28.誕生日会
28.誕生日会
リリーの誕生日会の日が来た。
喧嘩を売ってきたクランを倒したり、メインディッシュを取りに行ったら魔人を拾ったりと余計なことも多かったが、何とか誕生日会にまでこぎつけることが出来た。
会場はペンタゴンの方々が手配してくれた。
クランのホームをパーティー会場に貸してくれることになったのだ。
ありがたいことだ。
そしてリリーの欲しい物だが……。
なんと「勉強道具」だった。
「いっぱいおべんきょうして、おねいさんになるの!」
太陽のような眩しい笑顔でリリーは言っていた。
リリーはマジ天使なうえに超いい子だ。
骨だけどリリーがいい子過ぎて涙でそう。
ぐれたりしないようにしっかり見守ってあげよう。
変態や悪い大人が半径5km以内に居たら問答無用で消し去ろう。
変態死すべし、慈悲は無い。
誕生日会の日以降、この町の犯罪発生率は性犯罪や組織犯罪が激減することとなるが、それはワイトの知るところではなかった。
おれはいま、地球で小学校から高校までの教材をかき集めてこっちの言語に翻訳した「勉強道具」を作っている。
とはいえ、国語も英語はこっちの世界では言語が違うから無意味だし、社会も歴史なんかはこっちではただのファンタジーだ。科学に関しても、物理定数が違うし、なにより魔力の存在がある以上、地球の物理を教えても意味は薄い。現象の理解には役立つとは思うが……。
結局、数学と科学、そして経済・倫理くらいしか地球産の学問では役に立たなかった。
読み書きは王族向けの初等教育本と、各国の学術都市の初等部から高等部の言語関連の本を軒並み揃えてみた。あと、ベストセラーの小説や児童書は翻訳しておいた。
魔法に関しては、もう邪神クラスの力があるから別にいいよね?
まぁ、魔法も含め、こっちの世界のことはリーナとマナーが教えてくれるから問題は無いと思うけどね。
人間の社会のことは、元間者と工作員のリーナとマナーは海千山千だろう。
魔族社会に関してもマナーが教えられるだろう。
どの道、この手のことは知識だけでなく自分で経験しなければ身に付かないけどね。
そんなこんなで、おれはいまランドセルと筆記用具一式を追加で作成している。
超いい子のリリーの誕生日プレゼントだから自重とか一切しない。
ランドセルはおれの骨並みに丈夫な素材で完全一体式構造の創造でしか作れない物を用意した。もちろん性能も一切妥協していない。
具体的には容量無限・質量無視・体積無視・時間停止・収容物転送機能付き。
みんなに見せたら呆然としていたけど、リリーはかわいいからこれくらいの物あげたいよね!
筆記用具は地球産の鉛筆をあげることにした。
たしか、鉛筆には正しい筆圧を覚えさせる意味もあるって聞いたことがあるしね。
なんとなく、魔力を加えると伸びる仕様を追加したけど、まあよかろう。
筆箱はリーナとマナーに任せた。
おれが作ってもかわいいのは作れないからね。
そんなこんなで、あわただしく準備を進めて、いよいよ誕生日会がはじまった。
リーナとマナーにかわいらしく飾られたリリーをペンタゴンのみんなと迎え入れる。
みんなにおめでとう!と出迎えられたリリーはキョトンとした後、うれしくなって泣いてしまったがみんなほほえましそうにリリーをあやしていた。
UVさんは意外と子供好きなんだね。
リリーがすぐになついていた。
とってきた死霊にかじりついてるリリーを見て若干以上に引いてたけど、食べ終わったらまたじゃれ合ってたし。
リリーをおめかししている間にすっかり仲良くなったのか、リーナとマナーも楽しげに談笑している。
やはりこういう会はみんなの関係を良い物にしてくれるね。
みんなで準備するからこうなるんだろうな。
会社のこういう会とかって若いのが準備と運営して上の人たちは楽しむだけとかって事が多いからちっとも楽しくないのよね。
「リリーさんが楽しそうでよかった。
こちらも用意したかいがあったというものです」
サトウが話しかけてきた。
「全くです。
今回はペンタゴンの皆さんに会場の手配までしていただいて、感謝します」
「あんなにうれしそうにしてもらえると、こちらも嬉しくなってしまいますよ。
UVのあんなに楽しそうな様子はここ数年みていませんでした。
こちらこそお礼を言いたいくらいです」
「そう言っていただけるとありがたいです。
これからも、こういう会は設けていきたいですね」
「そうですね」
サトウと話しているとマナーが来た。
「ワイト様にサトウ様も楽しんでおられますか?」
「ああ、楽しんでいるとも」
「ええ、楽しませてもらっています。
はじめまして、マナーさんでしたか?」
「はい、はじめまして、マナーです。
ワイトがいつもお世話になっております」
マナーのことだ、ただ世間話をするためにわざわざ来たしないだろう。
「それで、何かあったか?」
「はい、魔族が動きました。
早ければ5日後には魔界門からサウスランス王国に軍が押し寄せるかと」
「本当ですか!?」
サトウが焦っている。
そんなにヤバいことなんだろうか?
