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第二十九話 温かいもの

あの騒ぎはドラゴンが暴れていたからだった。しかし、そのドラゴンはどうやらシオンにはなついているのかおとなしくなったのだ。それを見たシオンはそっとドラゴンに触れる。

 シオンはドラゴンに触れる手をそのままに、ゆっくりと魔法を注いでいく。自分の属性は何なのかはわからなかった。


 だが、普段使っている制限魔法の類とはまた違う熱が全身から指先へと流れていくのを感じる。以前は発熱反応を示して使えなかったというのに、今はものすごく安定していた。相手がドラゴンだからだろうか。


 しばらくそれを続けていた。ドラゴンの足が治るまで、その属性が本当に特殊属性なのだろうか。そんな思いをそこに注ぐように魔法を使う。



 すると、変化はすぐに訪れた。指先から発する魔法とは別に、足元に何か生えてくる。


 金色のフリージアだった。シオンを囲むように次々と咲き誇り、辺りを照らしていく。


 それを見ていたブルーやモネ、そして周りの警備隊は目を丸くせざる負えなかった。その花を咲かせれるということは属性が決まったようなものだ。


 ”光属性”


 シオンは光を扱う人間らしい。


 その花が広がるにつれて、ドラゴンの体にも変化が起こる。じわじわと傷口が収まっていく。シオンもそれをみて言葉を失っていた。


 自分がこんな力を持っているなんて思いもしなかったのだ。


 でも、怖くはなかった。むしろ安心した。ドラゴンの傷を癒せるのは自分しかいないと分かっていたからだろうか。その後も、完治するまで注ぎ続けた。


 数分後。ドラゴンの傷は完治してなついているかのようにシオンの手にすりすりと顔をこすりつけている。

 シオンはどうしたらいいかと、不安そうにしていた。ブルーはそれに気づくと、ゆっくり近づきトントンとシオンの肩に手を置いた。


「……お疲れ様です、シオン様。もう大丈夫ですよ。」


 シオンがその声に気づくとそっとドラゴンから手を離した。ドラゴンは名残惜しそうにこちらを見つめている。大きな体に似つかぬ、かわいらしいしぐさだった。


「体調のほうはいかがですか?」

 ブルーが尋ねるとシオンは少しだけ自分の体を見た。いつものスーツ、イヤリング。手が震えていることもなければ、熱を出していることもない。

 まさかの、何もなかった。


「はい。問題ありません。」


 シオンがそういうと、ブルーはほっと胸をなでおろす。

「何かありましたら早めに教えてください。」

 しかし、その数秒後ブルーは深呼吸をして言う。


「しかし、シオン様。少し厄介なことになってきました。」

「はい?」


 シオンには何のことかさっぱりだった。ドラゴンを直しただけだ。確かに光属性は”特殊”といわれるほど珍しいものかもしれない。だが、それで何が起こるのかをシオンは知らなかった。


 ブルーはシオンの目を見て静かにいう。


「先ほどの金の花。あれが発現するということは……貴方様はかなりの光魔法の使い手ということになります。なので……。」


 ブルーは途中から口をぎゅっと閉じた。何かを言いずらそうにしている。ここでは言えないことかもしれない。


「……わかりました。今後は必要最低限に抑えます。」

「お願いします。これ以上目立たれますと我々の業務が忙しくなります。いい意味で。」

「はい。」


 シオンはブルーの冗談を聞いて、困ったように眉をひそめた。





 ドラゴンは、無事警備隊の手を借りてセチア国を飛んで行った。

「なんだったんだあいつ。」

「修繕費はまあ、足りてるからいいが。」

 と本音が漏れていた。それからドラゴンの傷を癒したシオンへの感謝の言葉が綴られる。

「マジで助かった。……って記憶の管理者様!?」

「ええ!?マジ!?」

 彼らの語彙力もドラゴンとともに飛んで行ってしまったようだ。握手をしたり、「すごい」や「お初にお目にかかります」といった堅苦しい挨拶までが一気に飛び交っていく。普段あまり人前に出ないシオンはかなり大変そうだった。

 ブルーはさっとシオンの前に行くと、ぴしゃりと言い放つ。


「それではそろそろ本館に戻らなければなのでここで失礼しますね。それでは参りましょう。」

「は、はい。」


 ブルーの先導で人混みから抜けることができた。遅れてモネもついてきている。

「シオンさん、かっこよかったです。」

 彼女はぐっとこぶしを胸の前に作りながら、笑みをこぼした。それを聞いたシオンは照れくさそうに目を細める。

「ありがとうございます。」

「私、光属性魔法初めて見ました。とても美しかったですよ。」

「そうですね、私も初めて使いました。」


 働いている場所は違えど、二人は同じ記憶を扱うものとして意気投合することができたようだ。ブルーを先頭にあの塔へと戻っていく。

 空にはオレンジ色の光が広がっていた。




 そんな様子を遠くから眺めている影が一つ。耳がピンと長い。黒いローブを身にまとい、じっと仲睦まじい三人組を赤い瞳でとらえていた。


「見つけた。」


 低く、先の見えない声が漏れる。あたりの草木はなぜかその人物が通るにつれて枯れていく。シオンが咲かせた金の花とは逆の効果。植物の命を散らしていく闇のオーラが漂っていた。


