第二十二話 「たのしいは正義Ⅱ」
はじめまして、宵月の兎です。
この作品を読んでくださってありがとうございます。
楽しんでいただけますと幸いです。
ゆっくり更新ですが最後まで頑張ります。
ゴーレムが持ってきてくれた苗の中には、トマトやカボチャ、ブロッコリーらしき苗の他にインゲンや細い小葱のような苗もあった。
「じゃがいもとインゲンは相性ばっちりよ! トマトにはバジル、カボチャにはこの小ネギでいいわね。 土の状態が解らないけど、苗が手に入ればマリーゴールドも植えてもいいかもしれないわ、オレンジ色で可愛いし! 」
そのとき、ゴーレム一号がスカートの裾をツンツンと引っ張ってきた。 どうしたのかと思ったら、なんと! 右手がナイフ、左手が剪定ハサミになっているではないか!
「まぁ、なんてこと! あなたたちって本当に最高よ! 」
一号のころんとした頭ををヨシヨシとひとしきり撫でまわして満足した私は、一号に種芋を半分に切ってもらい、苗をペアごとにまとめ直して準備万端だ。
『いっくぞぉ~』と言いながら畑に向かう少女と二体のゴーレムが足を踏み入れる寸前、浮かれ切った私に突然ーー
「お嬢様! 令嬢は畑仕事など致しません! それに、こんな開けた場所でゴーレムを堂々と…って、そのゴーレムの手は刃物ではありませんか! どうかおやめください! 」
いつの間にか意識を取り戻したマリーからの、特大の愛の雷が轟いた。
私の能力の一端を知ってすっかり処理落ちしていたマリーだったが、一体どこから見ていたのか、息を吹き返したように仁王立ちで怒っている。
(――チッ、ばれちゃったか。)
やる気がみなぎっている私はこの勢いを止めたくはないのだが、私を心配して怒ってくれているマリーの気持ちを察し、きちんと淑女らしく交渉することに決めた。
「ごめんなさいマリー、お散歩が楽しくてつい暴走しすぎてしまったわ。 でもね、私この野菜をマリーの畑にどうしても植えてみたいの。 マリーと一緒に美味しいお料理をお腹いっぱい食べたいんだもの」
私は胸の前で両手を組んで、精一杯マリーにお願いする。
「それに、私が直接作業するのがいけないと言うなら、このゴーレムたちに指示をするだけにするわ! お願いよマリー、どうしても試してみたいの!」
祈るような気持ちでマリーの返事を待つ。 ゴーレムたちも私の半歩後ろで同じく祈りのポーズっぽい事をしている。
「お嬢様、先ほども申しましたが、このように開けた場所では人の目につきやすく危険でございます。 屋外で無暗やたらと魔術やスキルを使ってはいけません! 」
畳み掛けるようにお小言が止まらないマリーだったが、言い終えると疲れたように眉間を押さえ、「ーーですが……」と言いながら深く息を吐き出して、苦い笑顔を見せてくれた。
「もう……そのように悲しそうにされますと、なんでも許してしまいそうになるではございませんか。 わたくしが生まれた地域では、子どもが魔術を使えるようになった場合、家族で盛大に祝う習わしがあるのですよ」
マリーは困ったような笑顔で『今日はお祝いですね』と、優しく手を握りながら言ってくれた。
「しかし…お嬢様がどれだけ『特別』だとしても、初めてのゴーレムがこのように従順で意思疎通がスムーズに行えるなど…今まで見たことも聞いたこともございませんよ? 」
『え、そうなの?』と目線で訴える私に呆れながらも、マリーはたくさん褒めてくれたし、ゴーレム達に手伝ってもらいながら農作業をする許可もくれた――
でも……
「この塔の周辺は、基本的にはわたくしと護衛騎士のカイル様しか出入りはございませんが、いつどこで誰が見ているか分かりません。 お嬢様の能力は、公爵ご一家はもちろんですが、本邸の使用人の中には貴族家出身の者もたくさんおりますので、絶対に知られてはなりません。 そもそも、この塔にお嬢様が存在している事すら、限られた者にしか知られてはならないのです。 今のままでは、お嬢様の身が危険です」
どうやら、この塔には『呪い』が封印されているので近付かないようにとお達しがされているのだそうだ。 もちろんその『呪い』とはジア(私)のことなのだが……。
「なるほど。 では、私少し試してみたいことがあるのだけれど、いいかしら?」
『いかしら?』と確認しているそばから、私の脳内では既に〝あれ〟のイメージは固まっているので、マリーの許可待ちだ。
「まず、一体なにをするおつもりなのか、先にお教えいただけますか?」
(――うん、こりゃ完全に警戒されてるね)
マリーをここで説得しなければ、これからの異世界スローライフに支障が出るので、デモンストレーションをすることにした。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。少しずつ物語が動き始めます。
次話もお付き合いいただけたら嬉しいです。
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