第五幕 第二十五話:いざ懐かしの現代社会へ! スイーツと旧友のいるコンビニエンスストア
「ふぅ……なんとか撒き切ったようじゃな。団長からの通信も切れた。……まったく、肝を冷やしたわい」
日本の某所、鬱蒼と木々が茂る山林の奥深く。
光学迷彩によって景色と完全に同化し、透明になっている漆黒と真紅の巨人『ルシフェル・リベリオン』のコックピットの中で、ローゼリアは大きく安堵の息を吐き出した。
コンソールを操作して機体の稼働音を極限まで落とし、完全に沈黙させる。これで、現地のレーダーにも熱源探知にも引っかかることはない。
『——マスター。我々も到着しました』
ローゼリアの機体を囲むように、空中の景色が僅かに歪み、三つの巨大な影が音もなく降り立った。
アルティナの『ハルファス』、シエラの『アリス・レギオン』、そしてリアンヌの『ブラン』である。彼女たちもまた完全ステルス状態を維持しており、鳥のさえずりすら遮らない完璧な隠密行動であった。
「ご苦労じゃった、三人とも。さて……これより機体を降りて、生身での潜入調査(という名の買い出し)に移行する!」
ローゼリアが宣言すると、ルシフェル・リベリオンの胸部ハッチがプシュゥゥと低い音を立てて開いた。
コックピットから飛び降りたローゼリアは、地面に足を着けると同時に、大きく深呼吸をした。
土の匂い、木々の青臭さ、そして微かに混じる現代社会特有の排気ガスの名残。
ルミナスの澄み切ったマナの空気とは違う、懐かしくも少し淀んだ地球の大気であった。
「(……帰ってきた。本当に、帰ってきたんじゃな)」
ローゼリアは、7年ぶりの故郷の空気に、少しだけ感傷的な気分になって目を閉じた。
ドスッ、ドスッ、ドスッ。
感傷に浸る間もなく、背後から三人の戦乙女たちが次々と地上に降り立ってきた。
「我が主! この野蛮な未知の星の大気、御体に毒ではありませんか!? 今すぐ母艦から完全浄化フィルター付きの携帯テントを取り寄せましょうか!?」
リアンヌが、血相を変えてローゼリアの全身をペタペタと触って異常がないか確認してくる。
「大丈夫じゃ、リアンヌ。むしろ妾にとっては実家のような安心感のある空気じゃからな」
ローゼリアは苦笑しながら忠犬を撫でて落ち着かせる。
「マスター。潜入にあたり、現地の衣服への偽装を完了しました」
シエラが、自身のデータ端末を操作する。すると、四人が着ていたエインヘリアルの軍服や、ルミナスの魔法学院のローブが、ホログラムとナノマシンの技術によって一瞬にして現代日本の衣服へと変貌した。
ローゼリアは、オーバーサイズのパーカーにデニムのショートパンツという、いかにも現代の休日の少女といったラフな服装。
アルティナは、体にフィットした黒のタートルネックにタイトスカートという大人びた綺麗めカジュアル。
シエラは、白のブラウスにカーディガンを羽織った清楚な女子大生風。
そしてリアンヌは、ローゼリアの趣味(嫌がらせ)によって、なぜかスポーティな学校指定ジャージのような姿にさせられていた。
「わ、我が主……? なぜ私だけ、このような謎の動きやすい布地の服なのでしょうか? これでは我が主の隣を歩く近衛として威厳が……」
「良いのじゃ! 地球ではそれが『最強の暗殺者』が着る機能的な戦闘服なんじゃよ!」
「なんと! さすがは我が主、現地の文化に精通しておられる! では、このリアンヌ、誇りを持ってこの戦闘服を着こなしてみせます!」
チョロいリアンヌは、ジャージのチャックを首元までビシッと上げて胸を張った。
「さて、シエラ。現地の通貨(お金)の準備はできておるな?」
