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第112話 次の札


朝。


ギルドの扉は、

もう開いていた。


昨日より、

少し早い。


理由は、

自分でも分かっている。


(……似た札)


昨日、

かけられた言葉。


「次も、似た札が出る」


約束じゃない。

保証でもない。


ただの、

事実の共有。


掲示板の前に立つ。


上段。

銀貨。

今日は見ない。


下段。


距離。

期限。

人目。


――あった。


「町外縁・確認」

「半日」

「銅貨五」


条件は変わらない。


奥へ行かない。

触らない。

戻る。


トアは、

迷わず紙を剥がした。


周囲の視線を、

感じる。


「……あの子、また外縁か」


「危なくないのか?」


声は、

ひそひそと。


(……慣れた)


受付に出す。


確認。


受付の女は、

紙を一度見て、

顔を上げトアを見る。


「……分かってるわね」

「昨日と同じでいい」


それだけ。


「......はい」


ギルドを出る。


朝の空気。


町外縁へは、

同じ道。


だが――

足取りは違う。


(……焦らない)


昨日の一言。


今の判断を支えている。


道端の石。

草の向き。

人の流れ。


“何も起きていない”ことを、

確かめながら進む。


印の場所。


昨日と同じ。


変化なし。


それを、

確かめる。


記す。


戻る。


昼過ぎ。


ギルド。


報告書を出す。


確認。


「完了」


銅貨五枚。


受け取る。


その時。


視線。


顔を上げると、

昨日の女冒険者が、

入口近くに立っていた。


今日は、

何も言わない。


目が合う。


一瞬。


それで、

終わり。


(……十分だ)


外へ出る。


昼過ぎの町。


昨日より、

少しだけ、

歩きやすい。


ローディス王国領の町、

オーレム。


少年は、

同じ札を選んだ。


だが――

同じ理由ではなかった。


選び続けることが、

見られている。


それを知った上で、

今日も選んだ。


それが、

次へ進むための、

唯一のやり方だった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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