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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
決戦―魔王エビルサタン
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魔界の智将vs地上最強

「さてと、そんじゃ行くぞっと」



 グレンはそう言いきるのとほぼ同時に、不意打ち的にエビルサタンに向かって飛び出した。



 そして、エビルサタンに向けて拳を放ちながらオーラを拳に溜めていき、ちょうど当たる瞬間にオーラナックルになるように調整した。



 先ほどまでオーラも纏わず、普通に会話していたのに、いきなりの最強による超高速の全力先制攻撃、回避も防御も不可能である。




(もらった・・・

 魔法使い系の弱点は初撃だ。魔法使い系は初撃で殺す。これが鉄則)




 グレンの戦法は卑怯極まりないものだったが、この手は魔法使い相手に非常に有効。


 最強魔法使いであり、賢者でもあった賢王アイリス相手でも有効なのは実証済みである。





 アイリスとの模擬戦は、いつもグレンが不意打ちしたり、あの手この手でアイリスの気を散らしたり、その手が通用しなくなると、開戦までマナ変換禁止などのグレンに有利なルールをアイリスに課しつつ、マナ変換してる間に初撃を入れて初撃決着が常套手段だった。




 魔界の智将と地上最強の戦いは、一瞬で幕を下ろしそうに見えた。 







・・・・・・・・・・・・・・・・・・











 だが、エビルサタンはそれを読んでいた。





(魔法使いの最大の弱点は戦闘開始直後です・・・)




 実力がある者同士の戦いとなれば、初撃は魔法よりも物理攻撃の方が圧倒的に速く、強い。




 物理特化のグレンがやりそうなことはエビルサタンは相対したときから、相対する前から気付いていたのである。




 エビルサタンは、先ほどまでグレンと会話をしていたが、実は、会話しながらバレないようにマナを密かに魔力へと変換していた。



 会話は、その時間稼ぎだったのであった。

 



 エビルサタンはグレンと会話をしつつ、4つの魔法を待機させることに成功していた。





 不意打ち気味に向かってくるグレンに対して、エビルサタンは後の先をとるかのように、グレンの目の前で光の超絶補助魔法のスーパーフラッシュを使ってグレンの目を一瞬だけ奪った。



 グレンは目の前で強烈な光を受けて、本当にわずかな時間だけ目をつぶってしまい、視界を奪われるとともに、振り上げた拳とオーラの噴出をほんの一瞬だけ止めて無防備になってしまった。



 エビルサタンにはそのわずかな時間で十分であった。スーパーフラッシュと同時に、魔法二重行使(ダブルマジック)で、まだオーラが纏われていないその無防備な顔面に向けて闇の超絶補助魔法アルトラダウナーを喰らわせてグレンのステータスを大幅にダウンさせることに成功した。



 エビルサタンはグレンには普通の方法では魔法が効かないと予見していた。



 四天王ハ・デスはこの手のデバフ魔法を得意としているため、魔法の使えないグレンであれば好き放題ステータスを奪えるはずであるのに、あっさりと殺されてしまったことから、魔法耐性の技を持っていると予見していたのだ。




 しかし、そんな技を持ったグレンであったとしても無防備になってしまう瞬間がある。

 それが完全に予想外のタイミングで放たれた予想外の効果の魔法であるスーパーフラッシュである。


 超絶魔法であるスーパーフラッシュはただ相手に眩しい思いをさせるだけの魔法ではない。その者の脳裏に焼き付いた光景を一瞬だけ見せるという効果を付与した天才エビルサタンのオリジナル魔法。