「はい。先ほどの空戦中に、現地のネットワークに侵入して複数のダミー口座を開設。暗号資産のロンダリングと株の超高速取引を数分間実行し、日本円で約三億円ほどのクリーンな資金を電子マネーとしてこちらの端末にチャージしておきました。団長には内緒です」
「(……仕事が早すぎるし、犯罪のスケールがえげつないのう)」
ローゼリアは少しだけ地球の経済に申し訳なさを感じつつも、頼もしい電子戦のプロに親指を立てた。
「よし! 第一目標は、ここから最寄りのコンビニエンスストアじゃ! 団長にスイーツを没収されてしまったからな、今の妾は糖分への渇望で狂鬼と化しておる! 出発!」
「「「はっ!」」」
ローゼリアを先頭に、規格外の美少女四人組は、山林を抜けて現代日本の街へと歩き出した。
山を下り、舗装されたアスファルトの道路を少し歩くと、やがて見慣れた街並みが姿を現した。
行き交う車、電柱、立ち並ぶ家屋。7年の月日が経っているとはいえ、2026年の日本はローゼリアの記憶の中にある景色とそれほど大きく変わってはいなかった。
「ふむ……。空気中に微弱なマナが漂っているわね。やはり、アルカードの連中が次元ゲートを開いた影響で、この星にも少しずつ魔法の力が漏れ出しているのかしら」
アルティナが、周囲の空間を分析しながら言う。
「かもしれないな。まあ、一般人には感知できんレベルじゃが」
ローゼリアが答えていると、前方の交差点の角に、煌々と白い光を放つ見慣れた看板が見えてきた。
『ローカルマート ○○山下店』
「(おおっ……! コンビニじゃ! 24時間営業のオアシス!)」
ローゼリアのテンションが一気に跳ね上がる。
自動ドアの前に立つと、ウィーンという小気味良い音と共に、懐かしい入店チャイムが鳴り響いた。
冷房の効いた涼しい空気が、四人をふわりと包み込む。
「なっ……! 扉が、自動で開きましたわ!? それにこの冷気……結界魔法ですか!?」
リアンヌが、警戒度をマックスにしてジャージの袖を捲り上げる。
「落ち着けリアンヌ。これは電気で動く自動ドアとエアコンじゃ。地球の科学技術の結晶じゃぞ」
ローゼリアはリアンヌをなだめつつ、真っ先にスイーツコーナーとスナック菓子の棚へと向かった。
そこはまさに、宝石箱であった。
色とりどりのパッケージに包まれたポテトチップス、チョコレート、グミ。冷蔵ケースには、プリン、シュークリーム、ロールケーキが綺麗に陳列されている。
ルミナスの洋菓子も美味しいが、現代地球の企業が研究に研究を重ねて作り出したジャンクで甘美な味は、また別のベクトルで脳を焼く魔力を持っているのだ。
「おおお……! 新作の『チョコミント・パフェ』に、『無限旨辛ポテト』……! 記憶にはない商品じゃが、間違いなく美味いやつじゃ! カゴだ! カゴを持てい!」
ローゼリアは手当たり次第に商品を買い物カゴ(リアンヌが持っている)へと放り込んでいく。
「マスター、その成分表をスキャンしたところ、糖質と脂質の数値が異常です。人間の身体を内部から破壊する遅効性の毒物と推測されますが」
シエラが、ポテトチップスの裏面を見ながら真顔で警告する。
「これがいいんじゃ! この背徳感こそが地球の娯楽なんじゃよ!」
「なるほど、現地の民はこの極彩色の液体を飲んで闘争心を高めるのですね。……『魔剤』ですか」
アルティナは、冷蔵ケースに並ぶ毒々しい色の缶飲料に興味津々の様子だった。
買い物を満喫している四人は、その美貌と奇抜な会話も相まって、店内でかなり目立っていた。
特にローゼリアとアルティナの二人は、周囲の客が思わず二度見するほど目を引いていた。
「よし、とりあえずお菓子はこんなものじゃな。あとはレジの横にある『アレ』じゃ……!」
ローゼリアは、満杯になったカゴをリアンヌに持たせ、レジカウンターへと向かった。
