表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/98

外伝 Ⅺ ある妹亜屍族の即死魔法➀

来月9日発売される「「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる」単行本12巻の発売を記念して、外伝Ⅺをお送りします。


本格的な連載は6月末からとなりますが、

本日は予告編的なお話になります。


いつものヤツらは出てきませんが、

外伝らしい癖のある魔族3人娘の活躍をお楽しみください。



 世も末――とは言うけれど、意外と生きてみると驚きに満ちあふれている。



 今から数年前……。

 人類と魔族はとある採掘場利権をきっかけにして争っていた。


 人類からすれば、魔族は魔界からやってきた新参者。

 魔族は大きなツラをして領土を寄越せと言ってきた侵犯者。


 争い合うのは火を見るより明らかで、どちらかといえば魔族のほうが、分が悪かったように思える。


 それがあれよあれよ、と仲直りを果たし、採掘場の利権も共同で管理・出資するという――信じられないほど平和的な結末を迎えてしまった。


 ただ――土手の石を捲って団子虫を丸めていじめていたほどには幼かった私からすれば、正直どうでもいいことだった。


 しかし、大人になるに連れ、魔族の社会が急激に変わるのを目にしながら、私は新しい社会というものに順応していった。言わば、静かな洗脳を受けた私が、人類社会とはどんなところだろうという興味を持つようになったのは、自然な流れだったかもしれない。


「世も末よね~」


 ちっとも末世を感じないイントネーションで言ったのは、サキュバス族のルーディーだった。


 パーマのかかった豊かな金髪に、褐色の肌。

 魅惑的な赤い瞳の周りには、自称ガングロ(?)メイクを施し、今もコンパクトを開けて、完璧に武装された化粧を直している。


 学校でクラス同じだったことで意気投合し、今ではお互いに親友といえるぐらいには仲がいいのだけど、正直自分でもルーディーの何が決め手となって、こうなったかは、よくわからない。


 サキュバス族は往々にして陽キャで、そして胸が大きい。

 あまりこういうのも種族差別と言われるかもしれないけど、はっきり言って知性の欠片も感じない女だ。


 対して私はノーマルから、少し陰キャよりの魔族だ。

 当たり前だがルーディーほど社交性もないし、積極的か消極的かと問われれば、やや消極的な性格だろう。

 それなりに真面目で大人をほどほどに困らせない性格――といえば、イメージがつくだろうか。おかげで、波風のない人生を送ってこれたと自負している。


 もうなんとなくわかっただろう。


 ルーディーと私は性格が全く違う。真反対といっていい。

 なのに、初等学校で奇跡的に40年間同じクラスだったというだけで、私たちは無二の親友になっていた。


 まったく世も末である。


「ねぇ。ルーディー」


「なによ、カプコっち」


 私はルーディーのことを名前で呼び捨てにするのだが、ルーディーは私を「カプコっち」と呼ぶ。もう呼び方からして、互いの性格が出ているわけだけど、40年近く言われていると、もうすっかり耳が慣れてしまった。


 ちなみに私の名前は「カプリコ」である。


「なんで交換留学の件、受けたの?」


「またその質問? だから面白そうじゃん。だって、向こうには人間の男がわんさかいるんでしょ? サキュバス族にとって、天国以外でもなにものでもないわ。向こうについたら、とりあえずクラスの男子と全員とやって、全員穴きょ――――もごごごご」