「マナーが言うのであれば、情報の精度は高いだろう。
軍の規模と、目的はわかるか?」
「規模は10万ほど、目的は門周辺の占領と教会勢力の壊滅です。
おそらく、魔王以下、上級魔族もほとんど出てくるかと」
「魔界は教会勢力と敵対していたのか?」
「一方的にこちらを悪と決め付け、勇者を差し向けて殺りくを繰り返す勢力と仲良くできますか?
魔界門の位置は教会勢力の本拠地に近く、教会が勇者の育成場所として魔界を使っていますので、多くの魔族は勇者と教会を憎悪しています。」
「教会を滅ぼしても魔界の軍は止まらないのか?」
「行き場を失うことでむしろ危険かと。
それよりも、これに乗じてほかの国がどう動くかの方が重要かと思います」
「とはいえ、数日は影響ないのだな?
人が魔族軍の動向をどこまで知っているかは知らんが……」
「大したことは知り得ません。
人間に魔界での諜報活動は不可能ですし、占術も魔界では効果の減衰が激しいので」
「魔族の裏切り者はいるだろう?」
「本当の裏切り者はいません。
全て二重スパイですわ、魔族は契約社会ですので、人間のように簡単には裏切れませんし、裏切り者がのうのうと生きていけるほどやさしくもありません」
「おまえは魔族を裏切ったのではないのか?」
「わたしは魔族の存亡を憂いてワイト様のおそばに居りますので……」
「物は言いようというわけだ」
「ふふふ」
「まぁ、教会はいずれ滅ぼすつもりだったし、おまえを含め身内に影響が無い限りは傍観だ」
「わかりました。
出来れば眺めている間に事態が収束してくれるといいのですがね」
「全くだ。
サトウさん、そういうことなので、戦う準備だけはしておいて、後は傍観ということで問題無いでしょうか?」
「国外のことに関してはそれで問題無いですが、周辺国がここにちょっかいをかけた場合はギルドから招集がかかると思います。
都合の悪いことに、ホライズンの主力が海の向こうに居るので、帝国くらいは動いてくるかもしれないです」
「なるほど、こちらも用意はしておきます。
とりあえず、今は誕生日会を楽しみましょう」
「はぁ」
戦争が始まるのにワイトさんはなんで平然としていられるんだろう?
規格外の力を持っていることはボロボロスの鑑定で分かっているが、私はまだ彼を過小評価しているのだろうか?
マナーから面倒事の話があったが、リリーの誕生日会は問題なく終わりを迎えた。
ロリ大天使魔法幼女+ランドセルは最強装備であった。
きっとたくさん勉強していいおねいさんになってくれることだろう。
そのためにも害虫駆除に精を出さねば。
ペンタゴンからは小鳥のキーホルダーをもらっていた。
なんでも、メッセージを持って飛んで行ってくれる魔道具らしい。
ペットのようにも使えるらしく貴族の子女の間で人気らしい。
リーナとマナーが用意した筆箱はクマのぬいぐるみだった。
なんとクマが筆記用具を持ってくれるようだ。
「えんぴつちょうだい!」
ってリリーがかわいらしく言うとクマのぬいぐるみが鉛筆を差し出した。
なんか、癒しアイテムとして普通に売れそうだ。
小鳥とたわむれ、くまのぬいぐるみを抱いたリリーは超天使だった。
リリーはニコニコしていた。
守りたいこの笑顔っていう気分になったのはおれだけじゃないはずだ。
これで当初の目的は達せられた。
後は戦争が始まるらしいけど何かすることあったかな?
まぁ、大事なことならそのうち思い出すだろう。