そこには、ホットスナックの保温ケースが鎮座しており、黄金色に輝くフライドチキンが並んでいた。
「すみませーん! お会計と、この『スパイシー・チキン』を四つ頼む!」
ローゼリアが元気よく声をかけると、バックヤードで品出しの作業をしていた店員が、「はいはーい、いらっしゃいませー」と気の抜けた声でレジへと出てきた。
年齢は三十代前半くらい。少し無精髭を生やし、目の下には疲労の色が濃いクマがある。名札には『店長:タナカ』と書かれていた。
「(……タナカ!?)」
ローゼリアの動きがピタリと止まった。
間違いない。少し老けて、腹も出てはいるが、前世の自分と深夜のネトゲで毎日のようにパーティを組み、ボイスチャットで馬鹿話に花を咲かせていたリアルでの旧友……タナカであった。
7年前、彼は万年フリーターとしてこのコンビニで夜勤バイトをしていたはずだが、どうやら月日が流れ、ついに店長に昇格(あるいは押し付けられた)らしい。
「えーっと、チキンが四つと、カゴの商品ですね。……って」
タナカは、レジに置かれた山盛りのお菓子と、目の前に立つ異次元の美少女たちを見て、思わず目を丸くした。
そして、ローゼリアの顔と、その隣に立つアルティナの顔を交互に見て、ハッと息を呑んだ。
「お前ら……! 2年前の……2年前に、あのすげえ爆音と一緒にウチの店に逃げ込んできた、外国人の姉ちゃんたちか!?」
タナカが、レジカウンター越しに大声を出した。
「(あっ! そうじゃった!)」
ローゼリアは内心で舌打ちをした。
2年前、エインヘリアルの暴走で日本上空にワープアウトし、戦闘機形態のノワールで自衛隊機から逃げ回ったあの事件の日。実はローゼリアとアルティナの二人だけは、機体を山に隠した後、一時的にこの街に潜伏し、偶然にもこのコンビニでタナカと遭遇していたのだ。(リアンヌとシエラはその時エインヘリアルでお留守番だったため、面識はない)
「ああ! あの時、賞味期限切れの廃棄弁当を恵んでくれた店員さんね。随分と老けたんじゃないかしら」
アルティナが、タナカの顔を見て優雅に微笑む。
「人聞きの悪いこと言うな! あれは俺のまかない分を分けてやったんだよ! ……それにしても」
タナカは、まじまじとローゼリアとアルティナを見比べた。
「あの時も凄え美人だなってビビったけどさ。こうして並んでると、お前ら、マジでそっくりだな。双子か?」
タナカは二人の顔を指差して言う。
ローゼリアとアルティナが似ているのには、明確な理由があった。
アルティナは、エインヘリアルの中枢システムたる『ユグドラシル』によって、エースパイロットであるローゼリアと、その近衛であるリアンヌの二人の遺伝子情報を組み合わせて生み出されたデザイナーベビーだからだ。二人の特質を色濃く受け継いでいるため、顔の造形や背格好はローゼリアに瓜二つと言っていい。
「違うのは……」
タナカは視線を泳がせながら、無邪気な声で続けた。
「この赤い目と、紫の目ってことと……あとはまあ、アレだな。胸のサイズが、赤い目のお嬢ちゃんの方が随分デカくて、紫の目の方は……ほぼ完全に『まな板』ってことぐらいか——」
ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
タナカの言葉が最後まで紡がれる前に、コンビニ店内の室温が急激にマイナスにまで低下し、陳列棚のお菓子がカタカタと震え始めた。
アルティナ・アスフィの紫の瞳の奥で、一切の光が消え失せていた。
胸のサイズ。それは、完璧を誇るアルティナにとって、絶対に触れてはならない逆鱗であった。
遺伝子の提供元であるローゼリアも、もう一人の『母親』にあたるリアンヌも、それなりに立派な胸部装甲の持ち主である。それにもかかわらず、アルティナの胸は文字通りの『まな板』なのだ。
