第二十七話「異世界の台所事情!?」
はじめまして、宵月の兎です。
この作品を読んでくださってありがとうございます。
楽しんでいただけますと幸いです。
ゆっくり更新ですが最後まで頑張ります。
「あ、気がついたみたいです! 』
マリーが、カイルの端正な顔を覗き込みながら言った。
「――ぬぉお!! ま、マリー嬢!? はっ? な、どどど、どうしました!?」
途端、カイルが奇声を上げながらガバッ!っと飛び起きた。
まぁ……美しいマリーが超至近距離にいたのだから当然の反応ではあるのだが、こちらとしては『いやあなたこそ、急にキャラ崩壊してどうした!? 』状態である。
それでも心優しいマリーは、心配そうに背中を支え「お怪我はございませんか? 」と声を掛けながら落ち着かせるように背中を擦ってあげていた。
「カイル、あなた急に気を失ったのよ。 覚えていて?」
「え? お、俺…いや、わたしが?」
「カイル様、覚えていないのですか?」
心配そうに顔を覗き込むマリーに赤くなったり青くなったり、目を白黒させたりしながらカイルは言った。
「……そもそも、わたしはなぜここに?」
「「えっ!?」」
(――もしかして……記憶、なくなってる?)
「そ、それはお嬢様が――」
「わたくしがあなたをお茶にお誘いしたのよカイル。 マリーお手製のリラックス効果のあるハーブティーが効きすぎたのではなくって? 今日は早めに休んだほうがいいわ、きっと疲れているのよ。」
真実を説明しようとしたマリーを遮って、少しぼやかした真実を伝えた。
カイルは面食らった様子で私の顔をまじまじ見つめてから慌てて目を逸らし、サッと起き上がると佇まいを整えてから言った。
「お茶の席に招待された身で、居眠りなどしてしまいましたご無礼をどうかお許し下さい。 お嬢様のご指摘通り疲れていたのかもしれません。 一度御前を失礼致します」
カイルはマリーにも丁寧に礼をして談話室を後にした。
「マリー、カイルのあれって何だったのかしらね?」
マリーは右手を頬に当て、首を傾げながら眉根を寄せた。
「理由はわかりませんが、結果オーライなのではございませんか? カイル様は他の者とは違ってお優しく、わたくしたちにも心配りをして下さる方ではございますが、やはり公爵家所属の騎士ですので……お嬢様の能力はできるだけ秘匿しておくのがよろしいかと存じます」
そう言うマリーと頷き合ってから、かなり体調も戻っていたので大きな木桶で湯浴みをさせてもらった。
(それにしても……)
「さっきのあの声ってやっぱり……」
「え? お嬢様、何かおっしゃいましたか?」
「あ、えっと……このお湯、すごくいい香りだなぁって! 」
思わず口をついて出てしまった呟きを誤魔化すように言った私に、マリーは得意気に胸を張って応えてくれる。
「本日は、リフレッシュ効果のあるミントとカモミール、ラベンダーをブレンドしたポプリをお湯に入れてみました。 気に入っていただけてよかったです 」
ほんのり優しいハーブの香りに癒されて、私は一旦思考を放棄したのっだった。
◇◇◇◇◇
身体が芯から暖まってぽわぽわとした幸福感に包まれていた私は、あれよあれよという間にマリーによって湯から上げられ身体を拭かれ、柔らかい生成りのワンピースを着せられていた。
ゴチャゴチャと考えても分からないものは分からないのだと結論付けた私は、本日最大のお楽しみイベントに集中しようと気合を入れた。
晩御飯の支度である!
なぜか私は昔から、お料理に集中すると頭の中がすっきりして思いがけないひらめきが降りてきたりすることがあるのだ。
それに今日は、食事の時にマリーに話しておきたい大切な話もあったので、ご馳走を作りたいと思う。
「さぁマリー、楽しいお料理の時間よ!」
まずは調理場に行き、本日の食材を確認する。
トマトにじゃがいも、かぼちゃにキャベツと野菜は非常に充実している。
「バターに小麦粉……あら、鶏肉もあるのね! 今夜はわたくしとマリーでパーティーをしましょ! お料理、期待していてちょうだいね」
「お、お嬢様がお料理を!? それは構いませんが……危ないことはこのマリーにお任せくださいね」
まさか七歳の私が手ずから料理をするとは全く思っていなかったようで、マリーは慌てて子供用のエプロンを用意してくれた。
「ではまず、この立派なカボチャをどうにか適当な大きさに切りたいのだけれど、お願いできるかしら?」
マリーに固いカボチャの解体を任せて、私は小麦粉とバター・牛乳を使ってコンロで手早くホワイトソースを作った。
この世界のコンロはいわゆる『魔導コンロ』と呼ばれる魔道具で、黒っぽい大理石のような天板に、直接炎を操る魔法陣が3ヶ所刻まれている。
それぞれの魔法陣の手前にある小さな魔石に魔力を流すと火が点き、つまんで回すと火力を調整できるという仕組みで、前世のガスコンロ感覚で使えそうなのがすごく嬉しい。
小鍋いっぱいのホワイトソースを火から降ろしながらマリーを伺い見ると、まだカボチャと格闘していた。
これ幸いと、私は鶏のもも肉に塩を振りガーリックっぽい根菜をスライスしていく。
フライパンにオリーブオイルっぽい油を多めに入れてローズマリーとスライスしたガーリックを入れ、ゆっくり炒めて香りを出す。
いい香りがして来たら取り出して、もも肉を弱めの中火で皮目からしっかり焼いていく。
火を入れすぎると硬くなるので、余熱で中まで火を通すのがコツだ。
(えーと、チキンソテーに合うソース……あ、あれなら出来るかも!)
フライパンに残った肉汁にバターとレモンを加えて乳化させ、少し塩を足して味を調えたら、メイン料理はほぼ完成だ。
「お嬢様、かぼちゃが茹で上がりましたよ」
「ありがとう! 軽くつぶして、このカリカリベーコンチップとバター、炒って砕いた胡桃を混ぜてこのお皿に入れてちょうだい」
マリーがカボチャを深皿に入れてくれたので、先ほど作ったホワイトソースと削ったチーズををたっぷりとかけてオーブンへ。
チーズが焦げるいい匂いが漂ってくると、私のお腹が『ぐぅ~っ』と鳴った。
「ふふっ、お腹がすいてきましたね。 こちらはもうすぐ焼き上がりますよ」
マリーがくすくす笑いながらオーブンの様子を見てくれている隙に、女子会にはどうしても外せないデザートとして、私の大好物であるアレをコソコソと用意した。
そしていよいよ—―
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。少しずつ物語が動き始めます。
次話もお付き合いいただけたら嬉しいです。
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