26.ホライズン、半分滅びる
26.ホライズン、半分滅びる
ウィンダズ中央区ホライズン。
ここはクラン・ホライズンの直轄地として、いかなる国の支配も及ばぬ場所。
クランの独裁地ともいえる。
おれさまはホライズン6番隊3班副長のゴロ・ツキだ。
今は堅物の上位隊長どもが大遠征で海の向こうに行ってるから自由にやらせてもらっている。
最近は町からさらった女をまわして、具合を比べるゲームが人気だ。
一番よかったやつを連れてきたやつに酒をおごるルールだ。勝てば女も総取りだ。
おれさまは賢いから、女はほかに回しておれさまが隊長に昇格するように根回しをしている。おれさまは班長ごときで終わるような玉じゃないからな!
女だけじゃ、さすがに隊長に推薦してもらえないから最近は装備狩りもやっている。
これの受けがとてもいい。やはりおれさまは才能があるな。
中堅のクランに所属していないバカどもを8番隊隊長の大先生に殺ってもらって、装備をばらまく。これで5番と7番の隊長は俺を6番隊の隊長に推薦すると約束してくれた。
4番の変態女はあいかわらずガキ集めた屋敷から出てこないからどうでもいいしな!
1,2,3番のやつらが大遠征から帰ったらおれさまは6番隊の隊長様ってわけだ!
ガハハハーッ!
笑いが止まんねーぜ!腰も止まんねーけどよwwww!
「こいつが主犯格か……。
後はこいつだけだが、リリー食べるか?」
「あんまりおいしくなさそー……」
残念が固まったような奴だが、後ろで会話があれば気付くらしい。
「だれだ!」
ここはホライズンの本拠地だぞ!?
それにここは6番隊の宿舎だ!どこの馬の骨が入り込みやがった!?
そこに(見た目)スケルトンとゴーストのコンビがいた。
討伐依頼の練習台として討伐させる代表的なモンスターだ。
魔法使いと相性が悪く、戦士の練習台として優秀なスケルトン。
戦士と相性が悪く、魔法使いの練習台として優秀なゴースト。
どちらにも召喚用のアイテムが存在し、初心者に狩らせて適性を見るのに使用する。
「なんだ、誰の悪戯だ?
宿舎にこんなザコ放しやがって」
少し前に魔物を宿舎に放り込んで驚かす遊びが流行った。
どうやら、そのあまりを誰かが放しやがったんだな。
「おーい!誰の悪戯だ!?
あと、武器取ってきてくれよ!」
しーーーーん……。
誰も返事をしない。
それどころか遠征先の廃墟のような人気の無さ……。
おかしい。
静かすぎる。
ここには少なくとも非番のやつらが50人はいる。
そもそも、さっきまで酒飲んで騒いでいたあいつらはどこだ?
それ以前におれがやっていた女はどこに消えた?
考えていると骨がしゃべりだした。
「ほかのやつらを探しているのか?」
喋るスケルトンだと!?
いや、下位物理耐性持ちかつ魔法抵抗の高いスケルトンウィザードクラスか!?
マズイ!早く武器と仲間との合流を!
「ほかのやつらは死んだぞ」
スケルトンが信じられないことを言ってきた。
「は?」
そんなはずは無い。
隊長が空位とはいえ、ここには50人以上のCランク以上の冒険者が詰めている。
こいつがリッチだったとしても、おれ以外を一瞬で殺すなんてこと出来っこねえ。
そもそも戦った形跡がねえじゃねえか!?
っ!そうかっ!!
「骨の分際でずいぶん舐めたことしてくれんじゃねえか!?
幻術とはよう!だが、おれさまの方が1枚上手だったな!
ここには戦った痕跡がねえ!ガハハハーッ!
所詮は骨の浅知恵だったな!」
戦った形跡が無いのは、つまり、戦っていないということ!
とんだペテンだぜ!
だがしかし!賢いおれさまを騙すには骨の頭じゃ知恵が足りなかったようだな!
「わいとー?
どうしたのー?」
「ああ、なんだろう。
こういうの相手にするの疲れるんだよね。
Cランクのくせに鑑定すら使えないとかさ……。
せめて敵の強さ確認するくらいしてくれよ……」
「わいとー、よしよしする?」
慰めてくれるリリーマジ天使。
隊長クラスは対処がまだまともだったんだかな……。
主犯格がこのノータリンとはいかがなものか?
まぁ、隊長たちは目当ての装備を収集させてこいつはしっぽ切りにするつもりだったんだし、いい人選だったのか。
はぁ、これに振り回されてたペンタゴンとギルドの連中って……。
「わいとー?ひかりまほうつかっていい?」
「いいよー」
二倍疲れたわ。
分身ってもう一人の方の心労も共有できてしまうのね。
便利だけど……、なんか納得のいかない疲れ方だわ。
なんかゴロツキが幻術だとか何とか言って騒いでるけど、もう無視でいいよね?
リリーがなんか発動してるし。ああ、光魔法じゃないわこれ……。
軌道上に質量の召還……、メテオか。
規模は……、この屋敷を消し飛ばすくらいだから平気だね。
リリーとおれを上空に転移っと。
「りりーね!おほしさまよべるんだよ!
すごいー?」
「ああ、とってもすごいよ。
加減もきちんとできてるね」
「えへへー」
リリーの笑顔に癒されます。
チュドーーーンッ!!!
その日、ウィンダズに星が落ちた。
これによってクラン・ホライズンは全8隊の内5~8隊を宿舎ごと失った。
死傷者の捜索が行われたが、6番隊宿舎から1人分の原型をとどめていない遺体が発見された以外は一切の発見は無く、このことは「ホライズン半壊事故」として長く都市伝説として語り継がれていく。
なお、ホライズンの主力部隊は1~3番隊の大討伐専門の魔動甲冑部隊と、最強の魔動甲冑を持つ4番隊の女であることは、各国上層部では常識であったため、ウィンダズの独立に影響を与えることは無かった。
また、5番以降の隊には、各国の諜報も入り込んでいたため、ホライズン自身による粛清と各国への警告ではないかという見方が大勢を占めたという。
4番隊の変態はショタっこの色々なところをチューチューするのに夢中でクランに興味が無く、主力部隊は海の向こうであったため、ホライズンが組織として今回の事態を知ることになるのは一月以上後のこととなった。
また、ある程度の金になる装備やアイテムはワイトが回収したため、火事場泥棒たちも全く収穫が無く、かなりの規模があり隠密性に優れた集団により手が下されたのだろうと予測された。
図らずも、その最有力候補はペンタゴンのUVであったが、全くの濡れ衣であった。
ホライズン跡地は主力部隊が帰還し復旧するまでの間、世界で最も地価の高い廃墟となったのだった。




