霊廟
王都へ急いで戻ることとなった。
馬車を全力で走らせた。
車内は上下に揺れ、とても会話どころではなかった。
沈黙のうちに、王都へ進んだ。
途中の村により、馬を交換した。
酷使した馬はその場に倒れこむように、座り込んだ。
「アメリアさん、今のうちに話したいことが……」
武蔵がアメリアに話しかけた。
「馬の交換はすぐに終わります。手短にお願いします」
「ずっと疑問に思っていたこと……なんで、結界の要の名称が“封印”なのか、過去の英雄“イズミ”は結界を張ったあと、どこに行ったのか、知っているかぎりでいいから教えてくれないか」
武蔵の問いかけに対し、アメリアは目を横に寄らせ、閉じた。
何かを知っているが、どこまで話すか決めかねているようだ。
アメリアは武蔵をまっすぐに見て、答えた。
「結界がこの国を守るものではない、という噂を聞いたことがあります。もしかして、何かをこの国に封じ込めているのではと、思いましたが、誰もこの問いに答えを持っていません。もしかしたら、サラ女王陛下が何かを知っているかもしれません」
馬の交換が終わり、また王都までの強行軍に出発した。
それから二日後、王都へ着いた。
約一か月前に出発した時と、変わりはなかった。
馬車から降り、早々にサラ女王との謁見を申し込んだ。
夕刻なら時間が取れるということで、それまで王宮内の一室に居た。
「そうだ!ダンに霊廟を見せてもらおうと思っていたんだ」
武蔵が唐突に思い出した。
なし崩し的に、旅に出る前に、過去の英雄の霊廟がこの王宮にあるとダンが言っていた。
武蔵と雪は近衛隊が駐在している建物へ向かった。
「よう、久しぶりじゃないか!」
ダンが笑顔で迎えてくれた。
「今、時間大丈夫か?」
「少しなら大丈夫だが、どうした?」
ダンに霊廟を見たいと言ったところ、快く道案内をかってでてくれた。
王宮礼拝堂の裏手に霊廟はあった。
質素な外観で、木製の扉を開けると、中は一変とした。
壁一面にレリーフが掘られ、彫刻が所せましと置かれていた。
一室しかない部屋の中央に、大きな棺があった。
棺の回りにも彫刻が置かれ、守っているかのようだった。
また、棺の蓋の部分には横たわった人の彫刻があった。
過去の英雄“イズミ”を模したものだろうか。
甲冑姿で、手には剣を抱き、顔の横には兜が置かれていた。
「武蔵くん、このレリーフって、四カ所の封印をモチーフにしているよ」
壁のレリーフを見ていた雪が話しかけてきた。
部屋に入って、左手にあるレリーフには、地上に人、地下に丸い球体が描かれたいた。
東の商業都市“テルフスト”の教会地下で見た第一の封印を示しているのだろう。
角を曲がり、左側面の壁のレリーフには、洞窟のような場所に球体が描かれていた。
南の工業都市“ガランゴジュ”の採掘所の坑道で見た第二の封印だろう。
部屋の奥の壁のレリーフには、学者と本がたくさん描かれていた。
球体は本の上に描かれていた。
西の学問都市“アルーメン”で見た、第三の封印だろう。
部屋の右側面の壁のレリーフには、球体以外何も描かれていなかった。
北の娯楽都市“ニガヴィー”の魔法陣から現れた第四の封印だろうか。
最後に入り口の右手にあるレリーフを見た。
そこには、王宮礼拝堂が鏡に映ったかのように、上下に描かれていた。
下の王宮礼拝堂で剣を掲げる人間、上の逆さ王宮礼拝堂で天に向かう人間が描かれていた。
封印に光が戻らない時、掲げるのはもしかしたら、剣なのか。




