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過去の英雄

「先生?」


 武蔵が声をかけたが、周防は顎に手を当て、考え込んでいる。


「真っ黒な魔獣といったな?」


 周防は雪に聞いた。


「はい、結界の向こうから真っ黒な炎で攻撃してきて、大変だったんですよ」


 雪が淡々と説明していく。

 こんな滑稽じみたことを、周防は疑問にも感じず、聞いている。


「それで戻ってきたときは、倒すか時だったんだな?」


「どちらかというと……その魔獣が堕ちてきちゃって、ピンチかな?」


 雪は腕を組み、下を向いて答えた。

 周防は目を閉じ、また何か考え始めた。


「もう一回、あの扉を開けたらいけるかな?」


 雪は武蔵に話しかけた。


「戻っても、俺たちは足手まといだろう」


 アメリアのように魔術も剣も使えない。

 小説のヒーローなら、異世界に行ったら無双するものだ。

 だが、武蔵たちに与えられたのは戦闘行為には程遠い能力だった。

 そんな空気を破ったのは、周防の一言だった。


「それじゃ、手伝いにあっちの世界に行くか」


「先生!?」


 武蔵と雪が同時に声を発した。


「たぶん、何とかなるだろう。お前たちも行くか?」


 まるで近所のコンビニに行くかのような言い方だ。


「連れて言ってくれるんですか!?」


 雪が周防の提案に飛びついた。


「邪魔せず、大人しく見ているんならいいぞ」


 コンビニよりも工場見学に行くような言い方に変わった。


「先生、向こうの世界を知っているんですか?」


 武蔵が怪訝そうに周防に聞いた。


「あれ、向こうで俺の話とか聞かなかったか?」


「先生の話?」


 周防は再度、問うた。


「俺の名前は周防 伊澄イズミ、この名前で何か聞かなかったか?」


 武蔵と雪は目を丸くした。


「結構、派手なことをした自覚はあるんだけどな……ま、その話はいいや。二人とも、向こうの世界に行くからついてこい」


 周防は椅子から立ち上がり、保健室の外へ出た。

 武蔵と雪は慌ててベッドから出て、あとを追った。




 三人が辿り着いた場所は“開かずの扉二号”の前だった。


「ここ、開かずの扉二号ですよね?」


 雪が周防に尋ねた。


「開かずの扉はここが元祖だから、本来こっちが一号だ。そして、向こうの世界につながっている」


 周防は尻ポケットから鍵を取り出した。


「いいか、中に入ったら、いつ、どの場所に行きたいかを考えるんだ。その考えが優先されるからな」


 扉の鍵を開け、ドアノブに手をかけた。

 周防が扉を開け、中に進んだ。

 ごくりと生唾を飲み込み、武蔵は後に続いた。



 ――あの魔獣が侵攻し、アメリアが果敢に奮闘しているあの場所へ――



 強烈な光に目を閉じた。


「お前たち、この時間、この場所であっているか?」


 周防の声がした。

 閉じていた瞼を開け、あたりを見渡した。

 英雄の塔の部屋だ。


「これ、私が書いた企画書じゃない?」


 雪が机の上に置かれた紙の束を見つけた。


「俺たちが来たあとというのは、確実だな」


 武蔵は部屋の窓から外を見た。

 そこには活気あふれる王都の市街地ではなく、いくつもの煙が立ち、破壊された市街地が広がっていた。


「アメリアさん!!」


 雪が叫んだ。

 武蔵と周防も、雪が見ていた窓から外を見た。

 破壊された南門とその内側に広がる場所で、アメリアたちは黒い魔獣と戦っていた。

 兵士たちが魔獣の気をそらし、アメリアが魔獣の本体を攻撃している。

 だが、上半身のみで、這うようにいる魔獣に決定的な打撃を加えられないでいた。


「大隈、俺の剣はどこにある?」


 周防は武蔵に聞いた。


「あ、空中の礼拝堂の台座に刺したままですが……」


 ふぅと周防は一息ついた。


「あそこか……ちょっと取って戦ってくるから、お前たちは戦っている奴らに、俺が来ることを伝えてくれ。そのあとは逃げろよ」


 そう告げると、周防は窓から身を投げ出した。

 落ちる!と武蔵と雪は思った。

 だが、周防はそのまま上空へ浮かんだ。

 まるで水の中を泳ぐかのように、飛び進んだ。


「アメリアさんたちのところへ行こう!」


 周防の行動には驚かされたが、指示されたことを遂行するため、武蔵たちは塔の階段を下りて行った。



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