それは遺伝の失敗などではなく、ユグドラシルの制作者の『そういう嗜好(意向)』によって意図的に削ぎ落とされたという、彼女にとってあまりにも理不尽で残酷な仕様のせいだった。
「……シエラ。この現地の原住民の脳髄を、物理的に消去しても構わないかしら?」
アルティナが、能面のような美しい無表情のまま、指先に致死量の魔力を集束させ始める。
「ちょ、ま、待つんじゃアルティナ!!」
ローゼリアが慌ててアルティナに飛びつき、その腕を押さえ込んだ。
「こいつは地球人じゃからデリカシーという概念がないんじゃ! 悪気はない、ただの視力検査の素直な結果じゃから許してやれ!!」
「なんですって……? 視力検査……?」
「ひぃぃぃっ! 違う、違うのじゃ! とにかくここで魔法はダメ絶対!」
「な、なんだ? 急に寒くなったけど……エアコン壊れたか?」
死の淵に立たされていることなど微塵も気づいていないタナカは、呑気に首を傾げながら、チキンをトングで取り出し始めた。
「は、はい! チキン四つですね! お取りします!」
ローゼリアは必死にアルティナをなだめつつ、タナカに急かした。
そして、前世からの無意識のクセで、うっかりスラスラと口走ってしまったのだ。
「あ、チキンの包み紙、セロハンテープで真ん中をキッチリ留めてくれ。油が漏れると手がベタベタになるからな。それと、お手拭きは二枚ずつ入れておいてくれよ。タナカの『タゲ取り』くらい雑だと困るからな」
ピタッ。
タナカの、レジを打つ手が止まった。
「…………え?」
タナカが、信じられないものを見るような目で、ゆっくりとローゼリアの顔を見上げた。
「お客さん……今、なんて……?」
「あっ」
ローゼリアは、自分がやってしまった痛恨のミスに気づき、サッと顔を青ざめさせた。
「包み紙をセロハンテープで留める……お手拭きは二枚……。それ、7年前に死んだ俺のダチが、毎回俺のレジでチキンを買う時に言ってた鬱陶しい注文の仕方……」
タナカの死んだ魚のようだった目に、驚愕と、言い知れぬ動揺が広がっていく。
「それに今、『タナカのタゲ取りくらい雑』って……俺が昔ネトゲでタンクやってた時の身内ネタ……。2年前はお前ら、何も言わずにすぐ逃げていったけど……なんで、こんな外国のお嬢ちゃんが……?」
(や、やってしまったぁぁぁっ! 完全に口が滑ったのじゃ!)
ローゼリアは冷や汗を滝のように流した。
いくら何でも、外国人風の金髪美少女が自分の黒歴史と身内ネタを知っているなど、ホラー以外の何物でもない。
タナカが、レジカウンターから身を乗り出すようにしてローゼリアに顔を近づけてきた。
「お前……まさか……『ジムス』の知り合いか……!?」
ジムス。それは、ローゼリアの前世がネトゲで使っていたプレイヤーネームであった。
「ち、違う! 違うのじゃ! 妾は決して火力特化で突っ込みまくる地雷アタッカーの『ジムス』などという人物は知らん!」
「プレイスタイルまで知ってんじゃねえか!!」
タナカがバンッ! とレジ台を叩く。
「お前、本当に誰なんだ……! あいつは7年前の夏に、トラックに轢かれて……。まさか、あいつの妹とか親戚か……?」
タナカの目に、微かに懐旧の涙が浮かんでいるのを見て、ローゼリアは胸がチクッとした。
(……タナカ。お主、妾のことを、まだ覚えていてくれたんじゃな)
ローゼリアはコホンと一つ咳払いをし、アルティナを抑えていた手を離して、堂々とした態度で腕を組んだ。
「……妾は、その『ジムス』の友人じゃ」
「友人!?こんな美少女の友人なんてきいてねぇ……」
「ま、まぁ!……ジムスから生前、『日本に行ったら、タナカというド下手くそなタンクのいるコンビニでチキンを買え』と言付かっておったのじゃ」
