第二十三話「衣食住の……住?」
はじめまして、宵月の兎です。
この作品を読んでくださってありがとうございます。
楽しんでいただけますと幸いです。
ゆっくり更新ですが最後まで頑張ります。
「えっと--今とりあえずやりたいのは、この塔周辺に結界を張って『幻惑』のスキルで目隠しが出来るのではないかと思っているの。 少し見ててくれる?」
私はゴーレム一号を呼び、たまたま近くにあった大きな切り株の上に立たせた。
呼ばれるがままに、一号はぽてぽてと歩いてきて”よっこいしょ”といった様子で切り株によじ登ってくれた。
うむ、可愛いが大渋滞である。
「では、このゴーレム一号を私たちの住む塔と見立てて試してみるわね」
私がイメージに集中している一方で、隣に立っているマリーはこれから一体何が始まるのだろうという、不安とちょっぴりの好奇心がない混ぜになった表情で、じっと私をを見つめてくる。
「マリーったら、そんなに怖い顔をしなくても大丈夫よ」
心配してくれることが嬉しくてくすぐったい気持ちと、だからと言って冒険心を止められない自分に対しての自嘲で思わず苦笑いが漏れる。
心配性な侍女の顔を笑顔で覗き込みながら、彼女の腕をポンポンする。
少しでも安心させられるように、少しイメージの共有をしてみた。
「完成のイメージは、う~ん……まぁ、大雑把に言うとシャボン玉のような薄い膜ですっぽりとゴーレム一号の周囲を覆って、その膜に周囲の景色と同化する『ミラーリング』の効果を持たせたいと思っているの」
(――お、なんか言葉に出したことで自分的にもイメージが固定化されたっぽいよ!)
説明しつつ興奮してきてしまった私だが、肝心のマリーはポカンとした表情で固まっている。
まぁ、百聞は一見に如かずという事で……私は誰ともなく「いくわね!」と声を掛けイメージを維持しながら一号にむけて両手をかざす。
すると、切り株を中心に半径1メートルの地面に、ぼわんと黄金の魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣は、私の手の動きに合わせて地面からスーッと虹色の膜を張りながらがせり上がりはじめる。
完全にバンザイ状態まで両手をあげた私は、だいたい一号の頭上1メートルくらいかな?という所でオーケストラの指揮者の様に両手を頭の上でグッ!と握る。
すると、シャボンの膜が『ぽよよん』と揺れながら閉じて、イメージ通りの半円形のドームが完成した。
「できた!」
満面の笑顔でマリーを見上げると、完全ポカン顔でフリーズしていた。
――ありゃ?
少し刺激が強かったかな?と思いつつ、でもいい加減慣れてもらわないと先に進めないのでマリーが完全に処理落ちする前に、結界としての有用性を確認してもらうべく「ねぇ、マリー? おーい!」と呼びかけながら、私は両手を振ってぴょんぴょん跳ねた。
彼女はスラリと背が高いので、私の場合ジャンプしないと視界に入らないのだ。
ややあって、ようやくマリーが『ハッ!』と我に返った。 そして、表情を整えてから『コホン』と咳払いをひとつこぼす。
「大変失礼いたしました。 それにしてもお嬢様、これは…? 」
マリーは不思議そうに言いながら、目の前の虹色の膜のような結界に右手を恐る恐る沿わせそっと触れている。
膜に触れた感覚があったのか、少し内側に押すとシャボン玉がぐにょんと手の形に沈み込み、手を引っ込めると『ぽよん』と元に戻る。
「……すごい」
呆然とした彼女の口からこぼれた感嘆の言葉に気をよくした私は、マリーをもっと驚かせたくてさらにもう一段階ギアをあげていく。
「まだまだこれだけじゃないわよ? 見ていて! 」
私は仕上げとばかりに幻惑スキルを発動して、シャボンの膜にミラーリング効果を付与しする。
部外者が近づくと『そうだ、◯◯をしよう!』と、別の場所に行きたくなるよう思考を誘導する効果を魔法陣に組み込んだのだ。
「うまくいったのではないかしら?」
それもそのはず、さっきまで切り株に立ってこちらに手を振っていたゴーレムが完全に見えなくなっていた。
「二号! 先程まで一号がいたあたりに向かってゆっくり進みなさい」
二号に命令すると、言われた通りゆっくりと動き出す。
ぽて、ぽてっと一歩ずつ、先ほど1号が立っていた切り株のあたりまで近づいていく。
手前まで行くと一瞬ぴくりとして立ち止まり、次の瞬間にはスーッと道をそれて、見当違いの所にしばらく歩いて行った。
そうして、ある程度進んでから『あれ?』と言った具合に立ち止まって、キョロキョロしはじめた。
「完璧だわ! マリー、これでこの塔一帯を本邸の者たちから見えない様にできそうよ! 」
腰に手を当て、『エッヘン』と胸を張ると、マリーは面食らったように目を真ん丸に見開いてから、急に体をくの字に曲げて「ふふふっ」と声を出して笑い出した。
「もう、お嬢様は規格外すぎて……わたくしの頭で理解するのは不可能だということが存分に分かりましたわ」
笑いすぎて目じりにうかんだ涙を指先で押さえながら、マリーはまだお腹を押さえて笑っていた。
「もしお身体に負担がなく可能でしたら、お嬢様の安全の為にもぜひお願い致します」
(ーーいよっしゃーーっ!)
心の中では全力シャウトからの全力のガッツポーズを大連発している私だが、
「ありがとうマリー!」と笑顔で淑女らしくお返事ができた私はまじですごいと思う
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。少しずつ物語が動き始めます。
次話もお付き合いいただけたら嬉しいです。
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