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第二十二話 夢の続き

かすかに記憶を見たシオン。一人で悩んでいると、リンがやってきた。彼から聞かされたのは、思いがけない過去の自分との共通点だ。

 シオンはベッドの上でリンを凝視した。先ほど言われた言葉を整理するように。


 先を見て行動する?

 みんなの反応を信じて疑わない?

 そして、だれにも頼らず自滅。

 それから、一番考えている。


 そのどれもにシオンは自覚がなかった。眉をひそめてリンに尋ねる。

「性格は、変わっていないって嘘ですよね。夢の中では堂々としていました。今の私はどちらかというと臆病で……」


 シオンが言い終わる前に、リンは乱入して言う。


「いや、そうなんだよ。あんた常に笑っててさ、俺が本性知ったとき目を疑ったんだ。んで、指摘されたらそんな風に不満そうにする。マジで変わってない。」

「だから、今の私はあなたのことを覚えていないです。」

 そのシオンの回答に指をさしていう。

「覚えてないのはわかってる。でもさ、その言い方がマジでそっくりというより本人なんだよ。いや、なんというか狭く深い関係にはとことん尽くしてくれるみたいな?」

 シオンのことを知っているリンと、それを知らずに疑い続けるシオン。二人のやり取りは、どこか噛み合っていないように見えた。

 リンは落ち着かないといわんばかりに立ち上がり、シオンに言う。


「とにかく!記憶がなくてもあんたはあんただ。これ以上はその、ストレスになるから明日はなそうな。」

 ぶっきらぼうにそう言い切ると、返事も聞かずに部屋を後にした。青髪の使用人ブルーが作ったおかゆは湯気が小さくなり、冷めてきている。それをシオンはそれでも頬張った。




 次の日。倒れたのが噓だったように、体が軽い。今日が休みだからだろうか。シオンはそう思いながら外で揺れる木々を横目に部屋を後にする。なんだか騒がしかったからだ。


 廊下を歩いていると、青髪の使用人ブルーがシオンのもとに来た。

「シオン様!おはようございます。お体の調子はいかがですか?」

「はい。よくなりました。……それより、どうしたんですか?そんなに慌てて。」

 ブルーはバツが悪そうに目を伏せる。そして覚悟を決めたように顔を上げた。

「アスター様が昨日から姿を見せていないんです。シオン様、何か知りませんか?」


 シオンは目を丸くして言葉をこぼす。


「アスターさん……いないんですか?」


 シオンの言葉にブルーはこくりとうなずく。確かにリンが来る前から姿が見えていなかった。追憶蝶は元々いてはならない存在。そのため、記憶を思い出し帰った可能性もある。

 だが、彼らは探していた。

「追憶蝶は本来、シオン様などの記憶の管理者が直々に書に戻さなければ帰れません。しかし、記憶というより記憶の書が破損している場合、勝手に帰れてしまう可能性もあります。」


 ブルーは腕を組んだあと首を傾げる。

「もしその場合ですと、存在ごと消えてしまいます。我々の記憶のなかにさえ残らない。……それを確かめるために館内を捜索しております。」

 シオンは顎に手を当てて首を傾げた。アスターはシオンと出会ってから、基本的にシオンのそばを飛んでいた。あの日に限って姿を見ていない。

 そうすると、何かあったのかも……と。

「わかりました。私も手伝います。」

 ブルーは深々とお辞儀をしていう。

「よろしくお願いします。」


 二手に分かれて記憶の図書館を探し回る。

 食堂。

 浴室。

 各客室。

 どこにもいなかった。

 まだ、事情聴取を受けていないリンも一緒になって探していたが、見つからない。

「……記憶の保管庫行ってきます。」

 記憶の保管庫はあの白い塔だ。もし、あそこに迷い込んでいるならシオンしかはいれない。近くにいた金髪の使用人マリーに言うと真っ先に向かう。


 いつもの白い塔の中。そびえ立つ本棚の前に、一匹の蝶がいた。

「アスターさん、よかったここにいたんですね。」

 見つけた、よかった無事だ。そう安堵して近づく。しかし、シオンはその蝶の姿を見て目を丸くする。

 羽根が一枚折れていた。

「アスターさん!?」

 シオンが駆けつくと、ゆっくり振り返る。そして、フラフラと飛んできた彼を受け止めるように、そっと手を差し出した。

「ごめん……急にいなくなって。昨日いきなり折れてさ、どうすればいいかわからなかったんだ。」

 シオンは眉をひそめつつ、壊れ物に触れるように、そっと手を包み込んだ。


「今治療を施します。そこまで耐えてください。」


 シオンの左耳についているイヤリングがカランと音を立てて光る。緑色。癒やしの色。

 じわじわと羽を癒していく。追憶蝶にしか効かない、治癒魔法だ。

「……私も、昨日倒れたんです。深い夢をみました。」

 アスターはそれを聞くと、ピクリと羽を動かした。

「僕もみた。どこかの街の中。」

「私も、街の中でした。」

 どうやら、二人は同じ夢を見ていたようでシオンが話すことにアスターが助言をしてより明確な内容を思い出すことができた。


 レンガの道を進んで、建物を見ていたら二人組の男女に声をかけられる。自分が強者だからと"ミツバ"というギルドにスカウトされたこと。

 そして、その後はアスターのほうが知っていた。

「僕はどこかの職に就いていたみたいだ。敵に襲われたとき自然と身体が動いていたんだよ。短剣だった。まるで舞うような手さばきで敵を圧倒していたんだ。」

 アスターは羽根が折れてしまっているのも忘れて、楽しそうに続きを話した。


 自分は、信頼されていた。同時に、何か大きなものを背負っていたらしい。

 時より場面転換が入り、部屋のなかで落ち込んでいたらしい。その見た目は、アスターが覚えていた容姿の一つ。白髪だったそうだ。


 それからもう一つ思い出したらしい。自分は銀色の瞳をしていたようだ。透き通る、水晶のような瞳。そして、常に微笑んでいた。




 その話を聞いても、シオンは全く覚えていない。


 しばらく話し合った結果、シオンとアスターは別の夢を見たのかも知れないという結論に至った。

 もし、そうならシオンとアスターは同一人物というおかしな話になってしまう。

 人は魂がないと生きられない。それが常識だ。

 シオンは治療を終えるとそのまま記憶の保管庫をあとにする。アスターもその手のひらのなかでゆっくり体を休めていた。

「夢は記憶を思い出すのに一番近いと言われる手段です。それを見れたということは、近いうちに思い出すかもしれませんね。」

 シオンがそういうと、アスターは静かに言う。

「キュラさんも言ってたね、そんなこと。」

「そうですね。」

 二人で廊下を歩いていく。その先に仲間がいると信じながら、二人は歩みを進めた。

告知通り明日から一旦投稿をお休みします!

4月1日までは、これまでの話を振り返ってくださると助かります!

ただ、時間があったら修正はしていると思うので完全に離れるというわけではありません!

ここまでの感想とか書いてくださればめちゃめちゃうれしいです。


というわけで3月の投稿はここまで!4月1日にまたお会いしましょう!

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