ローゼリアは、少しだけ寂しそうな、しかし優しい笑みを浮かべて言った。
「ジムスは、お主と一緒にゲームをしていた時間が、一番楽しかったと言っておったぞ」
その言葉を聞いた瞬間。
タナカの目から、ポロリと大粒の涙がこぼれ落ちた。
「そうか……。あいつ、そんなことを……」
タナカは目頭を乱暴に腕で拭い、ふっと笑い声を漏らした。
「……馬鹿野郎。俺のタゲ取りが下手だったんじゃねえよ。あいつが火力職のくせに突っ込みすぎるから、俺のヘイト管理が間に合わなかっただけだっつーの……」
「ふふっ。そうかもしれんのう」
タナカは鼻をすすりながら、チキンの包み紙をセロハンテープでキッチリと留め、お手拭きを多めに入れて袋に詰めた。
「合計、4580円だ。……遠いところからわざわざありがとな。あいつの墓参りにも行ってやってくれ。あと、これ……2年ぶりの再会と、ジムスの分のおまけだ」
タナカは、ホットスナックのケースから、新商品の『ビッグ・フランクフルト』を一本、サービスで袋に入れてくれた。
「……かたじけない。タナカも、あまり夜勤ばかりして身体を壊さんようにな」
シエラの偽造した電子マネー(スマホ端末)でピッと会計を済ませ、ローゼリアたちはレジを離れた。
自動ドアが開き、外の蒸し暑い空気が四人を迎える。
「……マスター。先ほどの現地の人間とは、どういったご関係で?」
シエラが、不思議そうに尋ねてくる。
「ただの、昔の『知り合い』じゃよ。……とても良い奴だった、ということを思い出しただけじゃ」
ローゼリアは、袋に入った熱々のフライドチキンを取り出し、パクリと一口かじった。
「んんっ……! これじゃ、このジャンクなスパイスの味! ルミナスには絶対にない、地球の味じゃ!!」
地球のジャンクフードの美味さに、先ほどの感傷は一瞬で吹き飛び、ローゼリアの顔がパァッと明るく輝いた。
「わ、我が主! そのような茶色い未知の肉塊、本当に安全なのですか!? 毒見はまずこのリアンヌが……!」
「うむ、美味いぞ! リアンヌも食ってみよ!」
ローゼリアがチキンを差し出すと、リアンヌは恐る恐るそれを口にした。
「……っ!? な、なんというジャンクで強烈な旨味……! 我が主からいただいたという恩恵も相まって、口の中で極上のマナが爆発しておりますぅぅっ!」
リアンヌは地球のコンビニチキンの味(と間接キス)に完全にノックアウトされ、その場に崩れ落ちた。
「ふふっ、なかなか面白い文化ね。この『魔剤』も後で冷やして飲んでみましょう。……タナカの命は、この甘美な液体に免じて今回は助けてあげるわ」
アルティナも、カゴの中のエナジードリンクを見てご満悦の様子だ。
「よし! 買い出しも済んだし、旧友の顔も見れた! これより、我々は第一の目的地へ向かうぞ!」
チキンを頬張りながら、ローゼリアが夜空を指差して宣言する。
「目的地とは、アルカードの潜伏拠点ですか?」
シエラが尋ねる。
「違う! 『秋葉原』じゃ!! 7年分の新作ゲームとアニメのグッズを、エインヘリアルの倉庫がパンクするまで買い漁るんじゃぁぁっ!!」
アルカードの陰謀も、地球の危機も、今の彼女にとっては二の次であった。
最強のエースパイロット・ローゼリアの地球潜入調査は、かくして欲望全開のオタク活動へと舵を切ったのである。
その背後で、コンビニの窓から彼女たちの後ろ姿を見送っていたタナカは、ポツリと呟いた。
「……ジムスの妹、か。……あいつに似て、すげえ良い笑顔でチキン食い上がって。……また明日も、夜勤頑張るかな」
少しだけ元気を取り戻した現代の店長を残し、戦乙女たちはネオンきらめく現代日本の夜の街へと消えていった。




