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戦火へ

 塔からまっすぐ南門方面へ向かった。

 戦場は想像以上だった。

 焦げた匂いが辺りに立ち込めていた。

 負傷した兵士のうめき声や遠くで何かが爆発する音が聞こえる。


「アメリアさんにどうやって伝えよう?」


 走りながら、雪が武蔵に声をかけた。


「戦いの最中だったら、声かけられないよな……行ってから、なるようになれだ!」


 ここまできたら、考える暇はない。

 武蔵と雪は考えがまとまらないまま、最前線に辿り着いた。




「突撃!」


 兵士たちが魔獣へ向かって走って行った。

 かく乱させるためだ。

 魔獣は左右を見渡し、一方に向かって右手を振りかざした。

 黒い火が飛んだ。


「退避!」


 兵士たちは散り散りになり、避けて行った。

 魔獣が攻撃したタイミングで、アメリアが飛びかかった。


「はぁああ!!」


 魔獣の頭部に一撃を浴びせ、距離を取る。

 低い雄叫びが響いた。

 小さいダメージを与え続けているが、体力の消耗が激しい。

 兵士とアメリアの攻撃のタイミグは、いつ崩れてもおかしくなかった。


 不意にその時はきた。

 兵士たちの撤退が遅れ、黒い火が襲ってきた。

 アメリアは瞬時に魔術を発動させた。

 黒い火の軌道を変え、兵士たちを助けることができた。

 だが、兵士たちに気を取られてしまった。

 背後に魔獣が迫り、左手を振りかざした。

 アメリアは横に飛び、回避を試みた。




 アメリアは魔獣から少し離れた場所にいた。

 つい先ほどの攻撃で、左腕を負傷してしまったからだ。

 怪我の治療をしている時間はない。

 布を巻きつけ、圧迫しただけの治療だ。

 そこに武蔵と雪が辿り着いた。

 二人にとってはアメリアの負傷はタイミングが良かった。


「アメリアさん!」


「二人とも、ここは危ないから早く離れてください」


 雪の呼びかけに、すぐにアメリアは避難するよう答えた。


「これから周防先生、いや、“イズミ”が来ます!」


 息を弾ませ、武蔵が雪に続いて叫んだ。


「“イズミ”!?過去の英雄か?」


 アメリアは目を丸くし、驚いた。


「少し年をとっていますが、過去の英雄の“イズミ”です!」


 周防先生がこの世界に来たのは、学生のころだ。

 教師になり、少し年を重ねているが、アメリアはそれを知るわけもない。

 三百年前の英雄が、少し年をとっているで済むはずがないと思った。


「三百歳以上の老人が来て、何ができるんだ!」


 そうアメリアが叫んだ時、空から人の声がした。


「俺はそんな爺じゃないから、安心しな」


 手に剣を持ち、笑いながら周防が舞い降りた。



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