表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放皇女の異世界戦記  作者: 浅井川亘


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/288

第六十七話:星海のランデヴーと、迫る血牙の影

希少鉱石『アエテルニウム』を満載した三隻の大型輸送船と、それを護衛する傭兵団の母艦『エインヘリアル』は、無数の小惑星が浮かぶ危険地帯——暗礁宙域ルートへと足を踏み入れていた。

星の光すらも遮られる薄暗いデブリの海を、船団は一定の速度で進んでいく。

長丁場となる今回の護衛任務にあたり、ブリュンヒルデ団長は一つの戦術を採用していた。それは『二機一組のローテーション制』である。

『……というわけで、前衛のローゼリアとリアンヌ。お前たちのシフトはあと一時間だ。時間になったら直ちに帰艦しろ。お前たちが着艦すると同時に、ランドグリーズとロスヴァイセのペアを出撃させて交代する』

通信モニター越しに、ブリュンヒルデが指示を飛ばす。

「うむ、了解じゃ。今のところ、レーダーに怪しい反応はないぞ」

漆黒の特化型殲滅機体『タナトス』のコクピットで、ローゼリアは余裕の笑みを浮かべて返答した。

その隣を、純白の装甲に身を包んだリアンヌの愛機『ブラン』が、完璧な編隊を組んで並走している。

『油断するな。敵の縄張りはここからが本番だ。……オルトリンデ、そっちの状況はどうだ?』

『こちらオルトリンデ。格納庫の「ジークルーネ」内でスタンバイしています。火器管制システムは常にオンライン。何かあれば、カタパルトから射出されずとも、母艦のハッチから直接「未来予測狙撃」で支援可能です』

三女の冷静な声が響く。彼女は緊急時のバックアップとして、いつでも引き金を引ける状態で待機していた。

『よし。シフト交代まで、気を抜かずに頼むぞ』

通信が切れ、ローカル回線だけになる。

宇宙空間には、並んで飛ぶ漆黒の悪魔と、白銀の騎士の二機だけになった。

全機で出撃し、無双するのも悪くないが、こうして久しぶりにリアンヌと二人きりで(機体越しではあるが)星の海を飛ぶのは、ローゼリアにとって至福の時間であった。

(うおおおっ……! 右を見れば、俺が手塩にかけて改造したリアンヌ様の純白の専用機! そして二人の通信回線には、リアンヌ様の美しい吐息! なんだこれ、実質的に宇宙デートじゃねぇか!! 輸送任務バンザイ!!)

内心で限界オタクとしての歓喜の舞を踊りつつ、ローゼリアはあくまで気高い主君のトーンを作って話しかけた。

「……リアンヌ。新しい機体『ブラン』の調子はどうじゃ? 空間のデブリが多いが、操縦に支障はないか?」

『はい、姫君。バハムート殿とフィーネ殿の調整のおかげで、まるで自分の手足のように動きます。この分厚い古代合金の盾も、驚くほど軽く感じます』

ブランが機体を軽くロールさせ、右手に持った白銀の長槍ハルバードを鮮やかに構えてみせる。その動きは、無重力空間であることを忘れさせるほど洗練され、美しかった。

『それに……こうして姫君と二人きりで星海を舞うのは、本当に久しぶりですね。私は今、騎士としてこの上ない喜びに満たされております』

「っ……! う、うむ! 妾もじゃ! 妾も大変満たされておるぞ!」

(くぅぅぅっ! 直球でそんなこと言われたら、俺の顔面のニヤケが止まらなくなるだろ! ヘルメットのバイザーを限界まで暗くしておいてよかったぜ!)

「……姫君? 少し、お声が上擦っているようですが。どこかお加減でも……?」

「な、なんでもない! ちょっと魔力炉の出力が上がりすぎただけじゃ!」

咳払いをし、ローゼリアは無理やり話題を変えようと、眼下に広がる小惑星帯へ視線を向けた。

「そ、そういえば、あの依頼人のベノムという男。やはりどうにも胡散臭いな。こんな危険な航路を、わざわざ指定してくるなど……」

『同感です。あの男の目には、強欲な商人のそれ以上の、何か底知れぬ悪意が潜んでいるように見えました。……姫君、いかなる罠が張られていようとも、私が必ず……』

リアンヌが言葉を続けようとした、その瞬間だった。

——ピーーーーーッ!!

タナトスとブランのコクピットに、強烈な警告音アラートが鳴り響いた。

同時に、母艦エインヘリアルのブリッジからも、切羽詰まった通信が飛び込んでくる。

『ローゼリア、リアンヌ! レーダーに多数の熱源反応! 前方の巨大デブリの陰から、所属不明の機体が急速接近してくる!』

「数は!?」

『……およそ三百! 識別信号、宇宙海賊「ブラッド・ファング」だ!』

その報告を聞き、ローゼリアは赤い瞳を獰猛に細めた。

「ふん。やはり出くわしたか。ハイエナどもめ、希少鉱石の匂いを嗅ぎつけてきおったな」

『姫君、敵機が散開しました。どうやら、我々護衛機を引き剥がし、輸送船団に直接取り付くつもりのようです』

リアンヌの冷静な分析通り、赤と黒の毒々しいカラーリングに塗装された海賊仕様のマギアナイトたちが、小惑星の陰から次々と姿を現し、輸送船団へ向けて一斉に突撃を開始していた。

彼らの動きは統率が取れており、ただの野盗の群れとは明らかに違う、実戦慣れした練度を感じさせる。

『ローゼリア! いいか、絶対に「タナトス」の広域殲滅兵装は使うなよ! 大鎌で空間ごと斬り裂くのも禁止だ! 輸送船を巻き込んだら違約金で団が破産するからな!』

「分かっておるとも、団長! 妾は上品な淑女じゃからな。今日は手加減して、丁寧に一機ずつ『解体』してやるわ!」

ローゼリアは、タナトスの右腕に握られた漆黒の大鎌をクルリと回し、構えた。

空間切断能力をオフにし、純粋な物理と魔力の刃として使用する。それだけでも、量産機を紙切れのように切り裂くには十分すぎる威力だった。

『我が姫君の視界を遮る羽虫ども……。一匹たりとも、生かしては帰しません』

リアンヌもまた、ブランの純白の盾を構え、長槍の穂先に白銀の魔力を集中させる。

「さあ、狩りの時間じゃリアンヌ! 宇宙のクズどもに、戦乙女の恐ろしさを骨の髄まで刻み込んでやれ!」

『御意に!!』

漆黒の死神と白銀の騎士が、スラスターから莫大な魔力の光を噴出させ、三百の海賊団へと一直線に突貫した。

輸送船団を守るための、絶対に負けられない防衛戦の火蓋が、今ここに切って落とされたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