20.鑑定異聞
20.鑑定異聞
ペンタゴンと会う前日の夜。
おれは明日のことを考えていた。
転生者のもつギフトという異能のこと。
自ら選択できる以上、想像を超える「ぼくのかんがえたさいきょう」の超絶チートであるのだろう。
なんかよくわからんスキル1つだけだったおれが、これだけよくわからん者になったのだ。
選べるやつがそうでないはずが無いだろう。
南の森で悟りを開いてからの間。
リーナが寝た後、おれはスキルの研究をしている。
悟りを開いたとき、おれは深夜のテンションでスキルを統合してしまい、全知全能になっていた。
しかし、それは元の世界の哲学者たちの言葉を借りるのであるば、
「全能の逆説」にとらわれた全能者になったと言えるだろう。
「全能の逆説」とは、ある種のパラドックスだ。
全知全能の神は、「だれにも持ちあげられない石」を創造できるのか?
そして、その全能者はその石を持ちあげられるのか?
というものだ。
「だれにも持ちあげられない石」を創造すれば、その石を持てず全能で無くなる。
その石を持ちあげたならば、自身の創造の全能性を否定する。
おれが陥っているのは、石を作れてしまった状態だ。
スキル「全知全能」がありながら、自分の骨の身体に対して全能性を発揮できないのだ。
ちなみに、今のステータスはこんなの。
個体名:ワイト
種族:無 年齢:無
性別:無(元男)
体重:不定 身長:不定
スキル:「慣れ過ぎた者」「全知全能」「果ての骨」
状態:「魔力制御ON」「ステータス偽装」「凡神オーラON」
個体情報:行き過ぎた者。もうなにがなんだかわからない。
by全能神連合
「慣れ過ぎた者」:慣れることに慣れ、その先に行ってしまった者。
もはや、スキルというよりも称号である。
「全知全能」:全ての理を知り、全てをなすことが出来る。
「果ての骨」:理の向こう側にある骨。全知全能を持っても干渉できない。
「全知全能」って意外と役に立たない。
逆説の向こう側へ行くことが出来ないのだから。
時間で表すならば、宇宙の始まりと終わりを8京回くらい繰り返すぐらい、実験と思考を繰り返したが、理の向こうにはたどり着けていない。
副産物として、知ったことを忘れることで、おれの俗物度を保護する手法を編み出したり、この世界の鑑定系スキルについてめっちゃ詳しくなったりしたけど……。
今まで、おれが鑑定だと思っていた物は実は、鑑定系スキルを複合多重発動して情報の取捨選択を自動で行ったものだった。
普通の鑑定だとこんな感じになる。
個体名:ワイト
種族:? 年齢:32
性別:?
体重:19kg 身長:168cm
HP:*****
MP:*****
ちから:*****
みのまもり:*****
まりょく:*****
せいしん:*****
すばやさ:*****
スキル:「慣れ過ぎた者」「?」「?」
ただの鑑定だと、おれのステータスはこんなのになる。
この世界系に無い物や、聖級以上のスキルは「?」になってしまうし、数値はカンストすると文字が化ける。
複合多重版の鑑定だと、不要な情報または正確でない情報として、カットされていたみたいだ。
ちなみに、宿の裏で待機してる密偵さんに使うとこんな感じ。
個体名:フータ・ロウ
種族:ハーフロウ 年齢:15
性別:男
体重:60 身長:189cm
HP:104
MP:32
ちから:62
みのまもり:31
まりょく:7
せいしん:15
すばやさ:79
スキル:「隠密」「暗殺」「五感強化」「狼変身」
ランクAの密偵かつ暗殺者のフータ君だ。
ロウってのは獣人の種族の一つね。
変身するとステータスが倍になって、ほぼ無双状態になるので、脅威度の不明な敵への威力偵察なんかをやってるみたいだな。
「隠密」や「暗殺」は上級スキルで、同格の対抗スキル「危機感知」や「第六感」とか持ってないと同レベルの実力者でもなすすべもないくらいの強スキルらしい。
鑑定で分かるようなスキルで強いも弱いも無かろうに……。
ちなみにスキルの階級は下級、中級、上級、聖級、神級とされています。
まぁ、実際には上にも下にもランク外があるわけでして、おれの場合だと、「慣れ過ぎた者」は下方向にランク外で、「全知全能」は上にランク外で最上級のスキルだ。
「果ての骨」はたぶんこの価値基準の中にないと思う。
鑑定スキル単体での運用は無しだな。
正直、力不足が否めない。
転生者とか勇者に対応できる気が全くしない。
だからこそ、この世界でその2者は強者足り得るのか?
まぁ、明日はペンタゴンの転生者に会えるだろうし、そこで確かめるか。




