24.ごはんの用意
24.ごはんの用意
リーナがペンタゴンの面々とリリーの誕生日会に向けて下準備をしている頃。
ワイトは一人で辺境に居た。
「分身とは本当に便利だな。
実物を見てみないと思い付かなかったわけだが……、もっと早くペンタゴンの人たちに会いたかったな」
ワイトはさっそく、UVの便利スキルを真似していた。
ワイトが今いるのは「悪魔城ハザードタワー」というSSS級の死霊系ダンジョンである。
不老不死を欲したある貴族が、邪神を崇拝し多くの領民を生贄にした。
その結果、貴族は高位の死霊となり、領民はアンデットになってしまった。
過去に、幾度も討伐が行われたが、城の外のアンデットを駆逐するにとどまり、城の中へ攻め入った物は一人として帰還しなかった。
理由は不明だが、ここ百年は城の死霊は外には出てこないため現在は封鎖領となっている。
とはいえ、財宝が残されているだとか、不死を授けるとかいう眉唾な噂に引き寄せられ、有象無象が日々帰らぬ者となっている。
「噂を聞いた時から予想はしていたが、ここはいい感じに死霊や悪霊が溜まってるな。
リリーのためのバイキングを用意するにはちょうどいい場所だな。
いっそここで誕生日会やるか?」
そんなことをしたら、文字通り死霊の踊り食いという地獄絵図が現れたことだろう。
「鑑定」
どうやら、城全体に魂を摩耗させる魔法陣があり、力尽きた者を死霊化させるようだな。
何匹か生きのよさそうなのが居るから、あれらを捕獲しようかな?
それ以外は成仏させてしまうか、あんなに魂が現世にとどまっているのもこの世界にとってよくないしな。
実際、世界に存在できる魂の総数は決まっている。
死霊などの歪められた魂もその数に含まれるため、アンデットの跋扈は世界を死で満たし、最終的に世界の崩壊に直結してしまう。
「魔法陣を維持してるのは下位の魔人か……。
貴族が呼んだのは邪神と聞いていたが、実際はこんなものか。
まぁ、たかだか2、3万人の魂で神様呼べたら苦労しないわなー」
ワイトの鑑定では魔族のカテゴリーは「魔神」>>>「悪魔」>>「淫魔」>「魔人」>「妖魔」の5ランクになってしまうので、下から2番目の下位の存在になってしまうが、冒険者ギルドの魔族リストに習うと「魔人」は最上位の妖魔を束ねる大討伐の大ボスに当たる存在だ。ワイトがそんなことを知る由も無いが……。
「さて、リリーのご飯を狩りに行くか」
魔人はどうしよう?
魔神クラスがこの世界に存在するかとか聞きたいなぁ。
なんか珍しいスキルあったらマネしたいし。
当の本人は呑気なものである。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
封鎖領監視局 仙術情報部
「タワーに接近するアンデットあり。数1!
種類、推定スケルトン種!
事前情報無し! 魔力値計測不能! 高位種の可能性あり!」
「死霊術使い(ネクロマンサー)では厄介だ。
最上位滅霊陣発動要請!
たまには聖騎士どもにも仕事をさせてやれ!」
「了解!
最上位滅霊陣発動を申請します。
受理されました!
全法門閉鎖されます!」
「半径50kmの最上位滅霊陣だ。
リッチだろうがなんだろうが、1秒ともたず消滅だ。
これで、無駄に兵を死なせなくて済むというものだ」
城の周囲100kmがひかりに包まれる。
そのあとには、ただ荒野があるだけだった。
「今回は拍子抜けするくらいにあっさりと申請が受理されましたね。
まったく、なぜ教会は定期的な滅霊陣の展開を拒むのでしょう?」
「事前情報無しということは教会も捕捉出来ていなかったアンデットということだ。
問答無用で最大火力叩きこむのは理解できる。
渋る理由は、触媒が高いとか、本当の緊急時に動けないとかだったか?
まぁ、本当は自らの価値を高めるためだろう。
本当の慈善団体なら、3年前に全員餓死してるさ」
「あの飢饉はひどかったですからね。
私も軍属でなければ餓死していましたよ。祖父もあの飢饉で逝きまたから」
「それを解決したと風潮しているのが、聖女の奇跡だったか?」
「はい、小麦の雨を降らせて信者の飢えを救ったと評判になりましたよ」
「それが本当の奇跡なら国中に小麦の雨が降っただろうよ。
結局、それが行きわたったのは……、懇意の貴族様だけだったろ?
それに、教会様の最大の敵であるアンデットの巣窟をやつらは何百年放置するつもりだ?」
「わたしたちの飯の種でもあるのでなんともいえませんが、タワーが巣窟になってからは優に200年はたっていますね。
おかげで、こんな辺境でも我々はそこそこの城塞都市に勤務しているわけですが」
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
超望遠監視魔法か、やはり存在したか……。
まぁ、こっちを野生のアンデットと勘違いしている間はどうでもいいか……?
