周防
鳥のように静かに周防は降り立った。
その手には剣が握られている。
ワイシャツに剣とは、少し意外な組み合わせだ。
「あなたが過去の英雄“イズミ”なんですか?」
アメリアが聞いた。
「そうだ。元の世界に戻っていたが、こいつらから状況を聞いて、戻ってきたってわけだ」
さらっと事情を説明した。
だが、アメリアの不審者を見る目は変わらなかった。
「とても三百歳以上には見えませんが……」
「そりゃ、三百歳じゃないからな。時間軸が世界によって異なっているって、言っても信じてくれそうにないな……」
周防は言葉を止めた。
「先生、早く黒い魔獣を倒しちゃってください!」
雪が叫んだ。
戦場を見ると、兵士たちが牽制しているが、徐々に押され始めていた。
アメリアが抜けた穴は大きかった。
「それじゃ、実力で示すまでか!」
そう言い、周防は飛び出した。
魔獣との距離を一気に縮め、剣を振りかぶった。
剣は魔獣の左手によって止められた。
一旦、周防は距離を取った。
再度、踏み込み、今度は魔獣の胴を狙った。
右側から横に薙ぎ払う剣。
魔獣も左手で防御した。
だが、剣の勢いは止まらなかった。
そして、魔獣の左手は切り落とされた。
地に響く魔獣の叫び声。
最初に攻撃した場所と同じ場所に二度目の攻撃をしたのだ。
「この大きさなら、攻撃可能か?」
周防は近くにいた兵士たちに聞いた。
兵士たちは大きく頷いた。
切断した左手に兵士たちが集まり、攻撃した。
「これくらいで、信じてもらえるかな?」
武蔵たちがいる場所まで後退した周防が、アメリアに尋ねた。
アメリアは口が半開きの状態で固まっていた。
尋ねられていることに気がついたアメリアは、口を閉じ、静かに頷いた。
「先生、すごいです!本体もこの調子で倒しちゃってください」
雪が尊敬のまなざしで周防を見た。
「今のは不意を突けたから、簡単にいったが、これであの魔獣も警戒するだろう。簡単にはいかないよ」
雪の頭をぽんぽんと叩きながら話した。
「周防先生、先生はあの魔獣と前にも戦ったんですよね。なんで倒さずに封印したんですか?」
武蔵は気になっていたことを聞いた。
「あいつ、実はすばしっこい奴なんだ。今は足がないから鈍くさいが」
封印されている下半身のことか。
すばしっこい黒いやつというと、Gキブリを思い出す。
「続きは戦いから戻ってきたら、話してやるよ」
周防は再び魔獣へ向かおうとした。
「私も一緒に戦う!」
アメリアが珍しく叫んだ。
周防はアメリアの上から下まで見て、答えた。
「俺があいつの右手を牽制するから、あいつの目玉でも潰してくれ」
「わかった」
周防とアメリアとツートップでの攻撃開始した。




