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小人閑居

礼拝堂の中はステンドグラスが張られており太陽の光を綺麗に映し出している。

静かで、神聖なるこの場において一つだけ不釣り合いな物があった。

そちらに目を向けるのが嫌になりそうだ。


「だから、さっきから言ってんだろ!」


鈍い音が何度も何度も礼拝堂の中に響く。

おそらくこの男は神など鼻から信用していないのだろう。

それなのに何故神父になったのか……まぁ、理由は簡単だろう。

神父になれば、地位も相当上がるし、金銭面でも不便すること無くなるぐらいには貰える。

そういう汚れた考えで神父という、聖職についたのだろう。


「ここは、ボランティアじゃねぇんだよ!!あの男を居候させんなら、金を払わせろ!」


「ひぎっ!!……ぁゔっ!ごめっ!ごめんなさいっ!!」


助けてやりたいのは山々なのだが、私が今彼女を助けたとしても一時的な物で、すぐに今よりも酷い仕打ちを受けるだろう。

……そう考えてしまうのは、私が元天使だから?

小さく首を捻り考えるが、元々人になりたくなかった私からしてみればさほど、問題の無いことと気付き、無駄な労力を避ける事にした。

鈍い音は繰り返し響き続け、礼拝堂の中は謝罪の悲鳴と、憤怒の声、そして血の匂いに包まれた。

しばらくすると、神父のストレスが発散されたのか唾を吐いて礼拝堂から大股に出ていった。

きゅうに静かになった礼拝堂には、彼女の小さな嗚咽が大きく響く。

ゆっくりと、足音をたてないように近づき真っ白いガーゼで出来たハンカチを彼女に渡す。

私が落とした影に気づいたのか、目を腕で擦ると顔をあげて、ニコリと微笑んだ。


「あは……恥ずかしい所、見られちゃったね」


掠れた声でシンティアは呟いた。

エメラルドグリーンの瞳は朱色に染まり、ピンク色の柔らかそうな毛も、赤黒くなっている。

私が差し出したハンカチを受け取ると、目を軽くそれで拭いた。


「ごめんなさい、これ汚しちゃったみたい」


血が白いハンカチに小さく付いていた。

洗って返すわ、と言った言葉に返事をせず、小さく軽い体を持ち上げた。

驚いたのか、痛かったのか小さくうめき声をあげる。


「あ……あの、大丈夫、歩けるから」


「……彼はいつもこんな事を?」


「え?」


シンティアの言葉を遮り、一方的に質問を投げかける。

胸の底からフツフツと湧き出るこの感情を理解出来ないまま、急ぎ足気味に歩みを進める。





消毒液の臭いに、ガーゼの独特な臭いが鼻をかすめる。

あまり好ましくない匂いにクシャミが出そうになるのを堪えつつ、傷口にガーゼを押し当てる。

シンティアの整った顔は先ほどの行為で、あまりにも痛々しい姿になっている。


「ありがとう。わざわざごめんね」


今にも泣き出しそうな表情なのに、小さな子をあやすような口調で謝る。

まるで私が誰かと喧嘩して拗ねているようだ。

治療を終え、シンティアの悲しそうな微笑みを眺める。思わず体が動き気づくと、私の腕の中に小さな体がはまっていた。

シンティアの体に自身の腕が回っているのを見ると、無意識に抱きついていたようだ。


「え、なに?どうしたの?」


私は返事をすること無く体の傷に触れないよう、やさしく抱いていた。



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