「ルーディー、あなたのことは嫌いじゃないけど、そういう発言はもうちょっと人のいないところでやってほしいわ」


 私はルーディーの口を塞ぐと、「そうだ」と言わんばかりに馬車が轍の石を踏み、ガタッと一瞬震えた。


 今、私たちが乗っているのは、王都へ向かう乗り合い馬車だ。

 乗っている人数は少ないが、中には子どもがいて、大人が必死にその耳を塞いでいた。


 ルーディーは「参った」とばかりに私の腕をタップする。

 私は目でルーディーを諫めてから、ソッと手を離した。


「もう相変わらずの馬鹿力ね、亜屍族は!」


「人前で節操のない発言するルーディーが悪いの。ここはサキュバスの家でも、学校の女子更衣室でもないのよ」


 冷たくあしらうと、ルーディーは「ブー」と頬を膨らませる。


「じゃあ、カプコっちは? やっぱりお兄ちゃんに頼まれたから?」


〝兄〟と聞いて、一瞬自分の頭が茹で上がるのを感じた。


 私が怒っているの察したのか、ルーディーはそそくさを話を切り上げる。


 魔族圏の生徒と、人類圏の生徒を交換留学させようという計画が立ったのは、魔族と人類の和平から5年後のことだった。


 お互いの文化や生活を知るための文化的交流の一環として計画されたそうだが、その人材の選定には時間がかかったらしい。


 応募者はそれになりにいたようだが、問題はその魔族が人類圏へ行って問題を起こさないかどうか、あるいはそうした背景がないかを確認するのに膨大な時間が必要であったことらしい。


 結局、適当な人材が見当たらず、7徹し、思考能力が低下した頭で担当者が決めたのは、身内に参加してもらうということだった。


 そうして、その担当者の妹である私が選ばれ、それがルーディーの耳に入ると、「あーしも行く!」と自ら手を上げたのである。


 そしてもう1人。

 ルーディー以上の腐れ縁で、幼馴染みも交換留学についてくることになった。


「ガーコ、もう少しで王都につくよ」


 私は背筋を伸ばし座って、寝ているのか寝ていないのかわからない黒髪おかっぱの少女に声をかけた。


 亜屍族以上に青白い身体。

 左の額から左耳にかけて手術をしたような縫い痕を、大きな黒縁眼鏡で隠している。その眼鏡の奥には、鋭い三白眼がパチッと開いていた。


 フランケン族のガーコとは、近所も一緒だったこともあり、家族ぐるみの付き合いしてきた。


 といっても、ガーコは私以上に寡黙で、何を考えているかわからない。

 それでも見た目の異質さとは違って、優しく、芯の通った彼女を嫌う理由などなく、気が付けば私の相棒というポジションに座っていた。


 交換留学の話があって、私が受けようといったとき、真っ先についていくと言ったのはガーコだ。


 それ以上、何も言わなかったけど、少し嬉しかったのを覚えている。


「ふが……」


「ガーコ、ずっと寝てたの? 口がずっと開いてたよ」


 ルーディーがケラケラと笑う。


 ガーコは少し恥ずかしそうに目をパチパチと動かしていた。


「あ。見て見て。お城が見えるわ。キャハハハ! マジで白亜の城じゃない」


 ケタケタと笑いながら、前方を指差す。

 私とガーコが覗き込むと、黒い魔王城と正対するような真っ白なお城が見えた。


「あれがカンタベリア王国王都……」


 こうして我々――3人の魔族は、人類圏第3位の国カンタベリア王国に到着したのだった。


本日、ニコニコ漫画にて最新話更新されました。


7月9日発売の単行本12巻も合わせて、どうぞよろしくお願いします。

ちなみに楽天ブックスではご予約はじまってます。なにとぞ!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ12巻 7月9日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる12』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


5月7発売発売! オリジナル漫画原作『異世界で鍛冶神の力を得た俺、女神とスローライフはじめました。』単行本1巻発売!
女神と一緒に異世界町工場スローライフ!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス11巻 5月15日発売!
100万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シーモア様にて3巻発売!
↓※タイトルをクリックすると、シーモア公式に飛びます↓
『宮廷鍵師、【時間停止】と【分子分解】の能力を隠していたら追放される~封印していた魔王が暴れ出したみたいだけど、S級冒険者とダンジョン制覇するのでもう遅いです~』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




シリーズ大重版中! 第8巻が4月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本8巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


好評発売中! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本5巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



最新小説! グラストNOVELS様より第1巻が4月25日発売!
↓※表紙をクリックすると、公式に飛びます↓
『獣王陛下のちいさな料理番~役立たずと言われた第七王子、ギフト【料理】でもふもふたちと最強国家をつくりあげる~』書籍1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス第4巻2月24日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



今回も全編書き下ろしです。WEB版にはないユランとの出会いを追加
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』待望の第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


12月10日発売! 全編書き下ろしですよ~。
↓※タイトルをクリックすると、カドカワBOOKS公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる2』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

ヤングエースUPコミカライズ配信中!
『ゼロスキルの料理番2』

好評発売中です。最強の村人の成り上がり!
『劣等職の最強賢者~底辺の【村人】から余裕で世界最強~』


小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