第118話 一文、増える
昨日3話投稿予定が
予約が出来ていませんでした。
本日6話投稿します。
朝。
ギルドの扉は、
昨日と同じ時間に開いていた。
だが――
中の空気が、
わずかに違う。
掲示板の前に、
人が多い。
銀貨の段ではない。
下段だ。
(……外縁)
近づく。
札の内容は、
似ている。
確認。
見回り。
補助。
だが――
文が、一行増えていた。
※単独行動を推奨
※異変を感じた場合は即時離脱
(……入ったな)
“注意”が、
正式な文言になっている。
危険度は、
まだ上げていない。
だが――
無視できない変化だ。
同年代の子が、
札を見て眉をひそめる。
「……前、こんなの無かったよな」
「……だな」
隣の年上が、
肩をすくめる。
「だから銅貨のままなんだろ」
「嫌なら取らなきゃいい」
正しい。
正しいが――
それだけじゃない。
トアは、
札を読む。
距離。
時間。
人目。
そして――
増えた一文。
(……離脱)
“逃げろ”ではない。
“戻れ”だ。
一枚、
剥がす。
昨日と同じ外縁。
確認箇所は、
三か所。
受付に出す。
女は、
札を見て、
一拍置いた。
「……書いてある通りでいい」
「無理だと思ったら、戻る」
昨日までと、
同じ言葉。
だが――
重みが違う。
(……共有された)
ギルド全体で。
外。
町外縁。
今日は、
人が少ない。
農作業の時間。
荷車は、
別の道を使っている。
(……選ばれた時間帯だ)
一か所目。
異常なし。
二か所目。
足跡。
小さい。
新しい。
(……昨日より、
近い)
深追いは、
しない。
印を、
一つ。
三か所目。
水路沿い。
倒れた桶。
昨日より、
数が増えている。
割れていない。
だが――
水は減っている。
(……喉を潤すだけ)
まだ、
“狩り”じゃない。
ここで――
一瞬、迷う。
(……探すか?)
出来る。
倒せる。
昨日より、
余裕もある。
だが――
一文が浮かぶ。
※即時離脱
(……違う)
今は、
“ここまで”だ。
印を置く。
三つ。
戻る。
昼過ぎ。
ギルド。
報告書を書く。
「活動範囲、拡大傾向」
「生活水源への接近あり」
受付は、
無言で読んだ。
帳面に、
線が増える。
一本。
また一本。
(……次だな)
外へ出る。
昼の町。
同年代の子が、
札を取らずに立ち尽くしている。
声をかけない。
理由も、
資格もない。
だが――
一瞬だけ、
目が合う。
互いに、
何も言わない。
夜。
寝床。
木札の横に、
報告書の写し。
文は、
短い。
だが――
確実に、
積み上がっている。
ローディス王国領の町、
オーレム。
外縁の札は、
まだ銅貨だ。
だが――
文が増えた。
それは、
危険が増したからじゃない。
“判断する人間”が、
必要になったからだ。
そして――
次に増えるのは、
文じゃない。
“同行”という選択肢だ。
それが誰に向けられるかを、
ギルドはもう、
考え始めている。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
小さな選択の積み重ねを意識して書いています。
何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。




