生まれた男性なのではと言われている。


彼らはそれぞれの魔術の最高峰の力を持ちながら、互いに学びあい、双方の魔術に精通するようになった。彼らの交流は「使う者」の世界に大きな変革をもたらし、偉大な魔術師たちを人々は慕った。彼らが作り上げたものは今でも残っており、魔術師連合(UW)や世界魔術学校の創立にも関わっている。様々な伝説が、おとぎ話として語り継がれてきた。


しかし、「東の島のクリムゾンの魔女」と、「西の島のアクアマリンの魔術師」は、ある日突然姿を消してしまった。不安に駆られた人々は互いに疑った。こうして悲しい争いが何年も続き、彼らの力を受け継いだはずの子供たちも行方知れずとなってしまった。人々が気づいた時には、人々が慕い頼っていた者たちは、みないなくなってしまっていたのだ。






アイオーンの騎士団のJ・ヒヤシンスは、その「西の島のアクアマリンの魔術師」の子孫を名乗った。J・ヒヤシンスの圧倒的な力と、カリスマ性、彼が見せた数々の先祖伝来の品々が、その正統性を物語っていた。彼はますます人々の支持を集めた。そして予言を「一方を倒して、『持つ者の』永遠の安らかな眠りを約束する」と解釈し、暗黒を払うべく、「東の島のクリムゾンの魔女」の子孫を倒すと宣言した。


その当時、「東の島のクリムゾンの魔女」の子孫にあたる一族がどの魔術師かは、ほとんど知られていなかった。J・ヒヤシンスは、ヒヤシンス家に伝わる資料をはじめとする様々な資料を調査した結果、日本の古い魔術師の一族である、紅緑こうろく家こそが、失われた「東の島のクリムゾンの魔女」の子孫であるとした。紅緑家の当主だった紅緑正恒マサツネは、それを否定できなかった。彼は「東の島のクリムゾンの魔女」の子孫であることを認め、証拠として一族に伝わる品々や古文書をいくつか公開せざるを得なかった。


紅緑家は長い間、「使わざる者」の社会に溶け込みながら暮らしてきた一族であり、「使わざる者」を守るための「桜守」の創設メンバーとして活躍していた。優秀な魔術師である紅緑正恒と、妻の嘉津子かつこはアイオーンの騎士団の敵としても十分であった。


何よりも、正恒と嘉津子の間には、ちょうど5歳になる娘の千花ちかがいた。彼女は「東の島のクリムゾンの魔女」の後継者になりかねない。また、生まれたばかりの1歳の弟、一樹いつきもいた。J・ヒヤシンスはこの幼い2人を標的にした。一方、桜守たちもこの幼い姉弟を全力で守った。


こうして起きた戦いは、紅緑家の家がある富士山麓で行われたため、「富士山麓の攻防戦」と呼ばれている。紅緑家の4人は富士山の樹海に逃げ込んだ。呪いが飛び交い、双方に多くの犠牲を払いながら、J・ヒヤシンス自ら千花と一樹の前に現れ、死の呪いをかけようとしたとき、『何か』が起こった。


何が起きたのかは、今でもよくわかっていない。しかし確かなことは、何か見えざる力に守られた、魔力の高い子供たち2人が、死の呪いを跳ね返したばかりではなく、大きな魔力を地球全体に発した。J・ヒヤシンスは行方不明となり、多くのアイオーンの騎士が死に、アイオーンの騎士団は壊滅状態に陥った。形成は桜守が逆転し、世界は再び、魔術師連合(UW)と国際連合(UN)の元、共存の道を進んでいくこととなった。


これが15年前のことである。







以来、紅緑千花も平凡な魔術師の娘として、日本人の女の子として、平凡に育ってきた。


しかし、ここ2~3年、かつてのアイオーンの騎士団を思い起こすような不可解な事件が増えてきていた。UWは「魔術との関係は見られない」と表向きはごまかしつつも、UNや各国政府と協力し、ひそかに探り、対策を立ててきた。休止していた桜守のメンバーに再び招集がかかり、学生ながら千花や一樹も関わることになった頃、人々はアイオーンの騎士団の復活を信じざるを得なくなった。j・ヒヤシンスを名乗る声明が発表され、壊滅状態だったアイオーンの騎士団が密かに再結成されたことがわかると、人々の間に動揺が走った。


15年前ほどではないが、頻繁に魔術師が絡んだテロや犯罪が起きるようになり、そのたびに桜守の魔術師が対応しに行き、被害を最小限に抑えること。それをしながら、日本の大学生として勉強し、「使わざる者」としても立派な大人になること。







それが今の私の目標だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