王宮礼拝堂
激戦区となったのは、アメリアが向かった南門であった。
市街地に一番面しているため、魔獣も集まりやすかったのだ。
目の前には、北の都市で見たオオカミ型の魔獣が数十頭集まっていた。
牙からよだれをたらし、飛びかかる隙を狙っている。
そこに兵士の一人が飛びかかった。
兵士の一撃を避けた魔獣に、他の兵士が追撃をする。
複数人で魔獣を一体ずつ減らすやり方は、味方の損害も少なく済んだが、数が多い場合、体力の消耗が激しい。
上空の魔獣に対し、第五魔導師団が魔術で対応していた。
空が暗くなるくらい、魔獣が飛んでいる。
召集にすぐに集まったものから、一体ずつ打ち落としていた。
「全員そろいました!」
第五の一人が叫んだ。
アメリアの指示通り、広域魔術の準備にかかった。
準備中、無防備とならないように簡易結界を張った。
結界の外から、トカゲに翼を生えさせたような魔獣がつっこんでくる。
パキッパキッっと、結界にヒビがはいる。
そして、結界が敗れると同時に、広域魔術が発動した。
上空に向かい、まっすぐに伸びた光の柱は、そこから斜めに角度をつけ、一周した。
光に触れた魔獣は、叫び声をあげる間もなく、消滅した。
「剣だ……」
棺の中には、剣が一本だけあった。
遺体はない。
武蔵は手を伸ばし、剣に触れた。
触れた瞬間、剣から光が放たれた。
とっさに武蔵は手を引っ込めた。
「この剣を必要ということは、結界に限界がきたということだな」
剣から、一人の男の映像が浮かび上がっていた。
顔の表情は窺えない。
黒い甲冑に身を包んだ姿だが、年は武蔵たちと同じくらいだろう。
「俺の名前はイズミ。結界を張ったものだ。必要な情報を記録映像として残す」
過去の英雄“イズミ”だ。
「武蔵くん、何かいい情報くれるみたいだね」
「あぁ」
武蔵と雪は、イズミが残した記録映像を見続けた。
「王宮礼拝堂の上にのぼり、この剣を掲げれば、上空に逆さ礼拝堂が出現する。あとはそこに向かい、逆さ礼拝堂内の中心に剣を突き立てろ。そうすれば、封印の要と連動し、結界が張りなおされる。奴の下半身が
出てくることはないだろう」
説明が終わると、イズミの映像は消えた。
「逆さ礼拝堂に“奴の下半身”か……わからないキーワードが出てきたな」
「でも、とりあえずやってみるしかないんじゃない?」
武蔵は改めて、剣に触れ、握った。
今度は何も起こらなかった。
剣は一切の装飾がなく、シンプルな剣だった。
「まずは、王宮礼拝堂の上にのぼるか!」
武蔵と雪は、王宮礼拝堂へ移動した。
礼拝堂の上にのぼるのにも、一苦労があった。
屋上へ通じる階段というものはなく、二階の窓から屋根に出ることになった。
窓から見えた風景は、戦場だった。
「早く、結界を張りなおして、魔獣の侵攻を止めないと」
武蔵が身を乗り出し、屋根をのぼっていった。
「武蔵くん、ガンバレ!」
窓から雪の身を引き上げ、二人で屋根を這っていった。
王宮礼拝堂の上は、丸みを帯びていた。
作業用の足場と階段を見つけ、のぼる。
礼拝堂のてっぺんに辿り着いた。
「じゃ、剣を掲げるぞ」
武蔵は手にしていた剣を上に向けた。
剣先が光ったと思った瞬間、一面を光が覆った。
光がやみ、目が慣れた。
武蔵と雪は上を見た。
開いた口が塞がらない。
視線の先には王宮礼拝堂があった。
ただし、逆さまになり、上空に浮いていた。
「あそこに行くのか……」
武蔵はつぶやいた。




