第四の封印
危なかった。
どちらも黒い玉だから自信を持って、指定しない方のコップを先に開けさせた。
結果オーライだが、本当に危なかった。
武蔵は冷や汗をかき続けていた。
「ジャレッドさま、いつもの方法を使わなかったのですか?」
小声でディーラーがジャレッドに話しかけた。
「両方に黒い玉が入っていたことは見抜かれていたよ。それにあの坊主の目を見たか?やると決まったときの腹を据えた目、良い目だ」
ジャレッドはディーラーとの話を切り上げ、武蔵たちの前に移動した。
「では、望みを」
「ここの地下を調べさせてほしい」
ジャレッドの目が見開いた。予想していなかったからだ。
望めば金やここの経営権など、いくらでもあった。
「ここの地下?理由を教えてもらっても良いかね?」
「……昔、ここは教会では?」
「よく知っているね。ここは教会だった建物を改造したところだよ。この欲望の街ニガヴィーの中心にはぴったりだろう?」
確かに、街としてはぴったりだ。
欲望の街の中心に教会がある方が浮く。
「その教会の地下に用事があるんです」
ジャレッドは顎に手を当て、目を細めた。何かを思案している。
だが、入り口で会った男の言葉がよぎって、本当のことは言えない。
ここでは人をだますことがあるから、馬鹿正直にすべてを言って良いことはないだろう。
武蔵とジャレッドの腹の探り合いは、ジャレッドの言葉で終わった。
「まぁ、良いだろう。地下に案内するからついてくるがよい」
「地下は現在、酒を保管するのに使われている」
奥のカーテンの裏側から店の奥へ出た。
石でできた通路を進むと、ある一室の前で止まった。
ジャレッドが懐から鍵を取り出し、ドアを開けた。
なぜだろう。鍵を使ってドアを開けるのを久しぶりに見た気がする。
部屋には地下に続く階段があった。
ジャレッドを先頭に階段を下った。
地下の部屋にはワインセラーのように棚にビンが並べられ、一角には酒樽が置かれていた。
「ここが地下室です。どう、いいコレクションでしょう」
ジャレッドの言葉をほぼ聞き流し、武蔵と雪は球体を探し始めた。
今までのように、部屋の中央に球体がない。
「ここは最初から、何もない部屋でしたか?」
武蔵はジャレッドに聞いた。
「何もなかったから保管庫として使っている。棺などあったら、匂いがつくから使わんな」
ジャレッドの言葉をそのまま信じるのならば、球体はどこかに隠されているのだろう。
壁は棚があってよく見えない。棚を動かそうとしたとき、ずしんっと振動が起こった。
「!?」
何があったのだろうか。そこに、カジノの従業員と思われる男が駆け込んできた。
「ジャレッドさま!ま、魔獣が……街に魔獣がやってきました!!」




