負傷
黒い火が勢いを増し、炎となる。
魔獣の下半身には四つの足があった。
上半身と合わさり、合計六本の腕と足を持つ魔獣となった。
左手を切り裂いて、実質五本だが、戦力が倍増したことに変わりない。
喜びの雄叫びだろうか。
魔獣が叫んだ。
身を縮め、反動をつけ飛びかかってきた。
アメリアと周防は左右に分かれ、避けた。
「素早い!?」
予想以上の速度だった。
巨体の割に、動きが早い。
右手から黒い火を振りまく。
二人は避け続けた。
思うように魔獣へ近づけない。
幾度目かの攻撃をかわした時、均衡が破れた。
黒い火を避け、着地したアメリアの足元にあった瓦礫が割れた。
バランスを崩したアメリアは、膝をついてしまった。
追い打ちをかけるように魔獣から、黒い火が放たれた。
直撃を覚悟し、アメリアは目を閉じ、防御の構えをした。
だが、衝撃は来なかった。
「おい……大丈夫か?」
アメリアを周防が庇った。
魔獣に背を向け、アメリアの方を向いている。
ぐらついた周防をアメリアが慌てて支えた。
周防の背中は黒い炎を浴びたせいで、ワイシャツが燃えた跡がある。
「先生!!」
少し離れた場所で見ていた雪が叫んだ。
「こんちくしょー」
足元に落ちていた石を拾い、思いっきり投げた。
投げた石は偶然にも、魔獣の赤い目に当たった。
魔獣が悲鳴を上げ、少し退いた。
アメリアも周防に肩を貸し、一旦退いた。
「先生、大丈夫ですか?」
雪が心配する中、アメリアは魔獣を睨んでいた。
治癒魔法をかけない限り、周防が前線からいなくなる。
アメリア一人では、あの魔獣は倒せない。
それどころか、負けてしまう。
「アメリアさん……」
武蔵がアメリアに声をかけた。
「俺が囮になる。攻撃はできないけど、囮ぐらいなら……」
「その申し出はうれしいが、決定力が欠けた現状、囮だけではあいつに勝てない」
アメリアの厳しい言葉が武蔵に刺さった。
武蔵はギリッと手を握った。
現状を打破するためには、周防とアメリア並の攻撃力が必要だ。
魔獣が警戒しながら、侵攻を開始した。
時間がない。
アメリアは一人で戦う覚悟を決めた。
「伊澄、僕を置いて、何しているの?」
後ろから突然、若い男の声が聞こえた。
「若狭先生……!?」
そこには高校教師である若狭が居た。




