勇者を超える最強
四天王たちは顔を見合わせると、マナを振り絞り、変身を始めた。
ラビエルはその翼を漆黒に変えていき、堕天使の王たる真の姿、ラビエル・ルシフェルムに
ダークデビルはさらなる狂魔化をして、狂魔の王たる真の姿、ダークデビル・イブリーズに
ハ・デスは美しい男の姿から恐ろしくも醜い悪魔の姿をした、冥界の王たる真の姿、ハーデス・エビルプルトーに
それぞれ変化した。
3体とも真の姿となることで、ステータスの大幅アップに加えて、使える魔法がランクアップする。
ラビエルに至っては超絶魔法の連射が可能、ひいては究極魔法の行使が可能になっていた。
たが、真の姿は暴走状態でもある。こうなってはもはや連携など不可能。
巻き添え、同士討ち覚悟で超絶魔法を乱発する。
それが彼らに残された選択肢であった。
「ようやく本気を出しやがったか。
しかし、想像以上に強くなってやがるな。
これがマナの巫女とやらの力ってことか。
・・・なるほどな」
3体の変化は、グレンにとっても予想外であった。
グレンは四天王が真の姿になったところでそこまで大幅な戦力アップにはならないだろうと予想していた。
ところが、予想を超えて3体とも大幅に保有マナがアップしていることが見て取れた。
特にラビエルからはかつての大魔王に近いマナの圧力を感じた。
グレンはラビエルから究極魔法に近い魔法が行使可能になっている可能性を嗅ぎ取っていた。
大魔王でもない限り究極魔法の行使が可能になることはあり得ない。
ましてやついこの間までこの世界からはマナが消失していたはずである。
先の大戦以上のマナの復活・・・それにはマナの巫女とやらの能力が関わっていることは明らかであった。
「マナの才能をカンストさせて覚醒させる能力ってところか・・・
やべぇな」
グレンは自分の見込みが甘かったことを認識した。
エビルサタンやマナの巫女のことはタズたち弟子の世代に任せようと考えていたが、巫女によってかつての大魔王級の戦力がゴロゴロと魔界に誕生しようとしているというなら話は変わってくる。その上、四天王でこのレベルなら四天王が主と敬う相手はどれほどか。
(タズたちには少し荷が重いか。
巫女が魔界に行く前にここで俺が止めるしかないな)
グレンは決めた。
――最強の自分が勇者の力を使うことを。
グレンは100年ぶりに封印していた力を解放することにした。
グレンは女神より授かった加護を、
大戦の真っ最中、勇者を辞めると同時にずっと封印してきていた。
そもそも魔法がなくなった平和な世界では、その加護の力はあまりにも強大すぎて使い道もなかった。それは大魔王をも滅ぼし得る力である。
しかし、今日、それを再び解放することにした。
(アテネ、力を借りるぞ)
真っ黒でⅩCⅠⅩと書いてあるのかどうかも見え難かったグレンの右腕の痣が激しく光り輝いていく。
グレンのレベルは先の大戦時、すでに99のカウンターストップ状態にあった。
しかし、グレンは大戦後、もしあのときあのまま二人で戦っていたなら誰の犠牲も出すことなく大魔王を倒せていたにもかかわらず、自分の勇気のなさ故に賢王に犠牲を強いてしまったことを悔いて、不老不死を良いことに通常では考えられない、他の誰にも実行できない手法の修練を続けていた。次こそ勇気を必要としない強さを手に入れるために。
それだけではない。
この世界からレベルの概念を無くしてしまったのはグレンであった。
グレンは何故に人族最強ではなく、地上最強なのか。
その理由はグレンが大戦終結時に魔界と地上、その両方からすべての魔物を消し去ったからである。
その結果、レベルアップのための経験値を有するモノが存在しなくなり、この世界からレベルの概念が消滅した。
歯向かう魔族もついでに消し去り、この地上では魔族も、人族も、誰もグレンに逆うことはできなくなった。
それ故に地上最強なのである―。
決して不老不死で死なないからなどという安易な理由ではない。文字通りの最強。
不老不死がなかったとしても、グレンを倒せる者はこの地上には存在しなかった。
大戦後に地上の平和を実現したのは賢王ではなく、この男であり、故に世界はこの男を讃え続けている。
そのグレンが再び勇者の力を解放した。
封印後に貯まりに貯まったおびただしい量(惑星2つ分の魔物)の経験値が加算されると共に、レベルの補正なしのまま積み続けたすさまじい修練の結果が掛け合わさっていき、99でカウンターストップしたはずのその痣が形を変えはじめた――
―限界突破―
レベル99を超える力の解放が起こった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
世界を平和に変えた本物の大英雄
もはや勇気を必要としないためにその男は勇者ではない。
人々はその男のことをこのように呼んでいる。
―勇者を超える者―




