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ジャレッド

「ジャレッドさま……」


 アメリアと雪の相手をしていたディーラーが驚いている。

 そう簡単に、客の前には現れないのだろうか。


「私は雪、こっちはアメリアさんで、そっちが武蔵くん」


 こんな状況でも雪は自己紹介をした。

 ジャレッドが小さく笑った。


「自己紹介ありがとう、お嬢さん」


 完全に警戒している。

 ここまで勝ち続ければ、イカサマか何かをしていると思われるのは当たり前だ。

 だが、当初の予定通り、ここの主を引っ張り出せた。


「お嬢さんたち、とても強運の持ち主と見ました。どうです、私とも一勝負してみませんか?」


 かかったとアメリアは思った。

 興味を持ったということは、このカジノの地下を調べる足掛かりになる。


「いいですわよ。賭けはチップすべてでよろしくて?」


「いいや、そちらのお嬢さんを賭けて勝負がしたい。どうやら、特殊な能力があるようだからね」


 ジャレッドは雪を指名してきた。

 突然のことに、雪は呆然とした。


「雪は物ではないので、賭けの対象とは……」


 武蔵が慌てて言った。


「そちらが勝てばいいこと。そうそう、そちらが勝てば、何でも一つ、言うことをききますよ」 


 勝負時に雪が毎回、アメリアに耳打ちをしていたのを見たいたのだろう。

 イカサマの元は雪と断定している。

 厄病神さまの力を使っているため、違うとも言い切れないが。


「武蔵くん、ここで勝てば地下を調べる権利とか貰えるよね」


 雪が見上げて聞いてきた。


「地下を調べるくらい、懇意にでもなれば可能じゃないか?」


「いいえ、カジノの裏側は客に見せないのが通常です。懇意になったところで見せてくれるかわかりませんよ」


 武蔵の提案をアメリアが却下した。

 懇意になると言っても、どのくらいの期間がかかるかわからない。

 この都市に着くまでに遭遇した魔獣の数から、結界が薄くなっているのは確かだ。

 残された時間はあまりないと考えられる。


「武蔵くん、やろう」


 雪の一声で決まった。


「では、ディーラーの代わりに私がシャッフルします。あぁ、そちらのお嬢さんは景品なので参加しないように」


 ジャレッドは手慣れた手つきで、二つの玉をコップに入れた。

 机の上でシャッフルし、武蔵たちの前に二つのコップを差し出した。


「さぁ、どちらに赤い玉が入っているか?」


 雪が参加できないとなると自力で二分の一を当てる必要がある。

 だが、雪を渡さないためには二分の一の確率ではなく、百パーセントで当てなければならない。

 ジャレッドの自信に満ちた顔が憎らしい。

 そこで武蔵は思った。

 自信に満ちているということは、ジャレッドにとって、この勝負は負けがないということではないか。

 コップの中身が両方黒い玉ならば……


「武蔵くん、どっちを選んでも大丈夫だから」


 雪の言葉で確定した。

 どちらを選んでも大丈夫ということは、どちらを選んでも黒い玉だ。

 古典的な手で行こう。


「左側のコップに赤い玉が入っています」


 隣で考えていたアメリアが驚いた。武蔵が自信を持って言い切ったからだ。


「こちらのコップですね。では、開けてみましょう」


「そのコップを開ける前に、もう一つのコップを先に開けてくれませんか?」


 ジャレッドがコップを開けようとした瞬間、武蔵が止めた。

 一瞬、ジャレッドの眉が動いた。


「もう一方に黒い玉が入っていれば、おのずとこちらのコップには赤い玉が入っているということになる」


 武蔵の提案に、ジャレッドは笑った。


「いいでしょう。こちらのコップから開けましょう」


 コップを開け、中から出てきたのは黒い玉だった。


「……正解です」


 顔に満面の笑みを浮かべ、雪が腕をつかんできた。


「さすが武蔵くん!よくやりました!!」


 アメリアも腕を組んで、ほっとした表情をしている。

 照れていると、ジャレッドがもう一方のコップに手を伸ばした。


「ということで、赤い玉はこちら」


 コップの中から、赤い玉が出てきた。

 武蔵の笑みが固まり、凍りついた。

 ジャレッドはイカサマをしていなかったのか。


「さぁ、望みは何でしょうか。かなえられる範囲でお願いしますね」


 ジャレッドが苦笑いをしながら言った。


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