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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
第一次オストルン大戦【後半】
54/106

戦いの終結

 この日はマヤにとって人生最悪の日であった。


 

 両親を説得し続けること半年、ようやく許された海外旅行だった。


 

 両親は仕事で忙しいとかいろいろな理由で一緒には来られなかったが、代わりにマヤが小さい頃から忙しかった両親の代わりに育ててくれた育ての親のベアトリスが同伴してくれていた。



 朝はとても楽しかった。ベアトリスとホテルで美味しい朝食をいただき、綺麗な川の流れを感じながら楽しく出店を見て回る。息苦しい自分の国と比較してシドル王国は活気があった。



「ねえベアト!今度はあっち見よ!」



 ベアトリスの手を引っ張って歩いていたマヤだったが、ある時、突然ベアトリスの手から重みが感じられなくなったのだ。



 何事かと振り返ったところ、



 ――ベアトリスは狂魔のモンスターに引きちぎられ、食べられていた。



 あまりにも恐ろしい光景だったため、マヤは隠れるようにその場から逃げ出し、出店の影に隠れながら移動し、最後にたどり着いたのが、とある男の像が置かれているクインズ・ゴールド・ストリートの中心だった。その像にはこの日、様々な装飾が施されているおかげで子供であれば隠れられるスペースがあり、しかもこの男の像をなぜか魔物たちは避けていた。



 マヤがこの国に来たのも、その像のモデルとなった男を一目見たかったからであった。



 

 伝説の英雄―グレン・ゴールド



 彼のことを語った本は数知れない。



 マヤは勇者の伝記の中でも特にグレンの話が大好きだった。



 とても強くて、魔物も魔族もどんどん蹴散らしていくとても勇者らしい勇者のお話しが大好きだった。



 

 そんな憧れの大英雄は今もまだ生きていて、シドル王国に住んでいて、祭りの間はシドル王都にいるというのだから、一目見たくてずっと両親を説得していたのである。



 そして、ようやく許可が下りて、楽しい海外旅行が始まったと思ったらそこは地獄だったのである。



 マヤにとってベアトリスは、忙しくて中々会えない両親よりも長く一緒にいた相手であり、親も同然だった。



 そのベアトリスが突然いなくなってしまい、これは夢なんだと思ったものの、その手に握られた物体(手だったモノ)を見つめて現実と知らされた。 




 そして、近づいてくる恐ろしい魔族の気配を感じ、自分もベアトリスのようになったらと考えたら震えが止まらなくなった。




 死にたくない!


 助けて!


 グレン様!



 マヤは必死に願った。



 願った結果、奇跡のような救いが訪れた。



 そこからはマヤがスカッとするような一方的な展開だった。

 


 マヤはその光景に大興奮だった。

 


 現実(握られた手)を忘れて、目の前で愛するベアトリスを殺した相手が一方的にやられていく姿を涙を流しながら見つめていたのであった。



 魔物をあっという間に片付けたその英雄は、人々に広場から逃げるように指示をした。



 だが、マヤはその場に残った。ベアトリスがいなくなり、観光客(外国人)にすぎず、保護者のいないたったの10歳の子供にすぎないマヤにはどこにも行くあてがなかった。



 その上、マヤにとってその英雄の姿は目が離せなかった。



 ベアトリスを殺した魔族を絶対に許せない、幼いながらもそんな復讐心でいっぱいになっていたマヤには、目の前でそれが叶えられていくこの場を動くことができなくなっていたのである。



(もっと!もっと魔族を殺して!)



 ベアトリス(最愛の人)を失ったマヤの心は、少しずつ壊れ始めていた。





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・






 グレンの周囲には先ほどの闘気(薄いオーラ)とは異なる分厚いオーラが吹き上げていた。




 その(オーラ)は、天力気(アテナオーラ)と呼ばれる女神(アテネ)の力を具現化したものである。



  

 限界突破(リミット・ブレイク)によって、女神の力を引き出せるようになった今のグレンには、女神と同じ力が宿っていた。魔力に対抗する地上の女神の力、天力をオーラにして纏ったのである。



 真の姿を現した四天王たちの威圧感も神のごときであったが、グレンのそれは、真の姿の四天王たちのそれをも超えていた。



 その圧倒的な存在感に真の姿を現したダークデビルとハーデスですらこの場から逃げ出したくなるレベルであった。




 四天王でその威圧に耐えることができたのはたった1人だけであった。



「忌々しい地上の女神(アテネ)の力を感じます。

 魔界の女神(ニケ)様の使徒であるこの私があなたを地獄へと追放いたしましょう。

 

 人の身で天上を望む傲慢さ、永遠の牢獄にて悔いなさい」



 四天王最強―ラビエル・ルシフェルム


 

 真の姿となったラビエルもまた神の力を行使することができる。

 ラビエルのマナの器がイリスによってフルに満たされたが、魔界の女神の使徒―堕天使の長たるラビエルにとってそれが意味するところは、神に近しき存在に至るという意味である。



 その3対6枚の黒い翼からは、膨大なマナの高まりが生じる。



 6枚の翼がそれぞれ意思を持ったかのようにマナの変換を始めた。



 超絶魔法エクスプロージョン・レイの六重行使(セクスタプル)



 その技によって引き起こされるのは小太陽の流星群



 神裁きにふさわしい魔法を行使しようとしていた。




「さっきまでビビッてたくせに、変身したとたんに強気になりやがったな・・・

  

 だが、そんなの待ってるわけねぇだろ」


 


 グレンが魔法詠唱中のラビエルにかかって行こうとしたそのときであった。




「グフフ・・・。

 グレン、そこを動くな。

 この娘がどうなっても良いのか?」



 背後を振り返ると、ハーデスが巨大な鎌を少女(マヤ)の首元に突き付けていた。



「チッ!

