裏切り
アメリアが放った光線は確実に魔獣をとらえ、数を減らしていった。
このままなら地上は用心棒が、空中はアメリアが撃退するかに見えた。
「ジャレッドどの……どういうことですか」
ジャレッドの手には血がついた短剣が握られていた。
一方のアメリアは右腕から血が流れ、下に垂れていた。
「予想以上にあなたの力が強すぎたんですよ」
暗い目をしたジャレッドが、短剣についた血を眺めた。
「この魔獣の侵攻にお前が絡んでいるのか?」
この男は味方ではないと判断したアメリアは、口調を変えた。
「どうしてこの国は結界があるんでしょうかねぇ。三百年より以前は他国との交易がおこなわれていた。それが今は行われていない。そう、結界があるからですよ。忌々しいこの結界がなくなるのであれば、私は全力で協力をします。それが人以外でもね」
「お前は、国を守っている結界を壊そうとしているのか……」
アメリアの額から汗が流れた。
それを見たジャレッドの目が笑った。
「そろそろ効いてきたんじゃないですか」
アメリアとの会話は時間稼ぎに過ぎなかった。
短剣には薬が仕込まれていた。
「これ以上、あなたに邪魔されたくないので、そろそろ退場願いましょう」
ジャレッドが短剣を向け、飛びかかってきた。
アメリアは右手で持っていた剣を左手に持ち替え、防いだ。
利き腕ではないため、アメリアには不利だったが、相手は素人。
数回切りあいを行なった末、アメリアがジャレッドの足を引っかけた。
床に叩きつけられたように倒れたジャレッドに、とどめを刺した。
「ぐはっ……」
ジャレッドを一瞥し、アメリアが背を向けたとき、か細いジャレッドの声が聞こえた。
「そろそろあの方が切り札を出してくる。これでこの国は自由になれる……」
アメリアは振り返られなかった。確かに、結界は魔獣の侵攻を防いでいるが、この国を籠の中の鳥としている。
ジャレッドの夢は自由を取り戻すこと。結界の見方を変えれば、そのような夢を抱いても何も言えない。
「ごふっ」
口から血があふれ、ジャレッドは動かなくなった。
アメリアは再度、空中にいる魔獣たちを打ち落とすため、魔術を使おうとした。
「なんだ……アレは……」
青空だった空はどんよりとした雲に覆われ、渦を巻いていた。
渦の中心は稲光が走り、丸く穴が開いた。
その穴から巨大な黒い手が出てきた。




