第二十六話 彼らの決着
キュラとアイカが終わり、残るはマリーとブルー。一体、だれが勝つのだろうか。
太陽はいつの間にか天高く舞い上がり、少しだけ暖かくなってきた。だが、変わらぬ白い景色。第二ラウンドが始まる。
三番目のプレイヤーはマリー。彼女は鎌を持って登場だ。
「よーし。頑張るぞ!」
その鎌は妙にまがまがしい。冬で肌寒いというのに、さらに冷え込んでいくような空気を醸し出していた。それから、小柄の体にはにつかぬ大きさだ。それでも彼女は慣れたように構える。
そして振りかぶった。きれいな横切り。その斬撃がまっすぐ進んでいく。雪を巻き込み、風で左右に飛ばしていく。風魔法に近いが、まったくの別物だった。
その斬撃はざっと数十秒続き、終わりを迎える。ざっと、記憶の図書館に行くまでの道のりが半分見えていた。
「おー!今回うまくいったね。どうかな?」
マリーは先を見ようと目を細めている。実際、かなり遠くまで道が見えているのだからかなりの高得点だろう。ブルーは水晶をのぞいてうなずく。
「マリーも問題なし。」
三人が終わったとき、しばらく沈黙していたシオンが尋ねる。
「あの、勝負ってどのように決まるのですか?」
彼の言葉に、水晶をのぞいていたブルーが優しく言う。
「この水晶で、雪がどれほど消えたか、道からずれたかを計っています。」
「それ、万能過ぎない?」
隣でマリーが突っ込んでいた。ブルーも同意見のようで小さくうなずく。
「ですが、詳しい数値等は我々にはわかりません。あくまでも計測器。誰が一位で誰が最下位か。数値が見たい場合は道具が必要です。」
「なるほど。複雑ですね。」
「まあ、なれますよそのうち。」
ブルーはその水晶を流れるようにアイカに渡した。
「最後は俺だな。」
最後のプレイヤーはブルー。魔法での挑戦だ。普段つけている黒い手袋を脱ぎながら、外に出た。
「ほとんど残ってないじゃないか。」
彼はぽつりと独り言を漏らす。その通りだった。キュラが中央の雪を削り取り、続いてアイカが丁寧に雪を消していく。そして最後にマリーがさらに遠方を片付けたというわけだ。
ブルーは正直どうしたらいいかわからない。
「まあ、全力を尽くすよ。」
そう覚悟を決めて両手を上に掲げた。彼は残っている雪の個所を見極めて、魔方陣を展開する。青い光を放つ細かな模様の魔方陣だ。
それは複数個発現し、残りの道に残る雪を掃う気らしい。
「いくぞ。」
発動した魔法は氷魔法。雪に氷は意味がないと思われたが実際は違った。その魔法は凍った対象を全部消すことができるらしい。条件等はわからないが、雪がさらに凍った。カチコチに表面に水色の薄い膜をつけて。そして数秒後、全部が消えた。キラキラと粉が舞うように輝いている。
そして、あらかた記憶の図書館に行くまでの道はきれいに雪かきを終えることができたようだ。
アイカはブルー同様に水晶を見つめてコクリとうなずく。
「ブルーも損傷ゼロです。」
ブルーはその結果を受けてほっとしている。
道に残っていた雪を手作業で片付けたのち、彼らは食堂に集まった。部屋に設備されているストーブが先ほどまで漂っていた冷たい空気が、温かくしていく。
「今年は白熱したね。」
キュラがのんびりそういうと、みんなはこくりとうなずく。
「そうだな。」
ブルーも腕を組みながらつぶやいた。キュラはそのままシオンのほうを見て首を傾げる。その表情はひどく穏やかだった。
「今日は楽しかった?」
声をかけられたシオンは少し考えた後「はい」と返事を返す。そしてにこっと小さく微笑んだ。
「皆さんが、強いことを実感することができました。私もいつかあの場所に立てるように頑張りたいと思います。」
シオンの言葉を聞いて、使用人たちは互いに視線を合わせた。以前、言われていた”戦い方を教えてほしい”という頼み。まだ、シオン自身に魔力体制がない以上見せるという形しか取れなかった。
「シオン様、ゆっくり慣れていきましょうね。」
アイカが静かにそういうと、シオンはこくりとうなずく。
「はい。よろしくお願いします。」
その言葉を聞いて、みんな拍手をした。シオンも不器用ながら、手をたたく。パチパチとそれぞれ違う音が鳴り響いている。不協和音ではない、心地の良いメロディーだった。
拍手が次第に止み、いよいよ発表の時間がやってきた。
「それじゃあ、結果を発表しまーす!」
水晶を受け取ったマリーが満面の笑みでみんなの顔を見た。マリーはふっと呼吸を整えると、水晶をのぞく。
「栄えある一位は……」
水晶が光を放ちだした。金色のその光はそっと食堂を照らしていく。
次第に収まり、マリーは深呼吸していった。
「アイカちゃん!」
一位はアイカだったようだ。それを聞いた彼女は目を丸くして自分自身を指す。
「私……ですか?」
「うん!おめでとー!!」
アイカは予想外だったのか目をぱちくりとさせて微笑む。
「すごい、初勝利ですね。」
そんな感嘆の声を漏らしていた。再びパラパラと拍手が巻き起こる。
「あ、二位はルーくん。三位はキュラ。四位はうちだね。」
さらっと順位を公開してマリーは「えへっ」とほほ笑む。
「勝負は勝負だったけど、結局楽しんだもん勝ちだよね。それに、雪かきできてよかった~明日からも営業頑張るぞ!」
マリーは最下位だったが、ポジティブな気持ちで切り替えている。二位だったブルーも、三位だったキュラも「次は頑張るか。」と意気込んでいた。
シオンがしばらくその光景を見ているとふらふらと、追憶蝶のアスターがやってきた。まだ羽はおれていて、弱弱しいが以前よりも動きがしっかりしている。
そっとシオンの肩にとまり、そっという。
「どうだった?」
シオンは彼の言葉に小さく微笑む。
「はい。とても貴重な経験でした。魔法も武器も私にはまだ扱えません。でも、いつか使えたならあんな風に使いこなしたいですね。」
アスターはじっとシオンの言葉に耳を傾けていた。そして満足したように小さく羽ばたく。
「シオンもきっと使えるよ。」
そうアスターはつぶやいた。




