↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放皇女の異世界戦記  作者: 浅川


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
321/340

第六幕 第十三話:白銀の終劇と、帰還する死神たち

『お、おのれぇぇぇッ! 私は、アルカードの……』

通信回線に響くガレオンの絶叫を断ち切るように、高周波の魔力を帯びた重斬刀が、スカーレットブルームのコックピットブロックを深々と貫いた。

圧倒的な装甲を誇っていたはずの深紅の特注機は、心臓部である魔力炉を物理的に破壊され、内側から崩壊の兆しを見せ始める。

「古代の遺産だろうと何だろうと、使っているのがネズミでは宝の持ち腐れじゃな」

ローゼリアのティルフィングは、機体を反転させ、背面スラスターを吹かして一瞬で危険域から離脱した。

直後。スカーレットブルームは音のない宇宙空間で、網膜を灼くような強烈な閃光と共に爆散した。

その凄まじい爆発の余波を浴びて、背後に控えていたアルカードの指揮母艦も装甲がひしゃげ、内部からの誘爆を引き起こして轟沈していく。

指揮官と母艦を同時に失ったアルカードの魔獣部隊、そして旧帝国派閥の反乱軍の間に、致命的な恐慌パニックが広がった。

『ガ、ガレオン様の専用機が……あの白い量産機に一刀両断されただと!?』

『指揮母艦も沈んだ! 魔獣のコントロールが効かないぞ!』

統制を失い、同士討ちや暴走を始める魔獣たち。反乱軍の陣形は完全に瓦解した。

「……さて、仕上げといくか。リアンヌ、掃討戦の指示を」

『はっ。各機、これより残敵の掃討および暴走する魔獣の殲滅に移行します。……一匹残らず、灰にしてください』

リアンヌの冷徹な号令のもと、白銀の悪魔たちの蹂躙が再開された。

アルティナとシエラの強烈な電子戦が、反乱軍の通信網と火器管制を完全に沈黙させる。動く標的と化した敵機を、ローゼリアとリアンヌの白と白のコンビネーションが次々と切り捨て、撃ち抜いていく。

『メイドの務め、最後まで完璧にこなします』

『さあ、お掃除の総仕上げですわよ』

ロスヴァイセとエリーゼは、暴走する魔獣たちを一箇所に誘導し、背部の魔導砲で無慈悲な弾幕を浴びせかけた。巨大な獣たちが、悲鳴を上げる間もなく光の奔流に飲み込まれ、宇宙の塵へと変わっていく。

一方、正面で防衛網を押し上げていたレオン准将率いる帝国・連邦主力艦隊も、この機を逃さなかった。

『敵の指揮系統は完全に沈黙した! 第零独立テスト部隊が血路を開いてくれたぞ! 全艦、一斉突撃! 反乱軍に降伏を勧告し、抵抗する者は撃ち落とせ!』

レオン准将の号令により、主力艦隊の圧倒的な火力が反乱軍の残存部隊を飲み込んでいく。

もはや勝敗は誰の目にも明らかだった。開戦からわずか三日目にして、旧帝国派閥の反乱軍は完全に白旗を揚げ、アルカードの魔獣部隊は宇宙空間から一匹残らず駆逐されたのであった。

