防戦
武蔵と雪は女王からもらったダガーを使い、魔法陣を掘りなおしていた。
カーペットのしたから出現した魔法陣は、長い年月、人が踏み歩いてしまったため、鮮明ではなくなっていた。
ガッガッとひたすら、掘り続けた。
「これで大丈夫かな?」
一通り、掘り直しが終わった。
早くしないと、地上の被害がどうなっているのかわからない。
しばらくすると、魔法陣がうっすらと光始めた。
魔法陣の中心にぼんやりと何かが出てきた。
台と球体だ。
ぼんやりした像が徐々に鮮明になり、実像になった。
「雪、急いで球体に触れてくれ」
「わかった!」
魔法陣に足を踏み入れ、球体に触れた。
「まずいな……」
地下室から地上に出たアメリアはつぶやいた。
駆け込んできた男の報告通り、劣勢だ。
個々でオオカミ型の魔獣に戦っているが、数の力で負けている。
「ジャレッドどの、この街を見下ろせ、指示を出せる場所はないですか?」
「このカジノの塔を使えばいい。元教会だったからな、鐘塔がある」
アメリアはジャレッドとともに、塔に上った。
最上階に到着し、街を見渡した。
あちこちから黒煙や悲鳴があがっている。
「これから国軍の臨時指揮と同じやり方を行なう。拒否は聞かない!!」
アメリアが声高々と宣言し、魔術を放った。
地上で戦っていた用心棒の前に数字が表れた。
「番号を呼ばれたもの同士でグループを作れ!三人一組で行動しろ。魔獣に対し、二人で対応し、もう一人は周囲の警戒に当たれ!」
アメリアはグループを作らせて戦わせた。
苦戦している状況は変わらないが、徐々に魔獣を退治し始めてきた。
あと少しというところで、くも型の魔獣が現れた。
「ちっ、新手か。役割を変更!周囲を警戒していたものは、魔獣の前に立ち囮役となれ。その隙に残りの二人は両脇から魔獣の足を切り落とせ!とどめは囮役が決めろ!!
」
アメリアからの新しい指示に従い、戦術を変えて戦った。
最初は手間取っていたが、金で雇われているだけあって、腕はいい者がそろっていた。
くも型の魔獣も数を減らした。
一部の用心棒が一息をついた。
だが、戦いは終わらなかった。
空中から火の玉が降り注いだ。
直撃を食らった者は倒れ、かろうじて当たらなかったものは建物の影に隠れた。
空をトカゲに翼が生えたような魔獣が何体も旋回していた。
「次から次へと……忌々しい。ジャレッドどの、街の復興が若干遅れても、かまいませんか?」
突如、アメリアがジャレッドに聞いた。
「ここまで破壊されては、復興よりも建て直しとなるものが多いだろう」
「では、制限はなしで行きます!数多の炎よ、焼き尽くせ!!」
アメリアが空中の魔獣に向かって魔術を放った。
炎というよりも、光線となって飛んで行った。
光線に触れた魔獣は、瞬間に黒焦げとなり、墜落して行った。
「すごい……」
ジャレッドがつぶやいた。
「武蔵くん、どうしよう!ちょっとしか光らないよ!」
球体に雪が触れたが、今までとは異なり、光が灯らなかった。
「何故だ!?」
武蔵も魔法陣に踏み込み、近づいた。
その時、最初の球体が置かれていた台に書かれていた文章を思い出した。
“この文章を読める者へ
台の上の球体はこの国の結界を支えている。
もし、輝きが失われていたら球体に触れてほしい。光が戻れば、問題はない。
光が戻らない場合……王宮に眠る……掲げ……”
今回が光が戻らない場合なのか。
地上では薄くなった結界から魔獣が侵攻している。
ここの結界を強化しないとならない時に、光が戻らないとは……
王宮に眠る何かを掲げる必要があるのか。ここから王都まで何日かかるのだろうか。
武蔵はがっくしと膝をついた。




