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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
第一次オストルン大戦【後半】
55/106

絶望の一撃

 一方、ヘルバトラーと死闘を繰り広げていたタズたちに最大の危機が迫っていた。



 ヘルバトラーが猛スピードでイリアの方へと飛んだのである。



「お、お姉ちゃーーーん!!

 逃げてーーーーー!!」



 タズは叫んだ。



 そして、イリアもその声に応じて後方へ飛んで逃げ始めた。



 タズはイリアがヘルバトラーから逃げきることを祈りながら、残るマナを振り絞って風を纏ってヘルバトラーを追って飛んだ。




「待て――――――!」




 しかしながら、このままではどう考えても間に合わなかった。




 タズはやむを得ず、残るマナ全てを使って切り札を使った。





「エアスラーーーーーーーーーッシュ!!!!!」



 聖剣から放たれた真空刃はヘルバトラーが飛ぶスピードよりも遥かに速く、ヘルバトラーの背中を完璧に捉えたはずであった。



 だが、ヘルバトラーはタズが魔法剣を放ったその瞬間、タズの方へと振り返り、燃え盛る激しい炎を吐き出した。



 とてつもない風圧と共に吐き出された炎が上から叩きつけられたことによって魔法剣の威力は減殺され、結局、エアスラッシュはヘルバトラーの腹部を少し切ったにとどまった。



 その上、タズの方も、燃え盛る炎が正面上方から吹き付けてきて、慌てて上空へと回避しようとするも炎と共に吹き付けた暴風を叩きつけられ、錐揉み上になって灼熱の炎に覆われた地面に落下し、大ダメージを受けた。



 火と風の最上級魔法の合成魔法

 


 極大魔法ギガフレイム・バースト



 もし、エアスラッシュによる減殺がなく、回避行動をとっていなかったり、風魔法を纏っていなかったならば、今頃タズは灰になっていたであろう。



 ヘルバトラーは変身前とは異なり、極大魔法が行使可能となっていた。



 攻守魔法全てにおいて隙がない。




 これが魔界に何百万といる悪魔獣族の頂点

 



 悪魔獣王の力である。




 タズが地面に這いつくばったのを見たヘルバトラーは再びイリアへと向かっていった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「や、やめろーーーーーーー!!!」



 タズはこの戦いで初めて絶望した。



 聖剣を使った魔法剣すら効かなかった。



 マナも空っぽになった。


 

 大ダメージを受けて立ち上がることすらできない。



 今のタズにはヘルバトラーを倒す手段は一切なかった・・・。




 



 そして・・・・・・



 地面にひれ伏したタズの前で・・・



 タズが絶対にそれだけは見たくなかったという光景が目の前に繰り広げられた。




 タズを絶望させる一撃がヘルバトラーから繰り出された。




 あっさりとイリアに追い付いたヘルバトラーの拳は、吸い寄せられるようにイリアの腹部に命中すると、そのままイリアの腹部を貫いたのであった。



 ヘルバトラーが拳をイリアの腹部から引き抜くと、イリアはぐたっとなって大量に出血しながらその場に倒れた。





「お、お姉ちゃーーーーーん!!!!」





 あまりにも凄惨な状況であり、どれだけ叫ぼうと無駄であった。




 イリアが負ったダメージは回復不能なレベルで致命傷なのは明らかだった。





 まだ息はあるかもしれないが、その命が尽きるまで時間の問題だろう・・・。




 イリアが死ぬ。



 タズにとってそれは最も起こってはならない出来事であったが、それが間もなく現実になろうとしていた。



「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ」



 あまりにも凄惨な光景にタズの目の前は真っ暗になりそうであった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 今、このキャッスルヒル地区は再び絶望の影に覆われようとしていた。




「ア、アルフレッドーーーー!!」



 タズの後ろではクロエが泣き叫んでいた。



 見れば、アルフレッドとジョージの王宮騎士団No.1、2もヘルミノタウロスの一撃によって大量出血して致命傷を受けており、動けないアルフレッドたちを庇うために一人の騎士が命を散らしていた。



 オストルン大戦シドル王都での戦いは


 人族の敗北は明らかであった――。


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