しかし、いきなり飽和火力による殲滅に出るとはな。
よほど、リッチとやらが恐ろしいらしい。
滅霊陣発動の光で監視の目が一時切れたことを確認したワイトは、目当ての死霊の元へ転移していた。
「ほう、生きのいいのが飛び込んできたな」
高位の死霊と聞いていたのだが……。
ただのリッチか?
古臭いからエルダーリッチかな?
どちらにせよ、骨は不要だな。
可食分は魂だけだし。
「ここをこんな風にした貴族というのはおまえのことか?」
「そのとおりだな。
だが、今の私はこの通り不老不死。
今はこの城の主として不死王を名乗っている」
不老以外に不死性の能力はなさそうだが……。
その不老すら不完全で骨になってるし。
不死王(笑)くらいが妥当だろう。
「その程度で不死王か……。
所詮は井の中の蛙ということだな」
「なんだと?」
「気付いていないかもしれないが、この城を維持している魔人はおまえの数段上の存在だぞ?」
「あれ我が宝具の支配下にある。
そんなことも見抜けないとは、貴様こそたかが知れておるぞ?」
リッチになれる程度の魔道士が作った魔道具で魔人を支配しているとほんとに思っているのか……。
なんかかわいそうになってきたな。
「そう思っているならそうなのだろう。
おまえの中ではな」
なんかこいつの相手疲れるな。
とっとと魂にして持ち帰ろう……。
「この不死王に挑もうとはおろ……」
なんか言おうとしているけど、もういいよね?
詠唱破棄 魂分離 隔離 停止。
目的達成っと。
おっと、魔人が来たようだ。
「これは、城主にご用でしたか?
新たな魔神さま」
「そのとおりだ。
わたしは魔神ではないがな」
ちゃっちい首飾りをつけた妙齢の女性型魔人だ。
すくなくとも、何かの支配下にあるようには見えない。
おそらく、あの首飾りが城主の言っていた魔道具だろう。
「生きのいい死霊を探していてな。
丁度いいのが居たから取りに来させてもらった。
迷惑だったか?」
女の魔人はいい笑顔で答えてくれる。
「そんなことはございません。
いい加減うっとおしかったので」
そう言うと、魔人は首飾りをむしって捨てた。
「どうすれば、そんな物でおまえを支配できると思ったんだろうな?」
「我が主がそう、唆しましたことと、私も100年ほど演技をしておりますしたからかと……。
夜をともにしてからは全く疑わなくなりましたしね」
なんとも悲しい男の業を垣間見てしまった。
まぁ、いいか。
「陣は破壊する、死霊は輪廻に返すぞ。
おまえは抵抗するか?」
魔人はいい笑顔で答える。
「まさか?
そんな無意味なことをいたしましょうか?」
「そうか?
抵抗しておけば、おまえの主の心象も少しはよくなるのではないか?」
「あなた様に敵対すれば滅びは必至のこと。
我が主もそれがわからぬお方ではありませぬので……。
ただ一つ御慈悲をいただけるのであれば、御身にお仕えさせていただけないでしょうか?」
目の前で離反したやつを仕えさせるってどうなの?
戦国時代の漫画とかではよく見るけど、目の前でやられても全く信用できないんだが……。
こんな信用できない奴ら使いこなしてた武将たちのセンスとカリスマってやっぱりすげーな。
「好きにしろ」
やばい、ノリで言ってしまった!!
女魔人はいい笑顔だ。
「ありがたき幸せ」
ああ、言ってしまったものはしょうがないか……。
とりあえず、ここにもう用は無いから帰るか。
「わたしは帰るが、おまえはどうする?」
「お供します」
うわー。
付いてくるの?
どうしよう……
「分かった。跳ぶぞ」
「はっ!」
なにを勘違いしたのか翼を広げる女魔人。
てか、翼あったのね。畳んでる時は服の装飾にしか見えなかったわ。
おれと女魔人を対象にして、城の上空10000mまで転移した。
「!? 主さま!? いったい何を!?」
なんか女魔人がキョドってるが城の浄化が先だ。
詠唱破棄 広域浄化。
城が光の柱に包まれ消えていく。死霊作成の魔法陣は一瞬で砕け散ったし、中の死霊も塵となって魂は浄化され輪廻に戻っていく。
どうか次の世は幸多き物となるように…。
「用は済んだ。
もう一人の方も終わったようだから帰るぞ」
女魔人はまだ周りに「?」がたくさん浮かんでいる。
説明は後でまとめてするか。
とりあえずは、新しいパーティーメンバーってことにしたいんだが、そのためにはまた採集依頼を3件しないといけないのか?
まぁ、それくらいなら女魔人一人でもできるだろうから、その間はこっちが討伐依頼を受けずに待っていればいいか。
リリーの飯を取りに来ただけだったのに、面倒なものまで拾ってしまった……。
あっ、まだ名前すら聞いてねー。
後で鑑定すればいっか。




