第三十話 黒い夢
出張所からの帰路についたシオンとブルー。そこで新たな可能性が見つかった。
馬車に揺られながらセチア国を後にした。シオンとブルーは向かい合う形で帰路についている。
「シオン様。」
ブルーがシオンに静かに声をかける。シオンの目の前にはいつにもなく真剣そうな表情を浮かべる使用人がいた。
「はい。」
返事をすると、ブルーは続けた。
「光属性魔法を使える人は最近減少傾向なのをご存じですか?」
「……え?」
ブルーはこぶしを握る。
「実は、いえ実際。光属性は闇属性よりも弱いとされています。理由はただ一つ。敵も味方も傷つけない属性だからです。」
シオンは目を丸くする。
「つまり……闇属性に勝てないんですか?」
「いえ、そうとはかぎりません。ただ、過去に一度光属性を扱う人々が一斉に亡くなってしまう事件がありました。」
それを聞いたシオンは息をのむ。
「それって、いつ頃の話ですか……?」
シオンの言葉にブルーは記憶をさかのぼるように顎に手を当てて考える。そしてみるみる顔を青ざめていった。
「ちょうど、三年前です。シオン様がここに来られる少し前でした。」
ブルーは深く息を吐く。こめかみに手を置き、なにかを考えている。シオンもそのしぐさを見て察してしまった。
自分が記憶喪失なのは、ただの病気ではないということを。
出張所から帰ってきて、シオンはゆっくり就寝することになる。詳しい話は後日しっかり調べてからしてくれるとブルーは言っていた。シオンは不安だがとりあえず休むことにする。
外には星空が広がっており、冬の終わりが近づいているのか雪が降っているのを見る機会が減ってきた。それでも朝も夜も肌寒い。
分厚い羽毛布団にくるまり静かに目を閉じる。だが、そこにあったのは快眠ではなく、粘りと張り付くような悪夢だった。
意識が深く沈んだ時、シオンは目を開く感覚になる。以前は街の中にいたが、ここはどこかの施設のようだ。高い塀、周辺にはまた見たことのない人たちがいる。一歩踏み出そうとした瞬間、場所が変わった。
次に来たのは森の中。降りしきる雨が自分の体を走っていた。何かに追われているのか息が上がっている。その体をシオンは全く制御することができなかった。
(どうして私は走っている?)
振り返ろうとしたが、夢の中にいる自分がそうはさせなかった。何度も転びそうになりながら走り続けている。
そしてとあるところにとまると後ろを振り返った。そこには真っ黒の羽根を広げる怪物が何体かいた。二、三……いやもっといる。シオンが出張所で出くわしたあのドラゴンよりもおどろおどろしいオーラを放っていた。自分は息を整えながら立ち向かい、光属性の魔法を使ってあらがっていた。
制御がすさまじく、空から、地面から光線がその怪物に突き刺さる。だが、相手も相手だった。
黒い矢を何千本と放ってくる。自分はそれに対抗するようにバリアを展開した。
「はぁっ。くっ……。」
自分の苦しそうな声が聞こえる。分が悪かった。相手は闇属性、こちらは光属性。シオンはその景色を見ることしかできず眉を顰める。
こんな記憶知らない。
いや思い出さなければ。
そう思い、シオンはその夢に向き合った。
ふとシオンは違和感を持つ。確かに自分は、確かに満身創痍だが一度も攻撃を食らっていないようだ。それはまるで踊っているようだった。
人数不利さえなければ彼は確実に勝てている。夢の中の自分はとても強かった。
「〇〇!!」
どこからか声が聞こえる。周りの戦闘音でかすれて聞こえなかった。
振り返るとそこには誰かがいた。黒い髪、赤い目をした耳がピンと長い人だ。自分のそばに駆け寄るとややキレて反応した。
「くそっ、あんたいっつも一人で戦ってるな。手伝うぞ。」
その人が使うのは本来なら相反するはずの闇属性魔法だった。いや、人なのかが怪しかった。
闇は光に強いというのは常識だ。だが、この者はそれを覆すような動きを見せていた。
闇属性同士だというのに攻撃が通っている。シオンは心の中で言葉を失っていた。その者が来た瞬間から戦場は大きく変わったのだから。
一体、また一体と生命を散らすように消えていく。すると、その集団の奥にまたもう一人人影が見えた。
「……どうしてまだ耐えてるの?」
今度はやや幼めの声だった。黒い髪、ピンと長い耳そして自分と共闘している者と同じ赤い瞳をしていた。まるでルビーのようだ。
その言葉に反応するように自分の近くにいる者は言う。
「お前!あいつらにたぶらかされてるんだろ。やめろ、今すぐ。」
「ノロ兄には関係ない!」
「おまえ、俺の主に手を出すなんて許さねえから覚悟しやがれ!!」
そういうと、二人はバチバチに戦い始めた。昔の自分は完全に唖然とその場に残っている。周りにいた怪物たちも。まさかこの場は兄弟げんかだったのだろうか。
不思議な夢を見た後、シオンはもやもやしたまま目を覚ました。”ノロ”、そしてその妹のだれか。また新たな記憶のかけらを見つけることができた。しかし、シオンは目を覚まして数秒目を見開く。自分はまだいい。軽い体調不良で済むから。もう一人見る可能性がある人物がいる。
「アスターさん……!」
気づけばシオンは今は何時かもわからずに飛び出していた。外では最後の雪が降っている。
ついに30話行きましたね。どうも作者です。ユニークアクセス数が240人を迎えました!
すごいです!うれしいです!
小学校ぐらいの人数でしょうか?たくさんの方々見てくださりありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!