 グレンが手を止めてしまったのも当然である。グレンの脳裏に焼き付いた光景といえば、グレンにとって最も見たくはないが、最も目を奪われてしまうアイリスの顔。


 それを突然見せられたグレンは一瞬でそれが偽物だとわかりはしたが、その一瞬だけは攻撃の手を止めてしまった。



 エビルサタンは、回避も不能、防御も不能なグレンの究極先制攻撃を、自ら中断させるという驚異の方法で凌いで見せた。



 グレンはこんな子供騙しの魔法に引っ掛かった自分に対して「チッ!」と舌打ちした。そして、少し鬱な気分になったところに畳みかけるように超絶魔法のアルトラダウナーである。



 あまりにも恐ろしいコンボであった。



 その上、エビルサタンの魔法はこれで終わりではない。エビルサタンはまだ2つ魔法を待機させていた。



 アルトラダウナーが効くと同時に2つの超絶攻撃魔法を行使し、結局、不意討ちに対して不意打ちの超絶魔法の四重行使(クアドラプル)をやってのけたのである。



 そうして続けざまに攻撃魔法、水の超絶魔法ペタ・ブリザープリズンと風の超絶魔法(スーパー)台風(タイフーン)衝撃波(ショックウェーブ)を発動し、無防備かつステータスダウンしたグレンに超台風の暴風を凝縮した衝撃波を叩きつけて遥か後方に吹き飛ばし、海をも凍らせる冷凍魔法で追い打ちをかけた。


 


 ペタ・ブリザープリズンにより海が一瞬で凍っていき、グレンは無数の真空刃を内包する暴風によって身体全体を激しく切り刻まれながら凍った海へと叩きつけられた。

 そして、真空刃によって切られた切り傷から超絶冷凍魔法が体内に入り込んでいき、グレンの体力を大幅に奪いつつ、身体全体を凍り付かせていく。



 グレンが普通の人間ならすでに2回は死んでいたであろう猛攻撃である。



 グレンは加護を全力解放し、天力気(オーラ)を集めて魔法の効果を軽減しようとした。



 だが、エビルサタンはすでに次の手を打ち始めていた。



 エビルサタンは魔属性魔法の暗黒魔闘気(ダークネス・オーラ)をグレンに被せたのである。



 暗黒魔闘気はグレンの天力気をどんどんと相殺していった。



 魔属性魔法・・・暗黒魔闘気



 魔属性の魔法は、かつての大戦時は大魔王のみが使える魔法だといわれていた。


 しかし、実はこれは、闇(月)属性魔法の最終到達地点の魔法であった。

 月属性(ダークルナ)を極めたその先には魔属性(ダークマナ)が存在していたのである。

 

 そんな魔属性をどうやってエビルサタンが修得したのか・・・


 それはエビルサタンの育ての親 兼 師匠であるダークデビルの十八番である闇魔法―闇魔気(ダーク・オーラ)を極めたその先がこの魔属性魔法―暗黒魔闘気(ダークネス・オーラ)だったからである。



 マナが復活してエビルサタンが最初に修得しようとしたのがこの暗黒魔闘気であった。



 オーラを使った戦い方については、マナが消失する前の頃からダークデビルから教えてもらっていた。

 

 そして、マナが消失し、消失してしまったからこそ、エビルサタンはそれでも闇魔気(ダーク・オーラ)を発現できないかとあれこれ試してその熟練度を上げていたのである。


 その上、エビルサタンにはマナが復活してからすぐに闇魔気の仕組みが理解できたため、その天才的(悪魔的)頭脳によってこれを改変し、暗黒魔闘気を発現させたのであった。



 それだけではない。エビルサタンは火魔気などの他の属性のオーラも発現させることにも成功した。



 そうしてオーラの原理と仕組みを理解したエビルサタンにはオーラの弱点もわかっていた。



 属性の異なるオーラを重ねられるとうまく力が出ないのだ。 

 


 さて、グレンが使うオーラの基となる力は魔法ではない。今までエビルサタンが発現させ修得したどのオーラとも異なるものであった。



 エビルサタンは、そのことから、グレンのオーラの原理をおそらくはマナによって作り出したものではなく、純粋な地上(アルス)の力を利用したオーラなのであろう、と予想した。



