29.勇者と聖女
29.勇者と聖女
やばい、すっかり忘れてた!
いっしょに召喚された高校生の男女が教会の勇者と聖女だ!
戦争始まる前に回収しないと……。
マナーなら居場所を掴んでるかもしれないな、聞いてみよう。
「マナー、勇者と聖女の居場所について知ってい無いか?
彼らはおれやペンタゴンの連中と同じ異世界人でな、可能ならば回収して元の世界に送り返したい」
「勇者は教会の大神殿の防衛に付いています。
聖女は数年前に教会から離反して以降、竜族にかくまわれたらしく行方知れずです。
勇者を排除できれば、教会の戦力は核を失いますね」
「わかった、ちょっと勇者を回収してくる」
「いってらっしゃいませ」
ワイトは教会勢力の総本山、大教会へと転移した。
かつて召喚され、そして殺されたあの場所である。
「ふむ、何年ぶりになるのかは定かではないが、特に懐かしさも感じないな。
戦に備えているだけあって、お偉方は結界の厚い上層部に引きこもっているようだな。
勇者は……、こちらに気付いて向かってきているな。
丁度いい、このまま回収しよう」
数分の間、その場で待っていると勇者が現れた。
かつての少年の雰囲気は無く、歴戦の戦士といった面持ちの青年になっていた。
しかし、瞳は濁り、まともな精神の持ち主には見えない。
特殊な洗脳が行われたのであろう、精神に作用する魔道具が複数つけられている。
「侵入者か、神聖なる大教会に侵入するとは万死に値する。
この場で朽ち果てるがいい!」
そういって勇者は斬りかかってくる。
しかし、遅い。
あくびどころか、剣が来るまで昼寝できそうなくらい遅い。
とりあえず鑑定しとくか……。
出来れば記憶消して、時も戻して帰してあげたいなぁ。
「鑑定」
<鑑定結果>
個体名:本間 英雄 (ほんま ひでお)
種族:人間
年齢:25 (精神年齢:17)
性別:男
HP:6813 (3000)
MP:5134 (3000)
ちから:1562 (500)
みのまもり:1358 (500)
まりょく:953 (500)
せいしん:638 (500)
すばやさ:1467 (500)
スキル:
上級スキル:「光魔法」「聖剣術」「魔法耐性」
聖級スキル:「聖装備」
状態:「洗脳」「精神支配」「隷属」「精神力低下[大]」
個体情報: 召喚された勇者。長年にわたる洗脳と精神支配により自我はほとんど無くなってしまった。今は教皇のオラクルによって操作される教会の操り人形である。
あの純粋そうな少年はもういないというのか、この少年の自我が消えてしまうほどのことが行われてきたというのか……。
ここまでひどい状態でも魂術できちんと治せるか若干不安だがなんとかせねばなるまい。
元の世界の年長者として、それくらいのことはしてやらねば。
とりあえずはデバフの解除からだな。
そしたら、魂術と時間魔法で元に戻そう。
ここを復帰点にしとけば失敗しても別のアプローチも試せるな。
全知全能でTASもどきの動きも可能なのだ。
まぁ、メンドイからほとんど使ったこと無いけどね。
時間魔法使えるやつとか、耐性持ち相手には使えない手法だし。
今回は魔法耐性をデバフで消してからならTASけられるからラッキーだ。
完全耐性までスキルが育っていたらデバフでは対処できなかったからな。
さて、さっさと勇者をTASけて帰るとするか。
聖女の方は竜族が匿っているらしいからそのうちでいいよね。
そんなことを考えていると、時空振動を感知。
大質量の転移の予兆だ。
勇者の英雄君も気付いたらしく一時休戦中。
術式の練度は高くは無いが、転移自体が簡単にできる物でも無いので、この世界ではそれなりに高位の存在が来ているのだろう。
魔族かとも思ったが、魔力の波長がマナーと似ていないどころか対極の物だ。
今まで見た物でも無い。
お、出てきた。
大体こういった派手な登場をするやつらは勝手に名乗るから少し様子を見よう。
「我は[竜神ゴンタ]なり、竜の巫女の頼みにより降臨した。
神を騙る小さき者どもよ、異世界の少年は返してもらうぞ。」
おお、あの女の子も戦争の到来に気付いて勇者 (笑)の回収に乗り出したようだ。
回復魔法とか使えそうだし、このまま竜神に勇者 (笑)は回収してもらおうかな?
竜神のゴンタ君をマーキングしておいたから、帰り先もわかるしね。
ああ、絡まれても面倒なのでゴンタ君の登場前に別次元に隠れましたよ。
てなわけで、おれの役目終了。
さて、教会も積んだし、防衛戦力は過剰だ。
あとは、悠々自適にやらせてもらおうか。




