表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放皇女の異世界戦記  作者: 浅井川亘


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
230/285

第三幕 第二十六話:神々の座、空っぽの王座

バベルの中枢を貫き、時空の歪みをこじ開けた先に広がっていたのは、黄金色の粒子が舞う、静寂に満ちた異空間であった。

高次元領域へ続く『円卓』。

かつては管理者たちが万物を見下ろし、この世界の因果律を書き換えていた特権的な場所。

しかし、そこに君臨していたはずの「神々」の姿は、影も形もなかった。

「……誰も、おらん?」

漆黒のルシフェルから降り立ったローゼリアは、周囲を慎重に見回した。

円卓を囲むように設置されていたはずの六本の光の柱は、激しい過負荷によって機能停止し、無残にも明滅を繰り返している。

「嘘……。管理者の反応が、一つもありません。それどころか、ここの環境データが極端に不安定ですわ」

アルティナが端末を操作し、顔を青ざめる。

「まるで、我々が突入してくる直前まで、誰かがここにいたような……それも、かなりの慌てようで逃げ出したような痕跡です」

シエラが足元の床を指差す。そこには、高次元の存在が物理的干渉を急いだ際に生じる、空間の亀裂が数多く刻まれていた。

「何ということだ……。奴ら、あれほどの神罰機構を我々にぶつけておきながら、自分たちはその裏で脱出の準備を進めていたというのか?」

ブリュンヒルデ団長が、ブリッジから投影される映像を見て舌打ちをする。

「卑怯者め! 偉そうに管理者などと名乗っておきながら、自分たちの城を捨てて逃げるとは!」

エリーゼが憤慨し、真紅のビーム砲を空に向けて突き上げる。

まさに、敵前逃亡であった。

あれだけの兵器を犠牲にし、三次元宇宙の物理リソースの殆どを使い果たしてまで、ローゼリアたちという「バグ」を消去しようとした。その執念の裏側で、彼らはすでにこの場所を捨て、より安全な高次元の彼方へと逃げ出す算段を整えていたのだ。

「……待て。一人だけ残っているようだぞ」

ブリュンヒルデの冷静な声に、全員が視線を中央の玉座へと向ける。

消えかけていた六本の光の柱の中で、ただ一本だけ、最後の一柱が、かろうじてその黄金の光を保っていた。

その柱の前に、一人の女性が立っている。

燃えるような金色の長い髪に、意志の強さを感じさせる切れ長の瞳。白を基調とした、神々しさを湛えたドレスを纏い、背中には透明な光の羽を従えた、息を呑むほどの美女であった。

彼女は、突入してきた戦乙女たちを恐れる様子もなく、ただ冷ややかに、玉座の前でこちらを見下ろしていた。

「……よくここまで辿り着いたものね。特異点、ローゼリア・エーベルヴァイン。そして、あなたの翼たち」

その声は、鈴を転がすように美しく、しかし同時に冬の海のように冷徹だった。

「妾が誰か知っているようじゃな。随分と余裕そうに見えるが……逃げ遅れたのか? それとも、捨て駒としてここに残されたのか?」

ローゼリアは対艦ブレードを構え、一歩前に出る。

美女は、フッと儚げに微笑んだ。

「捨て駒……そうね、他の管理者たちは、自分たちの保身のために私をここに置いていったわ。彼らは怯えているのよ。あなたのその、道理も論理も通じない、理不尽なまでの破壊力にね」

「妾は破壊などせん。ただ、邪魔をする者を排除しておるだけじゃよ」

「言い訳は不要よ。私は第1柱、管理者の長——レガリア」

美女……レガリアは、ゆっくりと玉座から歩み出た。彼女が足を踏み出すたびに、足元の床に幾何学模様が浮かび上がり、周囲の空気が重く圧迫されるような魔力的な圧力——『神威』を放つ。

「彼らは逃げたけれど、私は逃げない。この宇宙の管理者が、ただの『特異点』一人に屈して背中を見せるわけにはいかないから」

レガリアの瞳から、金色に輝く神々しい光が溢れ出す。

その威圧感は、先ほどまでの古代マギアナイトのAI制御などとは比べ物にならない、本物の「管理者」の力であった。

「ローゼリア。あなたをここで終わらせるわ。どんなに理不尽な技を使おうとも、因果のことわりそのものを操作する私の前では、あなたの戦法は通用しない」

「因果の理……ふん、また小難しいことを言うてくれる。妾には、因果などという面倒なものよりも、今ここで貴様を叩き斬るという『現実』の方がずっと大事なんじゃよ!」

ローゼリアは、ルシフェルのスラスターを全開にした。

漆黒の悪魔が、黄金の光を纏った神の代行者へと、一気に肉薄する。

「お姉様、加勢しますわ!」

エリーゼのレーザーがレガリアを狙うが、レガリアは指先を動かしただけで、レーザーを空間ごと『消滅』させた。

「無駄よ。ここは私の領域。あなたがたの武器など、存在しないのと同じこと」

レガリアが掌をかざす。

その瞬間、戦乙女たちの周囲の空間が歪み、彼女たちを締め上げるような重圧が襲いかかる。

逃げ遅れたのか、それとも最初から最強の門番として残ったのか。

管理者の長、レガリアとの決戦が、今、神の座にて幕を開けようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