表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/85

外伝 Ⅹ 勇者と聖女~はじまりの物語~④

「シャロン、勇者の選定は進んでいるかい?」


 シャロンがブブガリヤ王国に来て、2週間が経っていた。

 その間、シャロンは3人の勇者候補たちの実力を知るため練武を見学し、食事をともにしたり、狩りにでかけたりもした。

 3人の実力は申し分ない。

 カンタベリア王国には、すでに数人の勇者がいるが、彼らと比較しても遜色はなかった。


 ただ若干性格に癖がある。選民意識が強すぎるように感じるが、それはブブガリヤ王国とカンタベリア王国の社会性の違いによるものだろう。ブブガリヤ王国にも、カンタベリア王国にも身分制というものは存在している。だが、後者は比較的緩い法体系になっているが、前者はそうではない。

 貴族にちょっと粗相をしただけで、指が飛ばされる――そんな社会だ。


 シャロンの目からすると残酷に見えるが、人類圏ではこれが当たり前で、カンタベリア王国がどちらかというとマイノリティなのである。


 そうした影響はシャロンには関係ないと思っていたが、そうでもなかった。


 井戸の件を境に、パフィミアとあまり会えなくなっていた。

 パフィミアが意図的に避けているのだ。

 どうやら、勇者候補たちから注意を受けたらしい。

 実際、シャロンも注意を受けた。


『あの獣人にはあまり近づかないように……』


 パフィミアはブブガリヤ王国に来て、初めて心を通じ合えた人だとシャロンは思った。何よりうちに秘めた覚悟は、シャロンがよく知る聖女の強さと似ている気がする。


 もっと話したいと思うが、おそらくこれ以上はパフィミアに迷惑がかかるだろう。


 シャロンは目でパフィミアがいないか確認したあと、アリエスに対して深々と頭を下げた。


「申し訳ありません。もう少しお時間をいただきたく存じます」


「勇者の選定が難しいことはわかってはいるよ。……でも、ゼロから見つけるのと、すでに候補がいるのとは違う。3人の中からもっとも優れている者を選べばいいだけだ。君の場合はね」


 シャロンは少しうんざりした気持ちになった。

 アニエスには感謝しているが、勇者候補を押し付けてきたのは、向こうである。

 その中に、シャロンが真に認める勇者がいるとは限らない。


(でも、同じ聖女であるアニエス様も重々承知していると思うのですけど)


「わかった。こうしよう」


 突然、アニエスは言った。


「西の森で、開拓中の農奴が数人殺された。まあ、農奴なんてどうでもいいのだけど、どうやら魔獣に殺されたみたいなんだ」


「魔獣にですか?」


「周辺に巣穴を調べたらあったよ、フロストファングのね」


 フロストファングという名前を聞いて周囲はどよめく。

 シャロンも詳しく知らないが、吹雪を操るという厄介な魔獣だと聞いている。

 確かランクは〝B〟のはず。油断はできない。それどころか強敵である。


「落ち着け!」


 一喝したのは、アニエスではない。

 レオハルトだ。


 立ち上がって、マントを翻すと、己を鼓舞するように声を張りあげた。


「フロストファングは厄介な魔獣だが、我々から見れば、さほど脅威ではない」


「レオハルトの言う通り、俺たちにとっては問題ない」


「そうね。3人が力を合わせれば――――でも、それを引き合いに出すということは何か他にもあるということですね、女王陛下」


 ミレイユだけではなく、謁見に同席していた勇者候補3人全員がアニエスのほうを向いた。


 アニエスは「ふふ」と口元を緩めたあと、答えた。


「その通りだよ、ミレイユ。君たちにはそのフロストファングを討伐してほしい。そしてシャロン……」


「は、はい」


「君も同行し、そして彼らの戦い振りを見て、誰が勇者にふさわしいか決めるんだ。いいね」


 アニエスに睨まれては、シャロンも反論できなかった。

 ここで下手に言葉を返して、カンタベリアとブブガリヤの関係性が悪化するようなことがあってはならない。


 釈然としなかったが、シャロンは頭を垂れるしかなかった。


「ああ。それと、あの獣人……」


「パフィミアのことですか?」


「そう。それ。その子も連れて行くといい」


「別にパフィミアなどいなくても」


 レオハルトは反論するが、アニエスには考えがあった。


「いくら君たちが強くとも、さすがにシャロンを守りながらじゃ荷が重いだろ。パフィミアを護衛につけるんだ。いざとなれば、肉壁になってでも守るように伝えなさい」


「なるほど。かしこまりました」


 3人の勇者候補たちは頭を下げる。


 こうしてシャロンは勇者候補とパフィミアとともに、フロストファングがいる巣穴へと向かうことになったのだった。


☆★☆★ 3月新刊 ☆★☆★


3月9日『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』単行本11巻が発売されます。


挿絵(By みてみん)


3月13日「おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました」5巻も発売されますので、こちらもよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ11巻好評発売中です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる11』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


好評発売中! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本5巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス9巻 5月15日発売!
70万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



最新小説! グラストNOVELS様より第1巻が4月25日発売!
↓※表紙をクリックすると、公式に飛びます↓
『獣王陛下のちいさな料理番~役立たずと言われた第七王子、ギフト【料理】でもふもふたちと最強国家をつくりあげる~』書籍1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シリーズ大重版中! 第4巻が4月18日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本4巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス第4巻2月24日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



今回も全編書き下ろしです。WEB版にはないユランとの出会いを追加
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』待望の第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


12月10日発売! 全編書き下ろしですよ~。
↓※タイトルをクリックすると、カドカワBOOKS公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる2』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

ヤングエースUPコミカライズ配信中!
『ゼロスキルの料理番2』

好評発売中です。最強の村人の成り上がり!
『劣等職の最強賢者~底辺の【村人】から余裕で世界最強~』


小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