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閑事

雨上がりの空はいつになく綺麗に思える。

暑い陽射しを雨上がりの涼しい風がほんのり体感温度を下げてくれる。

教会の日陰にある、大きめの岩の上に座りながら空を眺めていた。

かつて自身が居た下界(した)からは絶対に見ることの出来ない美しい場所。

それを見ようとして、目を陽射しから覆いながら空を見上げる。

それでも眩しいもので、目を細めていてもなかなか辛いものだ。


「ねぇ!」


後ろから投げかけられた声に気付き、上半身だけを捻って振り返る。

そこには、暑いのに長袖でグレーの修道服を着た、まだ幼い少女がにこやかにこちらを見つめていた。

体制を整え、彼女に体を向けるようにすると、私もニコリと頬を緩ませた。


「どうしたんですか?」


彼女、シンティアが私の隣にヒョイと座ると、エメラルドグリーンの瞳を細め、意地悪そうに笑った。


「だって、暇そうなんだもん」


「暇じゃ無いですよ。私だって」


「ねぇ」


言葉を遮り、不服そうな声をあげる。


「その敬語なんとかならない?私だって貴方が言うからやめたのに……」


そうだ。シスターである彼女に敬語を止めさせたのは他でもない、私自身だ。

彼女のまっすぐな瞳から避けるように、私は一度下を見てから、笑顔で顔を上げた。


「私は、こちらの方が慣れているので」


そう言うと、シンティアは少し唸った後、じゃあしょうがない、と呟いた。

少しの間風が通り抜ける音を聞いていると、教会の方から神父が笑顔のままこちらに近づいてくる。


「おやおや、シスターここにいたのですか」


「……」


垂れた目は笑顔とよく似合っていて、誰が見ても優しそうな人に見える。

彼女と私の近くまで来ると、不思議そうに小首を傾げた。


「おや?そちらの方は」


「わ……私の知り合いです」


「そうでしたか。はじめまして、私はレナードと申します」


ペコリと、笑顔のまま頭を下げる。

つられて下げてしまうほど深々とお辞儀をしている。

コチラも自己紹介をしようと口を開きかけた時、レナードの手がシンティアの左腕を掴んだ。


「シスター、仕事をサボってはいけませんよ?」


「あ、ごめんなさい……」


顔つきは柔らかいものの、口調はどこか尖っていた。

申し訳ありませんが、失礼します、とレナードが言うと、シンティアの腕を掴んだまま引きずるようにここを離れる。

私は教会に入っていった二人に疑問を覚えた。

なぜ彼女はそんなにも怯えていたのか。

なぜ彼は私から彼女を離したがっているのか。

その疑問を解消せねば、まともに思考がまとまりそうにもない。

岩から飛び降りると、二人が入っていった教会に足を踏み入れた。



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