第二十一話 「たのしいは正義」
はじめまして、宵月の兎です。
この作品を読んでくださってありがとうございます。
楽しんでいただけますと幸いです。
ゆっくり更新ですが最後まで頑張ります。
改めて畑と向き合うことにした私は、なんとなく頭の中で描いていた育成プランを実行すべく、改めて過去の記憶を探った。
「えーっと、あれ? 確かじゃがいものコンパニオンプランツは豆科だったかしら?」
コンパニオンプランツとは、相性のいい作物同士を近くに植え合わせると、無農薬でも病虫害に遭いにくく、美味しく良く育つようになる栽培方法である。
(うぅむ……前世の記憶だと大雑把にしか思い出せないなぁ。 こんなときこそ、『星屑の叡智』にコンパニオンプランツのこと、詳しく聞いてみようかな?)
食料の確保は急務だし、これからのことも考えるとやる事が多すぎる。
私は、自力で前世の記憶を掘り下げるのをポイっと放棄して、サクッと近道をしようと思い直した。
「星屑の叡智さま……」目を瞑って、拝むように手のひらを合わせながら『美味しい野菜の育て方が知りたい!』と強く願うと、突然ブワっと体中の熱がうごめいた。
驚きでカッと目を見開いた私の頭の中に、一気に膨大な知識が溢れ出した。
そのあまりの情報量の多さに、目の前がチカチカしだすほど--
(--あ、これはやばいかも! 銀河がみえるわ……じゃなくって、前世でちょっと齧っただけの知識のはずなのに、私……すぐにでも達人級のファーマーになれそう!)
『星屑の叡智』のスキルがどんなものなのか、なんとなくでしか理解できていなかった私だが、わかってしまった。
(これ、超ハイスペックな情報プラットフォーム……みたいな?)
『美味しい野菜の育て方』と漠然としたテーマで検索をかけた結果、前世で私が体験したり見聞きした知識、ネットやSNSで流し読みした情報、転生前のジアがコツコツ読んでいたこの世界の古文書や魔導書の内容をも網羅しており、とにかく調べたいことを思い描くだけで、自動的に最適解を導き出してくれる。
前世と違うのは、検索するには自分の魔力を消費しなければならず、今の様に調べたい事柄がざっくりとしていると、雑多な関連情報が際限なく垂れ流し状態になってしまい、そのぶん大量の魔力を消費してしまうということ。
言わば、前世でいう所の『ギガ使い放題』のような状態といえば想像しやすいだろうか?
そうなると、一般人はあっという間に魔力が枯渇してしまうだろう。
つまり、このスキルを使いこなせるのは私みたいな規格外の魔力持ちのみであり、かなりレアな力技スキルということだ。
私は、一旦考えることを放棄することにしたのだが……時すでに遅しで頭の中が知識でパンッパンな状態になり、ふわふわした感覚で指示を出す。
「ゴーレム一号二号ぉ~! そこのジャガイモをその山から半分くらいと、野菜の苗も篭にまとめて一緒にもってきてちょうだい」
ゴーレム達は、マリーが持ってきてくれた篭に指示通りの苗や種芋、小さいスコップやクワを持って、ぽてぽてと小走りで戻ってきた。
「ありがとう! あっ、種芋は半分に切らないといけなかったわ……! ナイフは厨房かしら? う~ん、スコップでいけるかしらね? 」
私は腕まくりをしてしゃがみ込み、ゴーレム達が持ってきた苗の状態を一つ一つ確かめながらあれこれ思考を巡らす。
(--なんかコレ、めちゃくちゃ楽しいんだけど!!)
前世で農作業は色々と経験していたが、別に自主的にやっていたのではなく、あくまでも農家の長女としてお手伝いをしている感覚だった。
よって、主体性もなく『日焼けしちゃう』とか『面倒くさい』とか、それなりに子供らしく思いつつも、両親に褒められたくて頑張っていた。
でも、今は全然違う!
自分がマリーに美味しいお料理やお菓子をたくさん作ってあげたいと思うだけで、なぜこんなにも心が弾むのだろうか。
中身は十八歳でも、時々やはり七歳児の好奇心が顔を出し、子供っぽいメンタルになってしまう。
肉体の年齢に精神が引っ張られているのだろうと頭ではわかっているのだ。
それでもやっぱり、好奇心に突き動かされウキウキとした気持ちのままに行動する自分を押さえることが出来ないのは、前世の自分の幼少期があまり楽しくなかった反動なのかもしれない。
もしくは、これが本来の自分なのだろうか?
(――ふふ、この私が『笑わない子供』だったなんて、誰も信じないだろうな)
ジアとも約束したのだから、私だって絶対に幸せになってやるんだと改めて自分に宣言しておこう。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。少しずつ物語が動き始めます。
次話もお付き合いいただけたら嬉しいです。
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