 実力じゃ止められないとわかると今度は人質か。


 お前、四天王のプライドすら失っているのか・・・」 



 グレンは真の姿となったというのに戦うことすら諦めて人質をとるという悪魔らしいハーデスのやり方に舌打ちした。




「グレン様!私のことは放っといて、この悪魔に裁きの鉄槌を!

 この悪魔を叩きつぶしてください!アハハハ・・・」


 

 人質にとられた少女は、巨大な鎌に恐怖することなく、悪魔を討つことを望んでいた。



 グレンはそんな悲痛な願いを述べる少女の手に握られている()を見て、少女に起こったことを察した。



(まったく、こんな子供に見せて良い絶望じゃないな。

それに、どうやらこの子は本来なら強いマナの才能があったんだろうな。狂魔(デビル)のマナの影響を受けて完全に狂乱(バーサク)化してやがる)

 

 



 そして、そんな哀れな少女に対し、したり顔で冥界の鎌を突き付けるハーデスに対して、グレンは呆れた顔をして淡々と告げた。





「おい、お前、知らないのか?」






「な、何をだ?」








「――(最強)に人質は通用しないという事を」











 

 グレンはそういうと共にパッとハーデスの視界から消えた。

 



「!?」



 ハッとしたハーデスは、自分の鎌を見てみると、いつの間にかグレンがその鎌を握っていた。




 天力気に覆われたグレンの手はハーデスの鎌をチョコレートか何かのようにトロトロに溶かしていった。




 最強にとって冥界の鎌は凶器ではなくただのおもちゃの剣も同然。



 その上、人質をとるという行為は、動こうとする相手を制止させる行為である。制止させるべき相手が消えれば何が起こったのかと動きも殺気も止めてしまう。



 つまり、少し姿を消して気を散らした隙に相手の凶器(玩具)を押さえてしまえば詰み(チェックメイト)



 真に強き者に対して、人質は通用しない。



 グレンは鎌を溶かして少女を救出すると、少女に微小なオーラを流して眠らせた。


「自分を大切にして生きろよ」

(せめていい夢をみてくれ・・・)




 グレンは眠らせた少女を抱き上げて街民たちがいるところまで一瞬で跳躍し、少女を置いてくると、再び四天王たちの前に戻ってきた。






 人質はグレンに通用しなかったが、無意味ではなかった。





 一連の動きの間にラビエルの魔法は完成していた。




 原子爆弾6発分の熱量。




 小太陽の流星群がグレンに降り注いだ。





 先ほどまでのグレンであれば、この魔法の前にはさすがに耐えられず、死にはしないものの、大ダメージを受けて体力を大幅に削られてしまったであろう。





 だが、限界突破した今のグレンは、それすらも弾き返し、光を互いに相殺させ、消し飛ばしていった。





「クッ!超絶魔法の多重発動すら効きませんか・・・」





 ならばとラビエルは羽ばたいてグレンとの距離をとり、究極魔法の詠唱に入った。




 だが、



「それだけはさせると思うなよ」



 グレンはいつの間にかラビエルの目の前まで飛んできており、ラビエルを両腕で地面に叩き落した。



 そして、ラビエルが地面に落ちる前についでとばかりに飛び蹴りまで入れた。



 

 その蹴りはラビエルの左胸を貫いていた。




 ラビエルは地面に墜落すると同時にあっさりと消滅した。








 四天王最強がなすすべもなく一方的であった。






 グレンは着地すると、ハーデスの方へ振り返り、ハーデスの方へと歩いて行った。



「よお、さっきはよくも俺にバカな真似(人質をとる)をしてくれたな・・・」



 ハーデスは恐怖のあまりに、最も得意とする死の呪文をグレンに向けて連射した。



「デス!デス!デス!

 メガデス!

 ギガデス!

 アルトラデースッ!!」



 しかし、その魔法は、グレン(不老不死)には全く効果がなかった。




 グレンが拳を一振りすると、ハーデスも消滅した。




「さて、残りはお前だけになったな。

 あのときと同じだ・・・。

 どうする?」





「おのれおのれおのれおのれおのれーーーーー!」





 ダークデビルはデビル化の影響もあって怒り狂っていたが、内心は見た目以上に冷静でもあった。

 ラビエルとハーデスがやられては逃げるしかない、これ(グレンの強さ)を主に報告しなければならないと考えていた。



 ダークデビルは狂魔族であり、元々狂魔化(デビル化)しているため、真の姿になったとしても知性が落ちる影響は少ない。



 ダークデビルは劣勢を理解すると、解放した真の力を逃走する力に使うこととし、先の大戦と同じように羽ばたいてその場から逃走した。




・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ブリズバーンにおける大戦は、グレンの手によってあっけなく終結した。



 四天王3体による大軍勢が攻め込んだため、生じた犠牲者の数は王都の比較ではなかったが、戦い自体はあっという間に終了した。



・・・・・・・・・・・・・・・・・



 グレンは、助けられなかった尊いたくさんの命たちに対して冥福を祈り、片膝で黙祷を捧げると、再び立ち上がった。




(さてと、あいつを追えばそこにイリスとエビルサタンがいるわけだな・・・)



 当然、グレンはわざとダークデビルを逃がしていた。

次話から再び王都編です。

明日投稿になりそうです

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