 エビルサタンにはグレンのオーラの正体は不明であったが、原理さえ予想がつけば十分であった。

 


 地上の力によって発現したのであれば、その地上の力の最も対極にあるのが魔界の力(魔属性魔力)である。



 グレンのオーラにはこれが効くと予想し、暗黒魔闘気をぶつけた。



 結果は先ほど述べたとおり、予想通りの大成功であった。



 今のグレンは超絶デバフによってステータスが大幅ダウンしているところに、暴風の刃によって身体中を切り刻まれ、冷凍魔法によってどんどんと体力を奪われ、暗黒魔闘気のせいで魔法を弾くこともできない状態となった。



 さすがのグレンもこの攻撃の前には動きを止めた。グレンに最大の隙が生じたときであった。


 

 エビルサタンはこの隙を見逃さず、光の究極魔法のアルテマ・レイを唱えはじめた。



 防御不能、全てを穿つ絶体絶命の破壊光線アルテマ・レイ



 マナを膨大な量の光魔法に変えていく――。



 初級魔法が1とすると、超絶魔法がその64倍、究極魔法はその256倍の攻撃力を有している。



 文字通り桁外れ。



 その分、消費マナも桁外れであり、マナを魔力に変換する時間も相当かかるのが普通である。



 しかし、エビルサタンはグレンが回復してくる前に詠唱(マナ変換)を終えた。


 

 想像を絶する破壊の化身アルテマ・レイがグレンへと突き刺さった。



 不老不死のグレンは命を消し飛ばすほどの一撃を受けても、体力は削られるものの死ぬことはない。



 しかし、痛みは感じないわけではないし、削られる体力もそれなりである。



 エビルサタンの魔法攻撃は、初撃の不意打ちに加えて恐ろしいほどにダメージ効率が計算し尽くされていることもあって、確実にグレンにダメージを与えていた。



 そこにこのアルテマ・レイである。



 さすがの地上最強もこの猛攻の前にはまいったなという気分にさせられた。



 グレンは無理に反撃することを諦め、ここはひたすら耐えて、エビルサタンの手が止まるのを待つことにした。最後の手段である自分の呪われた体質をフル活用する作戦、マナ切れ狙いに出たのである。



 というのも、ここまでやりながらもエビルサタンは一向に手を止めないからである。



 次々と超絶魔法を唱えていく。



 明らかにおかしなハイペースであった。


 

 エビルサタンのマナ保有量がいくら四天王などの高位魔族たちよりも多いとしても限界というものがあるはずである。



 このハイペースならいつかはマナ切れを起こすはずであった。



 

 では、エビルサタンはなぜその手を緩めないのか・・・



 それは、まずはここまでやってもグレンは倒せないこと、グレンの体力上限を推察すると、絶対的には大ダメージを与えていても、あのグレン相手では相対的にはまだまだ大きなダメージを負わせられていないことがエビルサタンには分かっていたためである。




 そしてその考えはものの見事に当たっていた。



 エビルサタンの猛攻は計算され尽くされていたため、グレンは全く身動きとれないほどであったが、グレンの膨大な体力全体からするとまだまだ小ダメージであった。 



 それもそのはず。グレンは先の大戦では今のエビルサタンよりも遥かに怪物といえる大魔王と戦って生き残った。



 大魔王は究極魔法をまるで呼吸をするかのように乱射してきた。そんな相手に比べれば、超絶魔法の嵐など、グレンにはとりあえずマナが尽きるまで待とうと思えるような可愛い猛攻だったのである。





 しかし、エビルサタンのこの猛攻はそれだけが理由ではなかった。






 エビルサタンはここまで猛攻しておきながら、





 その狙いはグレンを倒すことではなかったのである。



 エビルサタンの狙いはたった一つ。



 その狙いが間もなく成就するであろうことがエビルサタンの邪眼には映り込んでいた。

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