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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
第一次オストルン大戦【前半】
31/106

10歳の誕生日!

 平和記念日の朝、セント・メリー教会のダイニング


 パンパン!!パチパチパチパチ!!



「「タズ!10歳のお誕生日おめでとうーーー!!!」」



 アスターが拍手し、イリアが小さな爆発魔法を唱えながらタズに祝いの言葉をかけた。



「えっ!?どうしたの?あ、ありがとう!

 で、でもなんで?」



 タズは突然のことに驚いた。自分の誕生日のことは村の人しか知らないはずである。



「前に言ったじゃない、タズより私の方がお姉ちゃんだって。

 イリスからタズとイリスの誕生日のことは聞いてたのよ。

 あのブラコン、去年のこの平和記念日に夜フラっとこっちにやってきて、今日はタズが9歳になっただの、プレゼントもらったタズが喜んで可愛いだの、愛してるだのデレデレで大変だったんだから!しかもちゃっかりおじいちゃんから自分の分のプレゼントもらっていくし!」


「そ、そうだったんだ。でもうれしいな!ありがとう!」


 この王都にタズの誕生日を知る者はいない・・・

 なんてことはなく、ここでもブラコン姉の影響が及んでいたのであった。


「ほら、私からは誕生日プレゼントにこの帽子をあげるわ。

 ・・・タズの可愛い耳と綺麗なその髪はこの王都じゃ目立つんだから心配で仕方ないのよ。

 私も同じのを着けるからおそろいよ!」


 イリアは耳を少し赤くして照れながらタズにプレゼントを渡した。実は同じ帽子をクロエにもプレゼントする予定なので、3人おそろいになる。


「わぁ!お姉ちゃん!ありがとう!えへへ、一緒だね!大事にするね!」


 タズはイリアに抱き着いて喜んだ。イリアもタズがこんなに喜んでくれると思っていなかったので幸せな気持ちでいっぱいになった。


「わしからはこの首飾りじゃ。

 お前さんのペンダントの紐をこれに替えると良いじゃろう。

 この紐は特殊な植物繊維を三つ編みしたものじゃから簡単には切れんし、植物再生の木魔法をかければ普通に使う分には絶対に切れなくすることも可能じゃ」


「わぁ!おじいちゃん!ありがとう!!

 すっごくすっごくうれしいよ!!!」


 アスターがタズにプレゼントをあげるとタズはさらに大はしゃぎだった。



 ―――イリアのプレゼントのときよりも、である。



 イリアはタズの喜ぶ様子に「ぐぬぬっ」と唸った。 



 実用性という面でもアスターのプレゼントの方が上であったし、タズからしても世界一大切なペンダントを守るための物という点で最高のプレゼントであった。


 しかし、忘れてはいけないのが、タズがそれで喜ぶということは、結局、タズの喜ぶプレゼント1位は、その本体たるペンダントをあげたイリスだったということになる。


 イリアの唸りはそれ込みのものでもあった。



(来年こそイリスを超えてやるんだから!)



 イリアはそう決意した。



「ほう、タズ、今日が誕生日だったのか。そうか、ちょうどいいし、俺からはこれをやろう」



 タズの誕生日をたった今知ったグレンは、背中に背負っていた「ソレ」をタズに渡した。



 イリアとアスターが「ソレ」を見てギョッっとした。



 グレンの背中に背負われた「ソレ」は、子どもの誕生日プレゼントなどという理由でポンとあげて良いシロモノではない。



 ――――伝説の勇者の、それも剣王と呼ばれた勇者の装備、聖剣アルスキャリバーである。



 100年前の大戦、グレンの振った「ソレ」は、山をも断ち切ったと言われており、「ソレ」自体も伝説の一品である。



「え!?いいの?すごく綺麗な剣だけど、高いものなんじゃ・・・」



 その価値を知らないタズはそんなことを言った。


 高いものとかそんなレベルではない。

 プライスレス、いやこれを使いこなせれば世界が手に入るであろう一品。



「ああ、これからはタズ、お前がその剣を使いこなせるようになるんだ!

 俺にはもう必要ない」



 グレンはタズの頭を撫でながら、その背中に聖剣を背負わせた。

 ところが・・・


「アハハ!こりゃまずは身長大きくしないとダメだな!アッハッハ!」


 グレンは聖剣を背負わせてみたタズの姿に大笑いだった。

 小さなタズは、その長い聖剣を背負ったというより、聖剣に背負われているかのような状態だったからである。


 しかし、


「うん!絶対大きくなるよ!」



 タズはそれでも喜んで元気に返事した。



 イリアはそんなタズと光輝く聖剣を見て、


「ら、来年こそは・・・。


 ・・・・・・。


 もうダメ・・・」


 などとつぶやいてずーんと落ち込み、泣きそうな顔をしていた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 その頃、海の向こうでは・・・


「タズ、10歳おめでとう。私からのプレゼント、喜んでくれてるかしら?」



 タズのこの状況―――シドル王都で幸せな誕生日を迎えられるその状況、その全てを密かに作り出していた張本人であるイリスは、オストルン大陸の方を見ながらそっとつぶやくのだった。





 一方、タズもまた、幸せなこの日を迎えて・・・


(お姉ちゃん、ありがとう。お姉ちゃんが言ったとおりだった!シドル王都に来てよかったよ!お姉ちゃんも12歳の誕生日おめでとう!元気でいてね!)


 タズは祈りを込めて遠く離れたもう一人の姉を想って目をつむるのだった。


 賢くてお姉ちゃん子のタズには、イリスの本当の誕生日プレゼントのことはお見通しだったのである。

 

 そう、あのときイリスはタズに


「(王都で一番綺麗な建物を目指しなさい。・・・きっとあなたを手助けしてくれる人が見つかるはずよ。・・・ちょっと早いけどあなたに誕生日プレゼントをあげるわ。)」


 確かにそう、言っていた。



―――このイリスの仕掛けにイリアが気づくことができるのか、そして、イリアがイリスにお姉ちゃん業で勝てる日が来るのか・・・

 それは今後のイリア次第だろう。

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