戦闘宙域が完全に制圧され、静寂を取り戻した星の海。

その中を、六機の白銀のティルフィングが、魔改造戦艦『ヘイズ』の格納庫へとゆっくりと帰還していく。

機体が所定のデッキに固定され、コックピットのハッチが開くと、格納庫で待機していた帝国軍の兵士や整備員たちから、割れんばかりの歓声と拍手が沸き起こった。

「すげえ……! マジで敵の指揮母艦とアルカードの幹部を単独で落としてきやがった!」

「俺たちの量産機で、あそこまで戦えるなんて……! 第零独立テスト部隊、万歳!」

兵士たちの熱狂的な声援に、パイロットスーツ姿のローゼリアはヘルメットを小脇に抱え、満足げに手を振って応えた。

ブリッジへ向かうと、ロードリック艦長が深い敬礼で彼女たちを出迎えた。

「見事な戦いぶりだった、お嬢さん方。貴様らの獅子奮迅の活躍により、味方の被害は想定の十分の一以下に抑えられた。艦長として、心から礼を言う」

「うむ。良い肩慣らしになったぞ、艦長。……で、約束通り、この機体は返却する」

ローゼリアは、データ端末をロードリックに手渡した。

そこには、今回の実戦で得られたティルフィングの極限状態での機動データや、フィーネが施したピーキーな魔改造のログがすべて記録されている。

「帝国の技術部に渡してやってくれ。これを元にOSの最適化を行えば、帝国軍の一般パイロットでも、あの白銀の機体を名馬として乗りこなせるようになるじゃろうて」

「……感謝する。このデータは、今後の帝国軍にとって何よりも代えがたい財産となるだろう」

ロードリックは端末を大切に受け取り、深く頷いた。

ここに、帝国の歴史に深く刻まれることになる『所属不明の白銀のテスト部隊』の伝説は、ひっそりと幕を下ろしたのである。

数時間後。

ヘイズから小型シャトルに乗り込んだローゼリアたち六人は、後方宙域で待機していた母艦エインヘリアルへと帰還を果たした。

『エインヘリアル、シャトル収容完了。……お疲れ様でした、皆様』

レガリアの温かいアナウンスが響く中、ブリッジのハッチが開く。

「おおっ! 帰ったぞぉぉっ!」

ローゼリアが両手を上げてブリッジに飛び込むと、そこには腕を組んで微笑むブリュンヒルデや、退屈そうに欠伸をしていたランドグリーズたちの姿があった。

「おかえりなさい、ローゼリア。そして前衛部隊の皆。見事な作戦完遂だったわ」

ブリュンヒルデが労いの言葉をかける。

「あーあ、アタシも白い機体に乗って暴れたかったよ。留守番は暇で死にそうだったんだからな」

ランドグリーズが豪快に笑いながらローゼリアの肩を叩く。

そこに、整備班長のフィーネがスパナを片手に歩み寄ってきた。

「どうだった大将? アタシが手を入れたティルフィングの乗り心地は。あのアルカードの特注機も、あっさりスクラップにできたみたいじゃねえか」

「うむ! ピーキーでなかなか面白い機体じゃったぞ。だが……」

ローゼリアはニヤリと笑い、格納庫の方向へ視線を向けた。

「やはり妾には、あのじゃじゃ馬極まりない『ルシフェル・リベリオン』が一番しっくりくるわい。他人の服(量産機)を借りて戦うのは、少々肩が凝るしの」

「ははっ、違いねえ。アンタの相棒はルシフェルだけだからな。いつでも出撃できるように、ピカピカに磨いてあるぜ」

その時、メインモニターにフェイト女帝からの通信が入った。

『——素晴らしい戦果ね、エインヘリアルの諸君。そしてローゼリア』

玉座に座るフェイトは、心底安堵したような、そして誇らしげな笑みを浮かべていた。

『貴女たちの偽装作戦のおかげで、帝国の威信は完全に守られ、旧帝国派閥の反乱は鎮圧されたわ。これで、しばらくは帝国に逆らおうとする愚か者は現れないでしょう。私の政治的ジレンマを見事に解決してくれたこと、女帝として、そして姉として感謝するわ』

「ふふん。妾の悪知恵に感謝するのじゃな。報酬はたっぷり弾んでもらうぞ、姉上」

ローゼリアが胸を張ると、フェイトは「ええ、もちろんよ」と優雅に頷いた。

『さて……帝国軍の「第零独立テスト部隊」は、これで解散よ。貴女たちは再び、銀河最強の傭兵団としての誇りを取り戻しなさい』

フェイトの言葉に、ブリュンヒルデが恭しく一礼する。

「はっ。我らエインヘリアル、これより通常任務へと復帰いたします」

通信が切れ、ブリッジにいつもの活気が戻ってくる。

「さあ、皆の者! 帝国の窮屈な軍服は脱ぎ捨てて、いつもの黒い軍服に着替えるのじゃ! 妾たちの本来の戦場が待っておるぞ!」

ローゼリアの高らかな宣言と共に、白と金を基調とした優美な巨艦エインヘリアルは、主機に眩い魔力を漲らせた。

偽りの白銀の衣を脱ぎ捨て、本来の真紅と漆黒の死神へと戻った特異点。彼女たちの次なる冒険は、星の海の彼方で静かに幕を開けようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。