 その人物は近くにいる人を見て舌打ちをする。


「相変わらず、人に好かれるね。でももう間違えない。」


 にやりと微笑むとまるで始めからそこにいなかったように消えた。あたりは一面花々が枯れている。




 そんな男がいたとも知らずに、シオンとブルー、モネは記憶の図書館出張所に戻っていた。

「本日はセチア国の問題解決に力を貸してくださりありがとうございました。」

 モネは、国を代表して深々とシオンに頭を下げた。シオンは申し訳なさそうにしている。


「いえいえ……どういたしまして?」


 慣れない感謝の言葉になんて返せばいいかを知らなかった。だが、不思議と悪い気がしないのも成長した証だろうか。


「シオンさんがいなかったら今頃、辺りは黒焦げでした。」


 モネの言葉は事実である。痛みで理性を失ったドラゴンがもしシオンに癒やしてもらえなかったとしたら。あれ以上の悲惨な光景を見ることになるのは一目でわかるだろう。


「はい……止められてよかったです。」


 シオンの言葉にモネは小さく微笑んで「はい。本当にありがとうございました。」と再度感謝を述べた。


 あっという間に出張の仕事は終わった。明日には帰り、きっといつも通りの営業が待っているのだろう。ただ一つ言えるのは、シオンは戦えるということだ。


 光という名の特別な魔法で。

1か月記念日!皆さんここまでいかがでしょうか?

この作品は、実は約6年前から考えていたものなんです。6年前って何があったんでしょう?

しっかり設定を練ったのは3年前からですけどね!まあその話は、いったんおいておきましょうか。

実際に投稿するときは緊張しすぎて死ぬかと思いました。

でも、今では一人でも閲覧してくれていることを知り、毎日の楽しみになりました。

ついでに、自身も持てるようになりましたよ。やったね!

おかげで、今では2作品を同時並行しています。正直充実しすぎて逆に怖いですけど。

見てくださっている方々いつも本当にありがとうございます。


ということで、1か月記念はあのコーナーに参りましょう!

彼らの日常会話第二話です!前回は4月1日に投稿しているので内容覚えてなければ確認してください!

前回はブルーとマリーの意外な関係性をお伝えしました。

今回はいったいどうなるのか。お時間があったら是非ご覧ください。

それではどうぞ。









【第二話 姉妹】

記憶の管理者を守る使用人たちの中で、唯一血縁関係がある二人がいる。それはアイカとアヤメだ。年の差は四つ。彼女らは仲はいいが、性格や得意分野は真逆だった。

とある休日。二人は並んでお茶をのんでいる。


「アヤ姉さま。」

それが、アイカが時々アヤメに言う呼び方である。この時は、昔を思い出す。

「なんだ、アイカ。」

「ずっと監視するのって大変じゃありませんか?」

確かにそうだ。アヤメは二十四時間見張りをするために塔で寝泊まりをしている。時々交代はするが、基本そこにいる。アヤメは「うーん」と腕を組んで考えたのち答えた。

「いや、みんなが頑張ってる姿を見ると嬉しいものがあるよ。成長しているなって、しみじみ思うよ。」

「ふふ。そうでしょうか。」

アイカはお茶を飲みながら、のんびり息をつく。


「それにしてもこんなに長くいても、退屈しませんね。いい意味で。」

アイカがそういうとアヤメもこくりとうなずいた。

「完全に同じという日がないほど、私たちも工夫しているよな。」

「ええ。」

主人が代わるのもそうなのだが、使用人も変わっていた。新しい技術や知識を学んだりするのはもちろん、主人ごとに衣装を変えたりなど彼らも楽しんで仕事に取り組んでいる。

「正直、マリーが髪色を変えたときはびっくりした。今は元に戻っているが。」

「わかります。あと時々キュラも髪を切ったりしていましたよね。」

「ああ。ブルーに至っては最近性格丸くなってきたよな。元はオラオラ系だったのに。」

「ふふ、それは大げさでは?」

みんなのことを知りすぎて、互いに嘘をつけなくなっている関係。だが、それでいいのだ。

「アイカも変わったよ。昔は緊張しすぎて、言葉を話すのも苦手だっただろう?」

「そうですね。アヤ姉さまも人間不信だったのが、今はみんなを頼りにしていますよね。」

時の流れは恐ろしい。こうも簡単に問題が解決する。

そして同時にそれほど壮大な時間を彼らが過ごしてきた証でもあるというわけだ。


そんな彼らは今日も記憶の図書館で時を刻んでいる。

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